【ミニミニ特集】猛暑なんか吹き飛ばせ!猛熱サマームービー10選!
梅雨が明けたんだか明けてないんだかよくわからないままとにかく今年も夏がやってきた!プールに入る、かき氷を食べる、怪談話を聞く・・・などなど夏の暑さを凌ぐ方法は多々あれど、その代表格はやはり冷房のたっぷり効いた部屋もしくは映画館で見る映画!ということでアツさでもってアツさを制す的な色んな意味でアツいサマームービーをみんなで10本選んでみたぞ!電力不足の今年の夏は猛熱サマームービーで乗り切れ!
ハイドアウト(2014)
ああ、暑い なぜ毎日ここまで暑いのか、暑い、暑い 暑すぎて発狂しそう、暑すぎて死にそう! そんなあなたにとっては共感度100%であろう設定のゾンビ映画がある、それがこの『ハイドアウト』だ。
この映画のあらすじを端的に説明すると、銀行強盗を計画した主人公たちにゾンビが襲い掛かる、という話なのだが、このゾンビの設定がなんと「気温が暑すぎて凶暴ゾンビ化してしまった人間」という設定なのだ!どういう理屈なんだ!?しかし共感度は高い!!! この妙な設定からある程度お察しできるだろうし、こちらも公平性を保つためにハッキリ言うが、この映画かなりチープだ。ストーリーも演出もひどいし、主演はブルース・ウィリスみたいな上にオチもなんかシックス・センスみたいだし・・・
しかし!クライムものとゾンビものを融合させようという試みや設定やオチからは(それが活かせてるかはともかく)このゾンビ飽和時代にまだ新しいものを作ろうという試みは感じる。実際、かなり低予算であろう中でゾンビもののツボである世界の崩壊や内臓喰いは押さえてあるし、実際それらを見ると安くてもワクワクするものだ。よってチープだがアツい心意気を感じる映画ではあると思う!
変わり種を観たいあなたへ、自己責任で!
(ハカタ)
真夏の夜のジャズ(1959)
数年前の修復版公開を機に気軽に配信で見られるようなった名作。1958年に開催されたニューポート・ジャズ・フェスティバルのドキュメンタリーなのだが、記録映画として見るとイマイチ。なぜなら歌手やバンドメンバーより、客席の金持ちそうな観客を映している時間の方が長いからだ。おまけに途中ヨット遊びに興じる若者を映した謎のイメージ映像が挿入されたりするし。(素直に会場を映してほしいところ)
観客たちはというと、皆静かに音楽に聞き入っていて、お祭りというより大人の社交場のような雰囲気である。洗練された紳士淑女ばかりで、なんかウソくさいのだが・・・それもそのはず、実際ウソなのである。途中赤いニットを着た印象的な美女が映るが、彼女はパトリシア・ボズワースという立派な女優で、おそらく撮影用のサクラ。彼女以外にも雇われモデルが何人か映っているかもしれない。
ここ数年、地球温暖化のせいか日本の夏はとんでもなく暑くて不快な季節になってしまい、情緒や雰囲気といったものがごっそり失われてしまった。「真夏の夜のジャズ」は失われた優しい夏の夢を見せてくれる、素敵な嘘で出来た映画である。
(アタイサン)
ヒルズ・ハブ・アイズ(2006)
変わり種ホラーを連発した鬼才ウェス・クレイヴンの人気作『サランドラ』をフレンチ・スプラッターの雄アレクサンドル・アジャがリメイク。ネヴァダの砂漠地帯に迷い込んだ旅行中の一家を砂漠に住む人食い族が襲う。呵責のないゴア描写が話題を呼んだ『ハイテンション』で脚光を浴びたアジャだが、そのセンスはむしろゴアに至るまでのサスペンス醸成の巧さにある。この種の映画としては珍しく丁寧に時間をかけて襲われる側の人物像を掘り下げ、細かい新事実を一つ一つ積み上げていくことで見えざる恐怖の輪郭をじっくり想像させ、避けられない暴力を存分に予感させたところで一気に暴力とゴアを爆発させる! 最初の襲撃シーンなんか何度見てもおしっこちびっちゃうね。
アジャのホラー映画のもうひとつの特徴はやられる側が決してやられるままではいない点で、この映画も中盤から被害者一家が奮起して人食い族に反転攻勢をかける。血で血を洗う殺し合いは凄惨でありつつも、序盤のサスペンスの積み重ねがあるためカタルシスを感じずにはいられない。だがすべてが終わった時、人食い族と一家はもはや区別がつかなくなっているだろう。ここに正義はない、食うか食われるか、殺すか殺されるか、その違いがあるだけだ。人食い族の正体には科学的・医学的な観点から問題があるものの、強烈な血と暴力の応酬を通してアメリカ批判を展開した、ヴァイオレントでインテリジェントな熱狂ホラーだ。
