【きまぐれレポート】レポ5 長いタイトルの映画をいろいろ集めてみてついでにギネス認定されてる世界でもっとも長いタイトルの映画も調べてみた
最近U-NEXTにわけのわからない長い邦題の映画がよく入ってくる。『飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件』、『2年前、行方不明になった学生たちが撮影した卒業制作の映画を観てみたら、森で秘密の儀式に巻き込まれていた話』、『不良ムスメが盗みに入ったら、そこが食人ファミリーの家だった話~そこにマフィアが乱入して更に状況が悪化した』等々。
こんな映画のタイトルとはまったく思えない邦題が謎のフィーバーを起こしているのはたぶん2021年に『元カレとセスナに乗ったらパイロットが死んじゃった話』がSNSで話題を呼んだから(その後、諸般の事情により『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』に邦題が変更された)。世は大検索時代、長いタイトルは無駄に記憶に残って良くも悪くも話題になりやすいだけでなく、コピペで検索すれば間違いなくその映画のことが書かれた記事しかヒットしないので、SEO(検索エンジン最適化)でもあるのだ。最近ではそのほかに『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』なんていう映画もあった。ちなみに『元カレとセスナに乗ったらパイロットが死んじゃった話』の原題はシンプルにHORIZON LINEだが、『ヒューマニスト・ヴァンパイア・シーキング・コンセンティング・スーサイダル・パーソン』は原題のHumanist Vampire Seeking Consenting Suicidal Personをそのままカタカナにしただけだ。
映画の歴史を振り返ってみるといろんな長いタイトルの映画がある。せっかくだからいくつか集めてみた。まずは鉄板『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』。ご存じスタンリー・キューブリック監督の初期の傑作ブラック・コメディ。いかにも人を食った邦題だがこれは原題Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bombをほとんどそのまま訳しただけ。さすがキューブリック監督、センスがひねくれてます。
作家性の強い監督の長タイトル映画では『ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう』なんてのも。こちらもコメディで、タイトルが無駄に長いというのはそれだけでナンセンスなユーモアになるので、他のジャンルに比べてコメディの方が長タイトルが付けられやすいのかもしれません。原題はWoody Allen “Everything You always wanted to know about Sex, but were afraid to ask”.ちなみに下ネタコメディでは『宇宙で最も複雑怪奇な交尾の儀式』というのもありますが、さすがに『ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう』に比べればインパクトが弱いか。
長いタイトルのコメディといえば、おそらく日本映画でこれを超える長さのタイトルはないでしょう、『RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー!略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編』です。長い!長すぎる!『トリック』など実験的な手法を取り入れたコメディ映画やドラマを多く手掛けてきた堤幸彦監督作ということでタイトルもこんな前衛的に。ギネスには申請していないようですが、おそらく申請すれば世界でもっとも長いタイトルになるんじゃないでしょうか・・・?
さてさて、それでは映画史上もっとも長いタイトルとしてギネス認定されている映画とは何か?といいますと、英語では1967年のThe Persecution and Assassination of Jean-Paul Marat as Performed by the Inmates of the Asylum of Charenton Under the Direction of the Marquis de Sadeらしい。こちら日本でも省略されず『マラー/サド マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺』とそのまま邦題でしっかりと公開済み。『博士の異常な愛情』は1964年の作なので、この時代の欧米では長いタイトルの映画が流行ってたのかもしれない。
それよりは短いが米アカデミー賞にノミネートされた作品の中で最も長いタイトルの作品としてギネス認定されたのがBorat Subsequent Moviefilm: Delivery of Prodigious Bribe to American Regime for Make Benefit Once Glorious Nation of Kazakhstan、型破りなコメディアンのサシャ・バロン・コーエンによるお下劣モキュメンタリー・コメディ『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』の続編『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』だ。こう説明するだけでいくら文字数を消費したのだろうか。
他の言語ではイタリアのUn fatto di sangue nel comune di Siculiana fra due uomini per causa di una vedova. Si sospettano moventi politici. Amore-Morte-Shimmy. Lugano belle. Tarantelle. Tarallucci e vinoが2025年現在もっとも長いらしい。邦題は英語題Blood Feudに準じて『愛の彷徨』とめちゃくちゃ短くなってしまった。やろうと思えばいくらでも長くできるし、短くもできるのが映画タイトル。今回は長すぎるタイトルの映画をいろいろ載せたわけですが、世には『Z』とか『A』なんていう検索性最悪の世界で最も短い映画タイトルもあります。みなさんもいろいろ探してみてはどうでしょう。