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網走シネマ矯正院

【網走シネマ矯正院】第6回『“それ”がいる森』 ※ぬるネタバレ

『事故物件 恐い間取り』の中田秀夫の時点で察しろ!

冒頭から“それ”わかるじゃん!

「あるぅ日♪ 森の中ァ♪ クマさんにぃ♪」
馴染みある童謡から始まる予告は無数のぐしゃぐしゃで“それ”の正体が潰されており、観客に見て確かめろと促す内容になっている。
『クマではない怪奇現象』とわざわざ予告に入れ、『あの世を超える恐怖』と謳ってしまったのが、今作の敗因ではないかと鑑賞後の当方は考える。

映画好きにおける中田秀夫といえば、やはり未だに『女優霊』『リング』の監督であり、『インシテミル』『MONSTERZ』(どちらも藤原竜也が怪演)の中田秀夫ではないのであろう。中田秀夫のホラー映画となれば心霊怪奇モノであろうという先入観、あの中田秀夫という期待値が大きければ大きいほど、「裏切られたッ!」と叫びたい気持ちが強くなるのではないだろうか。

上映当時は忙しなかったこともあり見に行くという選択肢がなかったが、ネットで見かける酷評の多さに気になっていた一作。
近所のGEOで無事に旧作レンタルできたことから、年始一発目の自宅鑑賞作として臨んだわけであるが……。

これが想像以上に楽しめてしまって、日本酒を吞みながら見てしまったために寝落ちして頭痛で苦しんだこと以外は、非常に良い一年の映画鑑賞を始められたと思う。
“それ”の正体が気になったのであれば、主人公が出てくるまでは見た方がよい。
新宿でホストクラブを襲撃した男女が強奪した金をわざわざ福島の山中に埋めようとするのだが、『*色の体液』を発見する時点で“それ”の正体などまるわかりだ。
この時点でこの映画に求めるハードルがかなり下がるので、ほとんどの方が楽しめることだろう。

マセガキ小学生ズ恐怖の一夜

“それ”の捕食対象が小学生程度の子供であり、第二の主人公が息子であることからも、この映画は小学生程度を対象にしている。ゆえに、大人の掛け合いよりも息子を中心とした小学生のやり取りに多く時間が割かれているし、ベタもベタではあるものの、キャラクター設定や物語の流れは予測できるものとなっている。
クラスメイトの会話はちょっとマセた感じで、共感性羞恥に肝を冷やしながらもなんとなく楽しめる。NHKで放送していた『さわやか3組』のようなアレだ。


手垢にまみれたキャラ造形ではあるものの、サッカーを通じて息子と仲良くなるぷくぷく男子がかわいかった。なにせ、ランドセルにリコーダーをむき出しで突っ込んでいるのである! 口をつける方を上にして。
お前ッ! カバーに仕舞わねえのかそこはよ! とツッコみたくなること必至だ。
3年と4年を同一クラスにするくらいの過疎地域であるし、山に秘密基地を作って頻繁に赴いているようだから、小さい虫とか吹き口に入りそうなんだけどよ……オメエ平気なのか……。
あれだけの秘密基地とクマ用トラップをひとりで作り上げる手腕は優れたものだ。結果として彼の秘密基地が役に立ち、更には物語の最後を締めくくるが、惜しいキャラクターだった。

脇キャラが濃い

主人公が収穫に喜ぶビニールハウスで共に働く同僚に宇野正平と諏訪太郎がいた時点でちょっと嬉しくなるのを筆頭に、記者たちに囲まれる町長に酒向芳、自身も“それ”を目撃した町のUFO個人研究家に小日向文世と、出演時間が短いのに印象に残る俳優が脇を固めている。

個人的には野間口徹が老けメイクによって老けた顔でイヤな感じの教頭をやっていたのが良かった。
あの教頭が狭い職員室で幅をきかせていたら碌にサボれないであろうから、この学校の教員は大変そうである。おそらく他の学年もまとめて受け持っているだろうから、少ない教員で学校を回すとなると個人負担は相当なものだろう。
キャラクターがかぶるので仕方ないだろうが、有事に関わらず校長が出てこないのが面白かった。どこかの限界地方町村のように名誉職校長であったために、ほぼ現場に出ないのだろうか。
息子の担任が“それ”の危険性を訴えても軽んじた教頭ではあるが、“それ”の学校襲撃時にはしんがりとなって児童の有無を確認していた点で、きちんと職務を全うする気概がある人物として描かれている。
ちゃんといい見せ場ももらえてよかった。ひさびさの野間口をありがとう。

