【キャワグッチ企画書探検隊】第1回 幻の『ロッキー6』の企画書に小林カツ代の名前が⁉
世界中で映画が毎週大量に公開される一方、映画製作に掛かる予算の膨大さから数多くの企画書が生まれては人知れず闇に消え去っている。その作品が大作であればあるほど、またその闇も深い…。
その深い深い闇の中から失われた企画書を探すべく、2023年に秘密組織:キャワグッチ企画書探検隊は日本某所にて結成された。MI6顔負けの世界各所とのネットワークを生かしながら、キャワグッチ探検隊は膨大な書類に埋もれた闇の奥へと進んでいくのであった…
結成されたばかりのキャワグッチ探検隊であったが、早速ジャングルの奥地にて一つの未公開の企画書を発見した!それは世界的ヒット作のシリーズ5作目『ロッキー5/最後のドラマ』の続編、『(仮)ロッキー6/炎のキッチン』の企画書だったのだ!
シリーズの集大成になるかと思われた『ロッキー5/最後のドラマ』だったが、終盤のストリートファイトに代表されるように、シリーズ集大成らしからぬチグハグな演出が世界中の観客・批評家から顰蹙を買い、興行成績もシリーズ最低となってしまった…
その内容的・興行的な失敗を取り返すべく、すぐにその続編『ロッキー6』の構想が練られるも結局その企画書はお蔵入りに。シリーズの続編は2006年全米公開の『ロッキー・ザ・ファイナル』まで待つことになる。極秘に入手した『ロッキー6』の企画書のストーリーはこうだ!
<『(仮)ロッキー6/炎のキッチン』のあらすじ>
『ロッキー5/最後のドラマ』の後、愛弟子だったトニーとも別れたロッキーだったが、次の目標を失い自宅でボーっとした日々を過ごす毎日。おざなりにしていた家族との絆を取り戻そうとするも、妻エイドリアンが突如病に倒れる。財産も仕事も無いロッキーは妻の治療費を稼ぐべく、レストラン経営に全てを掛けて乗り出すのだった…
ポーリーの精肉工場から肉を仕入れて、巨大なステーキを売りにしたレストランをオープンさせたロッキー。最初の方はロッキー人気もあやかって満員御礼だったレストランだったが、徐々に「肉はデカいけど大味」など不評が広がっていくように…。ロッキーも焦りのあまりポーリーの助言を無視し、高級ステーキ・高級食材に手を出すも借金が膨れるばかりだった…
茫然自失でフィラデルフィアの街をふらつくロッキー。ふと顔を上げると、人通りが少ない街角でアジア人女性がバッグを奪われようとしているのが目に入る。持ち前のファイトスタイルで泥棒たちを追い払うロッキー。助けたメガネの女性は感謝を述べつつも、一枚の名刺をロッキーに手渡す。そこには日本の料理研究家という言葉が。そう彼女こそが著名な日本の料理研究家、小林カツ代だったのだ!
日本の経済的な成功も相まって、日本食への関心が益々高まっていた90年代中盤のアメリカ。高級日本食レストランは既に多く存在していたが、日本の本格家庭料理に関する情報はまだまだ少なかった。そこで地元のテレビ局は日本の料理研究家、小林カツ代をフィラデルフィアまで呼ぶのだったが、夕食後の帰りに彼女は事件に遭遇してしまったのであった。
「俺はここらあたりでレストランを経営しているんだよ。まあ、あまり上手くはいっていないがな…」
そう話すロッキーを優しく見つめる小林カツ代。
その後カツ代はふと訪れたロッキーのレストランで一時退院中の妻エイドリアンと出会う。スムーズに言葉は通じないながらも、エイドリアンとは意気投合。エイドリアンが夫を思う気持ちに心打たれ、彼女はロッキーのレストランのためにひと肌脱ぐ事を決意する。
しかし、有名シェフでもないカツ代の言葉に耳を貸さないロッキー。後ろ髪を引かれながらも小林カツ代はアメリカを後にした…
レストラン経営に苦しむロッキー。そこに全米ネットのテレビ局から料理対決番組に出ないかというオファーが。日本の料理対決番組『料理の鉄人』にアイディアを得たテレビ局が、番組の目玉としてロッキーを賑やかしに呼んだのだ。
給与未払いのため自身のレストランのメインシェフを失っていたロッキーは、自分自身の腕で料理対決番組に挑むことを決意する。メニューの考案に四苦八苦する前に再び小林カツ代の姿が!そう、エイドリアンが夫の苦悩を見るに見かねて、小林カツ代をフィラデルフィアまで呼んだのだった。
「お前にイタリア料理の何が分かるんだ!」
最初は日本人の料理研究家に不信を持っていたロッキーだったが、小林カツ代の料理術の素晴らしさに驚き、徐々にカツ代を信用するようになってゆく。
「料理はまず作る人の心が大事。食材はその次よ。」
自信を取り戻したロッキーは料理対決ショーに挑む。嘲笑を浮かべる観客に囲まれながらも、妻エイドリアンと息子、そして大切なことを思い出させてくれたカツ代のために、ロッキーはスポットライトの下で包丁を手にするのだった…
残念ながらこの企画書はボツになってしまった…
『ロッキー5』と同様にロッキーのボクシングマッチのシーンが無いという事で、この企画書は見送りになったようだった。ただロッキーがレストラン経営をするという部分はその後の『ロッキー・ザ・ファイナル』に活かされる事になった。小林カツ代のハリウッド映画デビューを見たかっただけに、この企画書がボツになったのは返す返すも残念である。
キャワグッチ探検隊は引き続き、失われた企画書を世界中で探していくことになる。もし大作映画の未公開情報を入手することがあれば、臆することなく探検隊まで報告してほしい。みんなの力が頼りだ。
それではまた近いうちに会おう!さらばだ!
※この文章は一から十まで全てフィクションです。しかしこのフィクションを現実にするのはあなたかもしれない。