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こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.27 『THE AFTERMAN』(邦題『1999 SEXサバイバル』)を買った

輸入盤映画ソフトはいつも新鮮な驚きを与えてくれる。今回ビデマで買ったこのソフトはジャケットに25th Anniversary Editionと記されていたのでなんか普通のソフトよりパッケージが厚いし映像がクリアになっているのはもちろんのこと監督インタビューなどの特典もことによっては二枚組ぐらいで満載なのだろうとろくに確認もせずについ思い込んでしまった。そんなわけだからDVDをPCに入れて再生ボタンを押した後に突如現れたメニュー画面にあれっ!である。なんだこの家のDVDデッキでファイナライズしたような無味乾燥かつ自前で作っていないと思われるメニュー画面は!だいたい特典項目すらないじゃない!?

すわ掴まされたか!と束の間思う。もちろんビデマさんが俺に掴ませたという意味ではなくビデマさんにソフトを卸した業者がビデマさんに掴ませたのではないか、と思ったのだ。これはおそらくコピー版のニセモノで流通のどこかの段階でディスクだけすり替えて・・・とか考えながらジャケット裏を見ると映像特典の欄には「監督(ロブ・ヴァン・アイック)フィルモグラフィー、監督からのメッセージ」としか書いてない。え、25th Anniversary Editionなのにそれだけ・・・?別に何の思い入れもない映画だし監督だから構わないがそれにしてもケチンボだなと思いつつ再びジャケットを開けてみると衝撃!なんと!ジャケットの内側に監督のフィルモグラフィーと監督直筆の短いメッセージが載っているではないか!特典って映像特典じゃねぇんだ!?物理特典なの!?しかもブックレットとかでさえなくジャケットの内側に直接!?てことはディスクもこれ正規品だったの!?

このBlu-ray大容量時代、もはやこんな形で特典(特典か・・・?)が付くソフトを見つけ出すのは困難だろう。その意味でTHE AFTERMAN 25th Anniversary Edition、これは良い買い物をしたなと思える貴重盤であった。かのフォレスト・ガンプ氏は人生はチョコレートの箱みたいなもの、開けてみるまで何が入ってるかわからない(チョコレートだろ)という名言を残しているが、今の俺ならこのように言うだろう。「人生は輸入盤映画ソフトのようなもの、開けてみるまで何が入ってるか本当にわからない」。THE AFTERMAN 25th Anniversary Edition、ちなみに外箱だけは無駄に豪華で25th Anniversary Editionな感じだ。

さて、特典については語ることがほぼないことがこれでわかったと思うので映画の内容について書きますが、一言で言えば貧乏な『未来惑星ザルドス』でした。ベルギーのポストアポカリプスものカルト映画としてまぁまぁ有名らしいこの映画、貧乏なのでやってることは概ね『未来惑星ザルドス』の序盤(蛮族が荒野で暴れ回ってるとこ)と終盤みたいな感じですが、でけぇ飛行物体は出てきませんしモブが何十人とか出てきてアクションをすることもなくSFセットとかSF衣装とかそんなもんもない。無精髭のおっさんが台詞もなくあてどなく核戦争後の崩壊世界っぽいどこかをふらふら彷徨うだけというそのシケた展開と演出のない演出はジェス・フランコ映画が娯楽大作に思えるほど。

だが、しかし、映画とは不思議である。どこまでもお金がなくシケているためにかえって「これが核戦争後の世界だ!」という生々しい説得力がフィルムに宿ってしまった。だいたい導入部からして素晴らしい終わった感ではないか。どこだか知らん倉庫をちょっとだけ改造した研究室のようなところに女の冷凍死体があってどうもこれはオッサンの妻のようだから一人寂しいオッサンは冷凍死体と交接、すると研究室が謎の制御不能トラブルに襲われ音だけで爆発が表現されるのであった。ほうほうの体で外に出てきたオッサンを待ち受けていたのは野卑な男集団。彼らは一言も発さずにオッサンを強姦すると一言も発さずに去って行き、オッサンも一言も話さずに絶望荒野に踏み出すのだ。なにこの荒みきった世界観。

終末世界を台詞なしで描く映画といえばリュック・ベッソンの長編デビュー作『最後の戦い』がそうだった。『最後の戦い』が1983年でこちらTHE AFTERMANがジャケット内側のフィルモグラフィーによれば1985年の作だそうだから『未来惑星ザルドス』と共に『最後の戦い』の影響も受けていることはだいぶ明白だが、これらのアートかぶれ終末映画と違って気取ったところがないのがこの映画最大の美点だろう。核戦争後の世界では法も秩序も理性も倫理も完全に崩壊し、人々はもはや言葉も交わすことなくメシとセックスに明け暮れるだけの原始人へと退化していた。そのくせ金持ちは金持ちっぽい生活をしていたりするのが謎だが、ともかくこの身も蓋もなさがTHE AFTERMANの大いなる魅力であり、奴隷農場とか人食い修道院とかを散々巡ったのち、オッサンとオッサンが解放した奴隷女が真実の愛に目覚めるラストは、身も蓋もないからこそ本家『未来惑星ザルドス』よりも感動的だったとこのさい言い切ってしまいたい。意外にもこれはイイ話なんである。

ちなみに監督のロブ・ヴァン・アイック、他に目立った代表作はない人のようなのだが、それでも俺にはTHE AFTERMANがあるということで制作二十年後となる2005年にはTHE AFTERMAN 2を、2010年にはTHE AFTERMAN 3を制作しているらしい。内容的にいやこれ以上続けようがあるのかと思うのだが、陽の当たらない映画人生の中でほんの一瞬だけ差した光を信じて何十年も暗い映画道を歩み続ける一人の映画監督の姿を想像すると、これもまたイイ話。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Twitter→@eiganiwaka