福島県警の熱い風評被害

“それ”が自宅にいた子供をも襲うという事件が発生したことで、警察が児童を学校に一晩待機させるという、どう考えてもヤベエ謎判断を行う点で本作の警察のアレさがお分かりいただけるだろうか。
今作の警察はホラー映画あるある、真相に迫る主人公の忠告を無視する、集団でやべえ地域に入って無駄死にするというフラグを見事に回収している。
福島県を舞台にしているため仕方ないことだが、その警察が福島県警であることで福島県警へのネガティブキャンペーンになっているともいえよう。

しかし、ろくに食事も寝床も用意しないまま警察の判断で学校に泊まらなくてはいけない事態となれば、教員からも親からもとんでもない量のクレームが来ること間違いないと思うのだが、そうした描写が一切ない点も好感が持てる。
学校を襲撃する“それ”に恐怖しながら逃げる児童を描くために必要な設定だ。
その夜の出来事は、同窓会でいつまでも語り継がれることだろう。全校生徒で恐怖を共有するというのは、なかなかない思い出だ。

お父さん有能すぎん?

このあたりはスピルバーグのアレから持ってきたのであろうかという設定ではあるが、“それ”の弱点に目星をつけた主人公が手製の武具を作るのが面白かった。
主人公の興味関心と仕事がヒントに生きてくるのが良い。勤めていた会社でも携わっていたようであるし。
理科室に置いてありそうなガラスの小瓶なんてのが簡単に出てくるのが面白い!
どれだけ身近にあるものでも、容れ物をそれらしいものに変えたら説得力が生まれるということを証明してくれた場面だ。
自分も“それ”に震えながらも、機転で我が子をどうにかして助けようとする姿は好感が持てた。

主人公を追い出すこととなった義父に見切りをつけ、福島の農家として家族がふたたび元に戻るまでのやりとりも、違和感なく呑み込めたように思う。

当方がこれを見ている間に頭に浮かんだのは、少女漫画雑誌『なかよし』の夏号になると付録についてきた『恐怖の館』という犬木加奈子が表紙を手掛けるホラー漫画小冊子だ。
多くの読み切りのうちのひとつに、あるキャンプ場の山奥の社に住み着いた“それ”に人間が吸われる(体液吸ってた)という話があった。友人が次々と消えていき、最後のページで逃げたはずの主人公が“それ”に使役されたことを示唆され、いい感じに後味の悪い話だった。
近年は『ちゃお』がかわいい絵柄に反して倫理観を揺さぶる人怖ホラーで定期的に話題に上がるが、『なかよし』のホラーも子供向けでありながらレベルが高いと昔から評判だ。
本作もまた、『なかよし』や『ちゃお』といった少女漫画に掲載されるホラー漫画と同じような匂いを感じた。
要するに子供向けホラーではあるのだけれど、ちょこっと刺さるものがある。

ウーマンコ♂ミュニケーション

これまでの話を全て台無しにする覚悟であえて口にするが、明らかになる“それ”の捕食部分が非常にアレに見えてしまい、鑑賞中ずっとその名称が頭に浮かんで消えなかった。
くぱぁして丸呑みにする箇所もラフレシアの花弁を思わせてよかったが、小さくくぱっ☆したところが非常に……。色のせいか……?

セコマのホットシェフのチキンとかポテトの紙コップにプラ製の蓋かぶせたやつにめっちゃ似てる

と、空飛ぶ円盤に対して当方はそう思わずにはいられなかったのだが、いかがだろうか。
写真撮ろうとした銀色の鉄みたいなやつ。浮いてるやつ特に。
セコマのホットシェフはカツ丼とおにぎりが旨いので、機会があればぜひ食べてみてほしい。

今回の教訓:自分の目で見て確かめる

やはり他者の評価というものはあくまで参考でしかない。
どれだけ高評価を受けていようが自分にはハマれなかったり、どれだけ低評価を受けていようと自分には楽しめたりする。
本作はそれこそポップコーンを齧りながら、ビールといっしょにぐでーっと見たい映画であった。
それこそ誰かと一緒にわいわいツッコみながら鑑賞すると楽しいのではないだろうか。
また、私は新年早々日本酒で失敗したので、しばらく酒は控えることとするいい教訓をも得た。
『嘘食い』(どうして三池に監督させなかったんだッ!!!!!)の監督として、今後も中田秀夫の映画を楽しみに待っている。

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いい感じに野垂れ死にたい系一般人ですわ