【ミニミニ特集】年末年始に見たい映画11選2024!
激動・・・2024年という年を表現するにこれほど相応しい言葉はないかもしれません。前々年からのウクライナ戦争、前年からのガザ侵攻が終息の気配を見せない中、日本では新年早々に能登半島を大地震が襲い、アメリカ大統領選ではドナルド・トランプが大統領の座に返り咲いたことでアメリカ国内での政治的分断は決定的なものとなった・・・時代が時代ならノストラダムスの大予言本が大ブームになったに違いない末法の世っぷりです。
しかし!だからこそ!2025年はよい年であることを祈りたい!ということで来年はよい年でありますようにと祈りながらムビトイ執筆陣が選んだ(個人差あり)年末年始に見たい映画11本。まぁみなさんとりあえず年末年始感のある映画を家でのんびりと見てみてはいかがでしょうか。では、どうぞ!
ある戦慄(1967)
年末年始最大の脅威・・・それは酔っぱらい!ただでさえ手に負えない酔っぱらいが年末年始はいつにも増して酩酊している上に徒党を組んで無礼講ムードで暴れたりしているので絡まれないように気をつけたいものです。
さてこの映画『ある戦慄』は1967年のアメリカ映画なのですが、そこで描かれていることといったら現代とちっとも変わらないじゃないか!ということで戦慄を禁じ得ません。終電に乗り合わせた様々なバックボーンを持つ人々。そこに酔ったチンピラ若者二人が乱入。今も昔も酔ったチンピラは見ず知らずの他人にふてぶてしく絡むもの、この二人も全然面白くないが超おもしれーって感じで他の乗客に絡むのですが、今も昔も変わらず騒ぎに巻き込まれたくない他の乗客たちは見て見ぬフリを決め込んだので、チンピラどもますます増長。何をやっても俺たちに刃向かうヤツはいねぇってんで逆パターンの無敵の人になっちゃって他の客たち一人一人に絡み始め、それぞれの弱みや触れて欲しくないところをチンピラらしいゼロデリカシーで抉っていくのです・・・。
今から約60年前の映画とは思えないほど「あるある」な恐怖をシドニー・ルメットら当時ニューヨーク派と呼ばれた監督たちの影響を感じさせるリアルな筆致で描いたこの映画、年末年始の祝賀ムードに冷や水を浴びせるようではありますが、酔っぱらい系の事件に巻き込まれて大変なことになったりしないよう、見ておくことをオススメします!
ドラえもん のび太のワンニャン時空伝(2004)
皆さん仕事は納まりましたか?師走の忙しなさに疲れた体にオススメな映画と言えばソウ!『のび太のワンニャン時空伝』だね!映画冒頭にはのび太もドラえもんも出てこず、なんだかデカい神殿の中に二足歩行の老犬が現れる。その老犬が乗り込むのは、なんと見たことのある剥き出しタイムマシン!ワクワクするようなSF展開から始まった物語は徐々にのび太とドラえもんの住む世界に繋がってゆくのであった。
過去のドラえもん映画作品を思わせる要素(『アニマル惑星』、『雲の王国』など)があったり、他の作品の要素(『スターウォーズ』、『名探偵ホームズ』など)があったりと、ドラえもん映画・テレビ25周年にふさわしい盛り沢山の内容になっていて楽しい!また単に楽しいだけではなく、聖書的な要素(磔、黙示録、方舟)も入っていて結構オトナなストーリー。それにしても磔が25周年仕様になっているのは笑っちゃう!
更にこの映画はのび太側の視点からだけでは無く、犬のイチ側の視点から見た物語も描かれているのがポイントで、二人の時空を超えた友情に思わずグッと来てしまう…あのけん玉が映るシーンには思わず号泣…荒んだ心に沁みるストーリーとなっております。
旧声優陣最後の映画作品となった本作。最後のお別れのシーンは声優陣のお別れの挨拶にも思えてジーンと来る…今年お亡くなりになられた大山のぶ代さん、小原乃梨子さんのご冥福をお祈りいたします。
『ロボット・ドリームズ』も良いけど、『ワンニャン時空伝』もイイぞ!年末年始に是非!
