【きまぐれレポート】レポ1 日本に「国際映画祭」はいくつあるのか?
少し前に国際映画祭詐欺(?)なるものが報じられたことをみなさんはご存じだろうか。続報がないので詳細は不明ながらたとえばITmediaのこの記事なんかを読むと開催する気のない架空の国際映画祭のサイトを作ってエントリー料を騙し取る手口の詐欺らしい、とのこと。詐欺は悪いことなので褒めるつもりは毛頭無いが、なるほど詐欺師もいろんなことを考えるものだなぁと素直に感心してしまう珍事件であった。
こんな手口が編み出された背景にはおそらく近年日本国内で「〇〇国際映画祭」という名前の映画祭が異常増殖しているという事実がある。国際映画祭というとカンヌとかベネチアとかすごい盛大なものを想像してしまいがちだが、別に国際映画祭は商標ではないのでどんな規模の誰がやってる映画祭でも国際映画祭と名付けるのは自由。円安もあり、新型コロナ・パンデミックの反動もあり、去年ぐらいから日本は外国からの観光特需に湧いているらしい。折りから自称国際映画祭で町おこしという安直な発想は日本全国津々浦々であったらしいので、どうやらそれが観光特需で爆発したようだ。
いったい現代日本にはどれだけ「国際映画祭」があるのか。ふと気になったので調べてみた。まずは有名どころで東京国際映画祭。日本の国際映画祭といえばこれを思い浮かべる人は多いんじゃないでしょーか。東京国際映画祭が1個あればもう東京に他の国際映画祭はいらないような気もする。しかし実際には、東京には他にも二子玉川で開催されているキネコ国際映画祭を皮切りに、品川国際映画祭、池袋みらい国際映画祭、秋葉原国際映画祭と計5つも国際映画祭があった!このうちキネコ国際映画祭は開催十数回を数えるそれなりに歴史もあり地元に馴染んだ映画祭だが、たぶん他の3つは去年か今年新設されたもの。東京という狭い街にこんなにも国際映画祭があったら海外から出品したい人なんかどれが東京国際映画祭なのかわからなくて困るんじゃないだろーか。
ではでは今度は日本列島の北から国際映画祭巡りをしてみよう。まずは北海道の老舗ゆうばり国際ファンタスティック映画祭。ジャンル映画の祭典として高い知名度と根強い人気を誇るものの、ここ数年は財政問題によるゴタゴタ続きでだいぶ評判を落としてしまった映画祭だ。その影響なのか最近は他に北海道国際映画祭、札幌国際短編映画祭、新千歳空港国際アニメーション映画祭などが出来たらしい。北海道は広いので映画祭なんかいくつあってもいいかもしれないが・・・でもそのわりには北海道の西の方に偏りすぎてるから、釧路国際映画祭とか稚内国際映画祭とかいっそのこと作っちゃえばいいんじゃないかと思う。
本州に入って山形国際ドキュメンタリー映画祭、これは国際的な評価も高い通好みの映画祭で、その名の通りドキュメンタリー映画が多数上映される。日本で一番面白い映画祭は山形国際ドキュメンタリー映画祭だ、という声も。一方。日本海側の新潟には新潟国際アニメーション映画祭がある。こちらはごく最近できた映画祭で2024年で2回目。しかしながら注目度は高いようで、山形国際ドキュメンタリー映画祭に次ぐ名物映画祭となるかどうか、ぬる~い目で見守っていきたいところ。
埼玉県川口市にはSKIPシティ国際Dシネマ映画祭がある。ここはインディーズ映画監督の登竜門としてよく知られた映画祭だ。東京を跨いで横浜には横浜国際映画祭がある。ここもまた歴史が新しく昨年新設、今年で2回目。評価はともかく20年弱の歴史ある東京国際に対して横浜国際は国外の映画人たちにどんな違いを打ち出せるか・・・と思ったら横浜国際映画祭はコンペティション部門がなく純粋にみんなで映画を楽しもうという催しのようだ。それは良いことだが、だったら国際映画祭じゃなくて単に横浜映画祭とかでいいのでは。
まだまだ出るぞー!あいち国際女性映画祭は東京国際映画祭よりも長い歴史のある老舗国際映画祭。その名の通り女性とかフェミニズムをテーマにした作品選定が最大の特徴で、フェミニズムが盛り上がりを見せている近年、注目度を高めているようだ。ちなみに愛知では名古屋国際映画祭新設の話もあるとかないとか。