(さわだきんた)
チェンジリング(1980)
「チェンジリングのボールだよ!」 ――牧野修『屍の王』より
チェンジリングといえば2008年のイーストウッド作品が有名だが、そしてそれはイーストウッド的に爆熱い(「真にアメリカ文化と言えるものは西部劇とジャズだけだ」)映画なのだが、それとは全く無関係のピーター・メダック作品がある。小中千昭・著『ホラーの作法』でも取り上げられている古典……というには新しい1980製作。よってその飾り気のない題名は『回転』『たたり』のような貫禄を持つには至らず、ちょっと埋もれてしまっている。
で、このチェンジリング(1980)が熱いのである。何と言っても舞台装置の数々が熱く作用している。タイトルの出方、洋館、ラップ音、隠し扉、オルゴール、オープンリール、図書館のフィルムで新聞みるやつ、そしてボール! 井戸! 井戸だぞ井戸!こうして並べてみると、この映画はかなり正統に「ゴシック」だ。ゴシックは何故、観るものを熱くさせるのか。前述の牧野修、小中千昭に加え小野不由美『ゴーストハント2 人形の檻』もまたチェンジリング回!と言い切っていいくらいのもので、日本の怪奇作家たちに熱く愛されている作品でもある。
(コーエン添田)
アクアスラッシュ(2019)
寒いのは嫌だが、暑いのはもっと嫌だ。夏といえばプール!プールといえば『アクアスラッシュ』!
というわけで今年の夏はウォータースライダーにとんでもない仕掛けが施され 人間がバラバラになってしまう『アクアスラッシュ』を推したい。
とある高校の卒業生たちの恒例パーティー。 前日はセックスやドラッグ、ライブに勤しみ、翌日は賞金を巡ってウォータースライダーでタイムを競う。 本編のほとんどは痴話喧嘩が占めているが意外としっかり伏線が張られている。
いよいよレースが始まるがなんと3つのスライダーのうち、 1つには何者かによって鋭利で太い刃物がXの形に仕込まれていた! スライダーの異常な水漏れを発見し大会の中止を求めるスタッフだが、 ラリった学生たちは誰一人言うことを聞かない! ノリノリでスライダーを滑る学生たち。そして刃物を目の前に、為す術もなくX字に切り裂かれる肉体、 血に染まるプール…。
監督は80年代にウォータースライダーが普及した時”何があっても途中で止まることができない恐怖”から本作の着想を得たという。 こんな物騒なアイデア1つで1本の作品を作ってしまった! もしもプールに行ったとしても、ウォータースライダーだけは避けたいと思う。
(心理)
北国の帝王(1973)
ずいぶんとゴツイ邦題だが「北国の帝王」とは汽車に無賃乗車して全米を旅する季節労働者・ホーボーのことで、演じるリー・マーヴィンはどんな汽車でも絶対に無賃乗車することからこう呼ばれている。なんだよそれ! 一方、光あれば影あり、絶対に無賃乗車するホーボーがいるなら絶対に無賃乗車させない鬼の車掌もいて、こちらはアーネスト・ボーグナイン。どれぐらい鬼かと言えば車両の底面にへばりついて無賃乗車するホーボーにハンマーをぶつけて走行中の汽車から落とし、それでも汽車に乗ろうとするホーボーがいれば鎖鎌(!)を手に殺しにかかるという鬼っぷり。ホーボーにはホーボーの誇りがある。そして車掌には車掌の誇りがある。かくしてマーヴィンとボーグナインは無賃乗車をかけて宿命の対決へと突き進んでいく…ってなんだよそれ! なんなんだよ!
まるでコメディのような設定だが笑いどころ一切なし。二人の濃すぎるタフガイが汗と唾を振りまきながら乗せる乗せないで殺し合いをする姿はバカバカしくも息を呑む。アツい。アツすぎる…北国の話なのにひとかけらの涼しさもない。くだらないことに命をかける男たちを描き続けたロバート・アルドリッチの、まさに極北のような一本。
(さわだきんた)
小さな逃亡者(1953)
つまらない兄弟喧嘩で家出した少年ジョイ君(御年7歳)が、コニーアイランドで一人ぼっちの大冒険をする映画。
コニーアイランドといえばウディ・アレンのニューヨーク映画などでお馴染み、NY近郊に古くからある庶民の遊び場である。大人の観客からすると何てことないレトロな遊園地でも、ちびっ子たちからすると憧れの場所。主人公ジョイ君も、お馬に乗って屋台で遊んで浜辺を散歩して、思う存分夏をエンジョイするのだが・・・果たして無事お家に帰れるのか!?