アパートの鍵貸します(1960)
奇を衒ったチョイスではなく超王道な年末年始映画として『アパートの鍵貸します』を挙げておこう。クリスマスから新年までを舞台とする往年のラブコメの名作なので年末年始で見るには正にうってつけの一本であると言えるはず。名作として評価が確立されていて、コメディ部分も恋愛ドラマとしても文句を付ける部分がない無難なチョイスなのでその点に於いて平凡でつまんないなぁ、と思われるかもしれないがこういう名作もちゃんと見ておけということなのだ。
しかしこの映画、古いからとか関係なく日本人的には基本設定の段階で? となるところもあるのではないかと思うが、というか俺はそうだったのだがわざわざ不倫するために部下のアパートとか使うか? ラブホ行けや、ラブホ、と思ったのである。でもアメリカというか多分ヨーロッパでもそういう情事専用のホテルとかないんだよね。まぁモーテルとかそういう目的で使われることもあろうが、日本みたいにそこそこの繁華街の外れにセックス用のホテル街があったりはしない。
しかしそのおかげで本作のような優れたラブストーリーの映画が生まれたのだと思えば、ヤリたいときにいつでもヤレるというような環境がなかったからこその奥ゆかしさがあったからだとも言えるのかもしれない。欧米人はセックスに開けっぴろげで日本人は消極的、みたいなことがよく言われたりするが、どっこいそうでもないんじゃない? と思っちゃう風情が本作にはあるんではないだろうか。まぁ不倫がベースでそもそもセックスに対するモラルがないからこういうお話が生まれたという一面もあるのだが!ともかく気持ちよく終わるのでお正月気分で見るのにも良い映画であろうとは思います。
精神(こころ)の声(1995)
ソビエト時代から活動を続けている現代ロシア映画界最大の巨匠かもしれないアレクサンドル・ソクーロフ監督が、紛争中の旧ソ連国タジキスタンの国境警備のために派兵されたロシア人部隊に同行した、上映時間5時間28分にも及ぶ大作従軍ドキュメンタリー。観客を夢の中に誘う幻想的なプロローグ、超長回しのズームアウト、原始的なトーチカなど印象的な場面は多いが、なかでも最も強い印象を残すと思われるのは大晦日の場面。兵舎の兵隊たちはパーティに興じながらも疲れ果てた表情を浮かべ、ソクーロフはトーチカで夜通し監視任務に当たっている兵士たちに年越しを告げるために、月の光も届かない真っ暗闇の中で山道をのぼる。戦場のメリークリスマスならぬ戦場のハッピーニューイヤーである。そのときの兵士たちの笑顔は忘れがたい。
なお、監督のソクーロフは反戦のスタンスを明確にしている人であり、現在のウクライナ侵攻に対しても非難声明を出している。そのことが影響してか当局から監督作品の上映禁止を言い渡され、その後、映画監督としての活動自体も禁止されてしまったという。
ファイト・クラブ(1999)
殺してますか?以前芸人の岡野陽一が3月くらいに何かのコラムで「年末年始に『今年こそ私は変わる!』と決意した自分がいつの間にか死んでる時期」と表現していて感動した。毎年昨年までの自分を殺すんだと決意するも、いつの間にか元の自分が自分の実権を握っている・・・。それでも俺たちは生まれ変わらなければならない。本作を未だ見た事のない人は、とてつもなく清々しい新年を迎える事だろう・・・。既に見たことある人は、改めて爽やかな気持ちで初日の出を拝む事だろう。見たが最後、世間のお正月ムードが腹立たしくて仕方なくなるはず・・・!世の中バカばっかりだ!恋人には捨てられ、会社も辞めた。唯一の頼みの綱である数少ない友人らは、いつの間にか幸せな家庭を築き、会話が噛み合わなくなってしまった。それでも明らかにヤバい独身中年を街で見かけては「俺はそっち側じゃない」と信じてるあなた!年末年始は一緒にこれ見て鍛えよう。YOU ARE NOT ALONE!
