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あの映画のあれ

【あの映画のあれ】あれ9 映画の「画角」

普段このコーナーでは映画の中によく出てくるけど詳しくは知らないものを雑に情報収集して解説する人力AIのようなことをやっているんですが、そういえば最近SNSで映画の「画角」を間違った意味で使っている人がとても増えたような気がしているので、ちょっといつもとは違うんですけど映画の「画角」とは何か、手短に人力AI解説してみましょう。

まずどのように誤用されているかというと、これは具体例をSNSとかから拾ってきて引用するとなんだか晒しみたいになって嫌なのでしませんが、映画の「画面の形」と誤解されてる。「画面の形」というのは横長だったり四角だったりするあれです。この画面の形は「画角」ではなく「アスペクト比」(画面の縦横の比)というのが正確な表現。4:3とか16:9とかいうやつ。スタンダードとかシネマスコープとか比率と名称はいろいろある(本当はシネマスコープはアスペクト比だけを差す概念ではないのですが関係ないので割愛)

これがアスペクト比の違い。©ChatGPTさん

じゃあ正しい意味の画角が何かというと、これは「カメラの視野角」を指します。具体的には「広角レンズ」と「望遠レンズ」の違いですが、文字で説明してもわかりにくいのでとりあえず絵を見てもらいましょう。

これが画角の違い。©人間

写真が趣味の人には説明不要かと思いますが、望遠レンズよりも画角の広い広角レンズを使うと通常のレンズよりも手前のものを多く、大きく写せるので、狭い室内とかで撮影するときにはこれを使いがち。その副作用として広角レンズで撮影すると画面の両端が少し丸く歪むので、超広角レンズは「魚眼レンズ」などと呼ばれたり。

一方、広角レンズよりも画角の狭い望遠レンズで撮影をすると、近くのものを大きく写せる広角とは反対に遠くのものを大きく写せる。そのため屋外で風景写真を撮りたいときは望遠レンズを使うと被写体が映えたりします。こちらにも副作用はあって、画角が狭いということは遠くまで撮れるということなので、カメラの手前にあるものと奥にあるものの遠近感が歪んで、手前にあるものと奥にあるものの距離が縮んで写るのです。これを「圧縮効果」とか言う。

余談ですが、この望遠レンズの圧縮効果を使うと、本当はそんなに混雑してない場所でも超混雑してるように写るので、その劇的効果を狙って新聞社のカメラマンとかは人がたくさん集まる何らかのイベントの際に望遠レンズを選択しがち。逆に大きな構造物をどーんとでっかく写したい場合なんかは広角カメラを使うと迫力が出るので、その効果を頭に入れて新聞の写真を見るとほほぅこれは〇〇レンズを使ってるなとわかって面白いかもしれません。

以上の説明を簡単にまとめると、画角が広いと画面の横(左右)方向の情報量が多くなる画角が狭いと画面の縦(奥)方向の情報量が多くなる、というわけです。再び絵で見てもらいましょう。これが画角の広い広角レンズ(左)で撮った場合と画角の狭い望遠レンズ(右)で撮った場合の違いです。

これが画角の効果の違い。©ChatGPTさん

上の絵を見ると、広角レンズで撮った場合(左)はカメラの左右方向のものをいろいろ写せてますが、それにより左右がちょっと歪んでるのがわかります。一方、望遠レンズで撮った場合(右)は、遠近感が歪んで画面奥の木が大きく写り、子供・花・木の縦の位置関係が圧縮効果によってわかりにくくなってますね。ありがとう絵を描いてくれたChatGPTさん。

あそうだ大事なことを忘れてましたが、画角の広さと画面のアスペクト比は無関係なので、広角レンズでも望遠レンズでもどんなアスペクト比の映画も撮れます。画面のアスペクト比を決めるのはカメラのレンズではなくフィルムで、今の映画はデジタル撮影なので好きなアスペクト比で撮れるんですが、昔の映画はフィルム撮影だったので、使用するフィルムの種類によってアスペクト比が決まっていたのです。そのため今では一般的なシネマスコープサイズの映画というのも、実は1960年代になってシネマスコープ用のフィルムと特殊なレンズのセットが発明されたことでようやく登場した当時は革新的な映画で・・・しかしこの話はまた別の機会に回しちゃいましょう。

ということで以上が映画の画角の正しい使い方でした。面白い映画はだいたいシーンごとに画角を変えて撮影してるので、ただしい意味での画角に注目して映画を見ると面白い映画が更に楽しめるかもしれません。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com