関西に入ると京都国際映画祭、京都国際学生映画祭、京都ヒストリカ国際映画祭と、やはり国際的な観光地だからか京都が国際映画祭の中心地。なんか意外なのだが大阪国際映画祭はないらしい。大阪の人そういう派手なの好きそうだけどな(ただし、国際映画祭の名を冠していないだけで大阪アジアン映画祭という国際映画祭はある)
奈良出身の映画監督・河瀨直美が発起人かキュレーターに立ち上がって今年から始まったのがなら国際映画祭。なにせ第1回目なのでどんな映画祭なのか、今後も続くのか不明なところも多いが、ホームページを見る限りではたしかに国際色豊かな作品が並ぶ。河瀨監督自身、日本よりもヨーロッパで評価されヨーロッパ映画人とのコラボレーションも行うインターナショナルな人なので、なら国際映画祭にもそうした姿勢が反映がされているのかもしれない。
兵庫には今年で2回目の丹波国際映画祭というのものがあるらしいも、ホームページを見たら今年のコンペティション授賞者は全員日本の人。国際映画祭・・・か?まぁみなさんが楽しんでらっしゃるならそれでイイと思います!下って四国に入ると2020年より始まった愛媛国際映画祭がある・・・が、今年は開催された形跡がなく、終わってしまったのかもしれない。しまなみDRONE国際映画祭も四国の映画祭でこちらはドローン映像の映画祭(?)らしい。よくわからないけど続くのかなこれ。
日本全国映画祭巡りのテキスト旅もいよいよ終盤。広島国際映画祭は2014年から始まったので今年で10周年、それもあってか今年のゲストは広島・呉を舞台にしたアニメ映画『この世界の片隅に』の監督・片渕須直ということで、力が入っていたようだ。10周年とくればほぼ定着したといっていいだろうから、今後は「あの広島国際映画祭で受賞!?」と人に驚かれるような名物映画祭になっていけばいいですね。
九州では福岡で開催されていたアジアフォーカス福岡国際映画祭が有名らしかったが、こちらは残念ながら2020年をもって30年の歴史に幕を閉じたそうな。しかし1つ終わればまた別のものが始まるのが国際映画祭である。ふくおか国際映画祭、北九州国際映画祭はいずれも今年初開催ということで、1つ終わって国際映画祭が無くなるどころか逆に増えてしまった!前者は映画監督の是枝裕和がアドバイザー、後者は女優の広末涼子が登壇するなど、結構豪華で本格的な国際映画祭、だと思う。あと福岡コ・クリエイティブ国際映画祭というのも2023年に開催されたようだが1回で終わった。九州では他に、佐賀で開催のBonDance International Film Festival(ボンダンス国際映画祭)なるものもあるとか、ないとか。
沖縄の国際映画祭といえば沖縄国際映画祭、例によってこちらも昨年ぐらいに16年の歴史に幕が下り、沖縄環太平洋国際映画祭という新たな国際映画祭が始まった。それだけではない。宮古島チャリティー国際映画祭、石垣島ゆがふ国際映画祭と沖縄には国際映画祭が3つもある。実態はぶっちゃけよくわからないが国際映画祭密度でいえば東京に匹敵するのじゃあないだろうか。
以上、日本全国の国際映画祭でした!といっても日本の「国際映画祭」は実はこれだけではなく、TDU・雫穿大学国際映画祭とか国際和解映画祭とか大学系の国際映画祭もある。ちなみに国際和解映画祭は「国際和解」をテーマにした映画祭だそうである・・・って紛らわしいな!とにかく!現在の日本には至る所に国際映画祭がにょきにょきと生えているのだ!国際映画祭の盛況は悪いことではないでしょうが、いくらなんでもこんなに国際映画祭と名の付く映画祭があるなら、ニセモノの国際映画祭が作品募集をしてても見抜くのは難しい。今回取り上げた国際映画祭だって詳細がわからず本当にやってるのかなぁ?みたいなのもいくつかあった。ということで詐欺防止のためにももうちょっと、こう、統合するとか共同開催するとか、なんとかしていただいた方がいいんじゃないかという気もしますがどうでしょう・・・?
結論
日本に国際映画祭と名の付く映画祭は30個ぐらいあるしもっとあるかもしれない。多過ぎ!