マスカレード・ホテル(2019)
『マスカレード・ホテル』それから『マスカレード・ナイト』を手掛けた鈴木雅之という監督は相当なキューブリック狂、かどうかは分からないがキューブリックのパロディを武器として持っている。彼は『HERO』の映画版で、かなり露骨なことをやっている。
そんな鈴木雅之が『HERO』シリーズに続いて木村拓哉の主演作を手掛けた、というのが本『マスカレード』シリーズの位置づけ。マスカレード(仮面舞踏会)でホテルということは『アイズ・ワイド・シャット』で『シャイニング』。その期待に応える映画だし、まるで鈴木雅之&木村拓哉のための企画のようだが、本作には東野圭吾による原作がある。君塚良一&木村拓哉の『教場』に長岡弘樹による原作があるのと同様に。これらの原作小説よりも先に映画の企画があったのではと勘ぐってしまう。
『マスカレード・ホテル』のじっくりと撮られた廊下を見てほしい。また、一歩引いて映画を見てみれば、鈴木雅之が『シャイニング』に飲み込まれていくドキュメンタリーにもなっている。それから『マスカレード・ナイト』で、かつてのタイプライターのような存在感を放つFAXも。
霊魂の不滅(1921)
スウェーデン映画黎明期に活動したヴィクトル・シェストレム監督によるサイレント映画の名作。大晦日の夜、落ちぶれた酔っぱらいが路上に倒れていると、大晦日に死ぬと死神の馬車の御者となって天に召されないという伝説どおりに死神の馬車がやってくる。死神は世界を巡って死せる魂を回収する光景や酔っぱらい亡き後の妻子の境遇を彼に見せ・・・というストーリーはディケンズの『クリスマス・キャロル』の変奏のようだが、北欧の冷たい風景の中で繰り広げられるからこそ人の善意も際立つとはいえ、それ以上に濃厚に立ちこめる死の空気が圧倒的で、スタンリー・キューブリックが『シャイニング』で引用したという斧で扉を破る場面、自殺用の拳銃を引き出しから取り出す場面、それになにより二重露光のテクニックで実現した死神の馬車が海底を走る場面が美しくも恐ろしい。死神の馬車の造型も不気味で、サイレント期のホラー映画クラシックの一つとして数えられることも。
冬休みでもないとこういう硬派なクラシック映画なんか中々見ようという気にならないと思うので、パーッと楽しい年末年始映画も良いですが、たまにはこんなのもどうでしょうか。
狙われた夜/血に染まる大晦日のロックパーティ(1980)
大晦日の北米の各地のカウントダウンに合わせて女性を襲う殺人鬼が登場する80sスラッシャー。2023年公開の「サンクスギビング」のイーライ・ロス監督も幼い頃に今作を観たそうでフェイバリットに挙げています。
ライブ中の主人公である女性司会者を電話で脅す犯人は終盤を除き覆面せず序盤から行動や犯行が描かれるという、主人公の設定含め少し珍しいパターン。したがって襲われる女性達側視点の恐怖やスリルはあまり描かれず、残酷描写も大人しいのですが時に病院関係者、時に牧師や警官に扮する犯人はなかなか知恵が有り(暴走族のバイクを車で吹っ飛ばして追われてしまうドジっ子要素もありますが)、どう女性を誘い襲うのが見所と言え、終盤のエレベーターの下に主人公を吊るして上下させる辺りは結構迫力が。
また、主人公には俳優の息子が居てオーディションに受かるも母が多忙のせいかあまり構ってもらえない・・・というのが犯人の動機や終盤の展開に繋がっており救急車に担ぎ込まれるも・・・なエンディングも想定内ながら悪く無いものでした。
(コウキ)
フォレスト・ガンプ 一期一会(1994年)
年末年始に見たいオススメ映画を1本教えて下さい!だいたい日本語にして500文字くらいで!
