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【特集・イタリアンホラー 鮮血と腐肉の美学】フルチ除外!イタリアン・ゾンビ映画三選!

どうもこんにちは、ハカタです。
今回はイタリアン・ホラー特集ということで、当然ゾンビ映画について考えない日がない僕はイタリアのゾンビ映画の文章を書こうと思い立ったわけですが、しかしここで一つの問題点が浮かび上がってきた。それは「フルチばっかり」問題である。
言わずと知れたホラー映画界の巨匠であり、『サンゲリア』『ビヨンド』等ゾンビ映画を精力的に製作してきたルチオ・フルチ監督を無視してマカロニ・ゾンビを語ることは難しい。その結果そこら辺の人にパッと思いつくイタリアゾンビ映画を3つほど挙げさせると全部フルチゾンビになってしまう事態も頻発するのではないだろうか。(3つ挙げられる時点でだいぶマニアックな方な気がするが)
これはよくない!と思い、今回はフルチ以外のイタリアン・ゾンビ映画を紹介することにするぜ!

悪魔の墓場

ゾンビ映画において重要な時期なように思われるのに意外と注目されない時期とはいつだろうか?それは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』公開からの10年間、『ゾンビ』が公開されるまでだ。
ジャンル、というものは革命的な作品が一歩を踏み出すものだ。しかし二歩目はどうだろう?第一人者以外の誰かがそのジャンルの型を踏襲し二歩目を作る。それができなければジャンルは発展しないのではないだろうか。だから僕は『ナイト〜』以降の数年間に発表されたゾンビ映画はみんなが思っている以上に大事な作品なのではないかと思っている。今作の公開は『ナイト〜』から6年後の1974年に公開されたホルヘ・グロウ監督によるイタリアン・ゾンビ映画だ。一応監督はスペイン人で一般的にスパニッシュ・ホラーとして扱われているが、イタリアとスペインの合作なので今回紹介させてもらった。

前置きが長くなったが今作のあらすじを説明するととある村で新型の害虫駆除機が使われるがしかしその超音波により死者が蘇り・・・と言う話だ。

今作の面白さは何と言ってもその手堅い作りによるところが大きい。全体的な作りはオーソドックスだ。まず予兆を描き、そして段々と悲劇が起き始める・・・この時点でここまで型が出来上がっていることにゾンビというジャンルの凄さがあるように感じるが、手堅くまとめた監督の手際も当然評価すべきだろう。
全体的にダウナーな雰囲気で、それにより死体が動くと言うことの嫌悪感が引き立つようになっている。超音波で死者が復活するという設定はオカルトSF風味だ。
今作のゾンビ造形でまず目につくところは赤黒い目。ここはまだカラーゾンビ作品が少なかった頃にどうやってインパクトを与えるかの試行錯誤がうかがえて興味深い。
話の面で言えば『ナイト〜』とは違いゾンビの発生要因がハッキリとしているのが特徴だろう。人間が開発した機械によって死者が復活するという設定には人間の愚かさが強調されているように見える。まるでそれに呼応するかのようにこの映画に出てくる警察がマジでクソむかつく無能警察となっているぞ!こいつとの戦いも見所の一つだ。
まさしくクラシカルで硬派なゾンビの名作だろう。

地獄の謝肉祭

1980年公開のアントニオ・マルゲリーティ監督によるカニバリズム映画である今作。
今から非常に当たり前のことを言うが、ホラーとは恐怖を描くものである。サメに喰われる恐怖、殺人鬼に殺される恐怖、霊に追われる恐怖・・・とそれはジャンルによって変わるものだが、ゾンビ映画ではやはりゾンビに襲われる恐怖、が基本だろう。では今作の恐怖とは何か?

ベトナム帰還兵のノーマンは捕虜となっていた時に飢えからか人肉を貪っていた仲間に手を噛まれて以降生肉への執着心が発生するようになっていた。帰還後その仲間がカニバリズムに侵され、突然街中で人を襲い始める。さらにはそいつに噛まれた人間も人肉を欲するようになり・・・

今作の恐怖は感染、自らが何か知らないものに蝕まれているという恐怖だ。ベトナム帰還兵の主人公がトラウマを抱えながら、次第におかしくなっていく友人どもを見ていつか自分もああなるのではないかと思う・・・この生々しい恐怖が今作の面白さだと思う。人肉喰い欲求が感染するという突飛な設定さえ受け入れられれば、ベトナム戦争を踏まえなかなかに批評性の高いホラーとなっている。
さらに特殊なのは、感染しきった後でも主人公としての役割をもち続けると言うことだ。能動的に動き、人間から逃げる。この後半のジャンル転換の面白さが今作の魅力だろう。ここのパートはアクションものとしての面白さがあるのはもちろん、ベトナム戦争の文脈を踏まえるとニューシネマのようにも見えてくるのだ。

今作をゾンビものと分類していいかどうかは微妙なところだが、感染×人肉喰いという組み合わせからゾンビものとさせてもらった。

ゲロゾイド

ゾンビ映画には面白いつまらないという軸とは別に、まともなものとそうでないものという軸がある。上述の2本はまさにまともな方だが、しかしそうでない方も含めてゾンビ映画史なのだ。
さてそういう訳で最後に紹介するのが『ゲロゾイド』。1988年公開のアンドレアス・マーフォリ監督による今作は死霊のはらわたインスパイア系ゾンビ映画だ。カメラワークなどがどう見ても死霊のはらわた。しかし当然だがそういう表象は再現できても、あの凄まじい勢いと面白さを再現するのは非常に難しいと痛感させられる。


この映画、85分しかないのにものすごくマッタリとしていて眠気が湧いてくる、しかし画面が暗すぎるので部屋を暗くしなければ見れないのでますます睡魔が恐ろしくなる作りとなっている。漆黒の暗闇が恐ろしいのは映画の中の人間だけではない。

謎のクラシック音楽が流れ歩く姿などをダラダラ映し続けるシーンが多いが、そういうのをなんか芸術的な映画に思えてくる。僕は最近ゴダール映画をよく観るのだが、彼の作劇の定型を破壊するような演出と、意味不明なシーンが連発するZ級映画の差が本当にわからない。 


全体でキャラがバケモン役や冒頭の殺され役含め5人ほどしかおらず、メインの襲われ役はそのうちカップル2人だけなので頑張って最小限の人間だけで全編血まみれにしなければならない。なので主人公の男がとことん虐められる!謎の液体をかけられ体調不良になった後そのままゾンビになるかと思いきやそうはさせてくれずその後も追われるわハニトラかけられるわ手が潰されるわ・・・と散々でありその様を見れば「一瞬で死ぬ雑魚大学生軍団も出すにはお金がかかる」というごく当たり前だが忘れがちな事実を思い出すだろう。
しかし釣りゾンビやギョロ目ゾンビなど今作にしかない見所は多い。前述のとことん虐める構成もこうなったら嫌だな〜という恐怖感情を引き起こしていると言えば長所に思えなくもないのではないか。ゴア描写の多さや、ドラマをスパッと切り85分にまとめた潔い構成なども誉められる点ではある。興味があれば観てみてはいかがだろう。

・・・いかがでしたか?イタリアのゾンビ映画というのは映像的にもテーマ的にもなかなかに興味深いものが多く今回の記事も(ゲロゾイド以外)なかなか興味深い作品が揃った。どれもゾンビが好きな人にはオススメできる映画なのでぜひ観てほしいところだ。(ゲロゾイド以外)

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博多には行ったことがない パラッパラッパーで全ての感情を表すアカウント→ @goodbye_kitty3