【発掘80s】第3回 『影なき男』(1988)
ここは80年代好きの後追い世代による80年代に作られた傑作、あるいは忘れ去られているかもしれないけど傑作ではないかと思う作品をピックアップ(=発掘)して稚拙な感性ながらその魅力を紹介していくコーナーです。※文章は自身のFilmarksにおけるレビューを一部加筆&修正したものになります
今回紹介するのはダイヤの強盗殺人犯を追ってシドニー・ポワチエ演じるFBI捜査官がトム・べレンジャー演じる山岳のプロと共に犯人が逃げた山岳地帯へと向かうサスペンスアクションの『影なき男』(1934年の同名の作品とは関係なし)。監督は「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」や「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」のロジャー・スポティスウッド。
冒頭、スナイパーが狙うも人質と共に毛布を被り顔がバレずに逃走する犯人の知恵にまず膝を打つ今作、犯人は山岳ツアーに参加者として紛れ中盤まで誰が犯人か分からないのが特徴。また、参加者の中には「ダーティハリー」のあの人や「ショーシャンクの空に」(と「スポンジ・ボブ」 笑)のあの人が居るので、犯人の正体は人によっては見当つく一方で犯人じゃなかった方の最期は意外という絶妙さ。
案外山岳パートではアクションを伴う犯人との対決等が用意されてるわけではなく、崖を登れなかったり吹雪の中凍えるシドニーをトムが助け、彼が主導権を握る中交流を深めるのがメインながらシドニーの馬があらぬ方向へ行き戸惑ったり山小屋のドアを開けたらヘラジカが居たりと意外とコミカル要素が充実しており、銃を撃って威嚇させ馬を帰らす超雑な強行手段、クマと遭遇すればホッー!ハッー!ハンブルルルルアッ!という顔芸伴うヘンテコ威嚇で追い払う、真面目な役柄が多いシドニーがおもしろ黒人と化すキャリア史上屈指の名シーン(?)まで用意。
終盤のカーチェイスやフェリー内での追跡劇では今度はトムの代わりにシドニーが水を得た魚の如く活躍。犯人との決着のつけ方もエンディングも結構あっさりしてますが前者は海の中、というのが少し意外だしシドニーがトムに言った言葉への返しor反映となる後者は相手に対するリスペクトを感じさせるものでとても良い終わり方。
前述のクマのくだりに関しては賛否両論でしょうが、現在の作品ならシリアス一辺倒になりがちな題材ながらユーモアも忘れないこの時代の娯楽作品ならではの作風は好印象で隠れた傑作かもしれません。2025年現在VHSのみで未DVD化で配信サイトでも観れらない作品ですが、「Shoot To Kill 1988」とYoutubeで検索すると今作を投稿している映画チャンネルを見つけることが出来ます(一応日本語字幕も設定可)。