年末年始にぴったりの映画としてオススメしたいのが、トム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ 一期一会』です。この映画は、シンプルで誠実な心を持つ主人公フォレストが、アメリカの激動の時代を背景に、その純粋さで多くの人々の人生に影響を与えていく物語です。フォレストの人生は、偶然と努力が織りなす奇跡の連続で、彼が語るユーモラスで感動的なエピソードが心に響きます。
映画の中には、歴史的な出来事や音楽、友情や愛、家族の大切さなど、さまざまなテーマが詰まっています。年末年始という節目に、自分のこれまでを振り返り、未来に向けての希望を持つきっかけを与えてくれる作品です。トム・ハンクスの名演技、印象的なセリフ、そして美しい映像と音楽が一体となり、何度見ても新たな発見があります。
特にラストシーンでは、フォレストが見せる静かな強さと人生の深さに胸が熱くなるはず。家族や友人と一緒に、あるいはひとりでじっくりと味わいながら観てみてはいかがでしょうか?
ファニー・ガール(1968)
1960年代は第二次世界大戦後に新しいライフスタイルやテレビの普及といった環境変化のあおりを受けて徐々に興行収入を悪化させていったハリウッドが、ついに史上最低水準の収益率に達した時代。この時代にはハリウッドメジャー各社が経営統合や吸収合併、スタジオの売却など経営体制の抜本的改革を余儀なくされ、それと共にハリウッド映画もそれまでのクラシカルなハリウッド映画からモダンなハリウッド映画へと変化を遂げていきました。
そんな過渡期1968年に公開されたこの『ファニー・ガール』はクラシック・ハリウッド最後の輝きを放ちつつ、新しい時代の幕開けも告げるミュージカル映画。この時代のハリウッド映画で流行っていたシネスコ画面いっぱいに広がる市場や鉄道駅のスタジオセットは色彩も鮮やかで美しくも迫力満点、豪華絢爛な衣装をまとった何十人ものダンサーが画面を埋め尽くすレビューシーンも夢のようにうっとりとさせられます。一方、この映画がデビュー作となった主演バーブラ・ストライサイドは従来型の絶世の美女タイプのハリウッド女優ではなく、どちらかと言えば冴えない風貌。しかし歌声やしゃべくりは素晴らしく、表情は豊かでユーモラス、友達になったら楽しいだろうなと思わせる親しみやすい個性を持った彼女が例のシネスコ画面の中をちょこまかと動き回るさまは実にフレッシュ。
古い時代から新しい時代へと変わっていく当時のハリウッドを体現するかのような、ゆく年くる年映画と言えましょう!
スペル(2009)
年末年始は去る年の事を考えながら、「人生」についてしみじみと考えたいですよね…そんな人にオススメな映画はコレ!サム・ライミ監督作『スペル』だ!
主人公は田舎の農村出身だけど、今は銀行の融資部門で頑張って働いている若い女性。元々心優しい女性だったが、アジア系男性とのポスト争いに一生懸命になるあまり、ジプシーのような見た目の汚い老婆のローン返済期間延長のお願いを断ってしまう。支店長の指示により断ったとはいえ、老婆は主人公に敵意を剝き出し!老婆は主人公に呪いの言葉を吐きながら、警備員につまみ出される。その後銀行の駐車場だけでなく、主人公の家まで襲撃する老婆!老婆とは思えないパワーに主人公はなんとか抵抗するも、呪いの力は執拗に主人公を追い詰めるのだった…。
この映画を観てしみじみと考えるのは、誰かの指示があったとしても自分の信念や優しさを捨ててはいけないという事だったりする。主人公は上司からの指示があったという事を言い訳にはしているけど、実際はローン返済期間を延長できる余地はあったのかもしれない。何かを決断する時に誰かのせいにしながら選択をしてしまうと、結局その結果は自分に返ってきてしまうのだ。映画って人生ですね~。(しみじみ)
寓話的なストーリーは勿論、サム・ライミ印の不謹慎ドロドロ表現も抜群!老婆の両目、体液、入れ歯が主人公に向かって飛んでゆく!厳しい世の中だけど、いつでも優しさを忘れずにね!いやぁ、イイ話だなぁ~…嘘です…ネコちゃん…。