あらすじだけ紹介するとありがちな佳作のように感じられるだろうが、本作はなんと53年のベネチア映画祭で銀獅子賞を溝口の「雨月物語」と同時受賞している。世界各地のニューシネマや米インディ映画の礎となった、映画史的に大変重要な一作なのだ。
残念ながら日本ではリバイバル上映もソフト化もされていないので、見る機会のない幻の名作・・・と、思いきや、なんとコスミック出版「ファミリー名作映画コレクション 若草物語」に収録されているじゃないか!コスミック出版といえばノワール屋さんのイメージが強いが、真の実力はじゃりン子映画に有り。この夏の自由研究は10枚組全制覇で決まりだね!
(アタイサン)
夕陽のギャングたち(1971)
原題『Duck You, Sucker』。別名『Once upon a time in… the Revolution』。セルジオ・レオーネのアメリカ史三部作、またはワンサポナタイミン三部作の真ん中。主人公格の一人をロッド・スタイガーが演じている。エンニオ・モリコーネが用意した彼のテーマ曲は、「ワッ、ワッ、ワッ……」という声ネタが先導する。新しすぎる。この「ワッ、ワッ、ワッ……」は後に思わぬところに接続される。任天堂のゲームソフト『メイドインワリオ』である。この中のBGMの一つで、『スーパーマリオブラザーズ』のメインテーマを「ワッ」で演奏している。「ワワッワッワワッ」という調子で。思えばワリオというキャラクター自体、とてもセルジオ・レオーネ的ではないか。マリオ、クッパ、ワリオの三者はいわば、The Good, the Bad and the Uglyである。つまり『続・夕陽のガンマン』。ワリオとワルイージの造形に目を向ければ、それは『夕陽のギャングたち』の主人公2人そのものだ。もちろん、その先には『ワリオワールド』の荒野がある。
(コーエン添田)
沖縄やくざ戦争(1976)
千葉真一の放つ「戦争だ~い好き」の台詞があまりにも有名な東映実録ヤクザ映画の沖縄編。高田宏治×神波史男のシナリオは沖縄ヤクザを中核に沖縄社会の搾取構造を重層的かつ冷徹に描き出し、あまり「アツイ」という感じではないのだが、アイスキャンデーを頬張りながら暴れ、水虫を掻きながら「戦争だ~い好き」とのたまい、キャバレーでは琉球空手を引っさげてステージに乱入、笑いながら室田日出男のイチモツをちょん切り、死ぬときはまさかの三点倒立・・・という千葉真一のアツすぎるキャラクターは千葉の東映実録ヤクザ路線もうひとつの当たり役である『仁義なき戦い 広島死闘編』の大友勝利をも凌ぐ。
だがアツイのは千葉真一だけではない。松方弘樹、渡瀬恒彦、尾藤イサオや室田日出男それぞれの絶望的な生の足掻きもまたアツく、同時に切ない。沖縄のギラつく太陽の下、戦後沖縄をたとえ暴力によってだとしても治めてきたと自負するヤクザたちが本土ヤクザ・梅宮辰夫の策略で互いに憎み合い殺し合い、邪魔者がいなくなったその土地を梅宮が何食わぬ顔で踏み荒らしていく光景を観れば、その見た目のアツさに反して背中を、あるいは頬を冷たいものが伝うのではないだろうか。アツさを感じながら冷をとることもできる、夏にぜひ観たい傑作だ。
(さわだきんた)
サンズ・オブ・ザ・デッド(2015)
あぁ〜暑い、暑いだけで地獄なのにゾンビまで来ちゃって地獄と地獄のお得セットだ!!!・・・そんなゾンビ映画は記憶の限り何本かあるが、その中でも比較的手軽に観れて面白くてアツいのがこの『サンズ・オブ・ザ・デッド』だ!
この映画がどういう映画かというと、ゾンビパニックが発生した世界でメキシコに逃げるため空港に向かっていたカップル、しかしその道中の荒野で1匹のゾンビがやってきて彼氏の方が殺されてしまう。当然そのゾンビは彼女の方に向かい始め、逃げた女1人とゾンビ1匹の荒野の追いかけっこが始まってしまう・・・という変わり種ゾンビ映画だ 出てくるゾンビは基本的に一体だけだが、しかし「荒野」×「丸腰」となればかなりの脅威!灼熱のなか息つく暇もなく延々追われ続ける・・・これはキツい!低予算ながらミニマムに焦点を絞っているのでチープさはないし、このような狭い舞台設定の話を面白く描くためのアイデアも豊富だ。
しかし、ここで一捻りあるのが次第にこの主人公はゾンビに対し愛着が生まれていく・・・という所。そういう心理的な揺らぎやドラマがこの作品の肝なのだ。だがこの映画のシビアなところはゾンビはゾンビであるという構造を崩さない所で・・・と、ここからは実際に観て確かめてほしい。 シンプルなのに唯一無二、そんなゾンビ映画だぜ!
(ハカタ)