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特集

【アカデミー賞特集2023】せめてこれだけは見ておきたいアカデミー作品賞受賞作10選!

いよいよ今年もアカデミー授賞式の季節がやってきた!めでたいなぁ!たのしいなぁ!なんたってアカデミー賞ですよ!ねぇみなさん!ねぇ!いやぁ、アカデミー賞だなぁ!アカデミー賞!アカデミー賞ですよぉ!アカデミー賞ね・・・うんアカデミー賞・・・ごめんアカデミー賞ってよく考えたらあんま知らないし思い入れもなかったわ。

そんな人、実は多いんじゃないですか?名前は知っているがぶっちゃけどんな作品が受賞しているのかわからない。そこで!とりあえずこれだけ見とけばアカデミー賞を知ったかぶれるアカデミー作品賞(アカデミー賞の最高賞だ!)受賞作をアカデミー賞の100年弱にも及ぶ歴史の中から10本極選!いよいよ日本時間の3月13日に迫った第95回アカデミー賞授賞式、この10本を押さえておけばより楽しめること間違いなしだ!たぶんねたぶん!知らんけど!

つばさ(1927)

 栄えある第一回最優秀作品賞受賞作。時は第一次世界大戦、対照的なアメリカ人青年二人が航空隊に入って大活躍する笑いあり・涙あり・ロマンスありの楽しい娯楽大作である。一応戦争映画のはずだが、他の映画と違って悲惨な描写がなくスリリングな冒険という雰囲気だ。ドイツ兵が主役である同時期の『西部戦線異状なし』(30)と比べると、アメリカは国土が戦場になってないから陽気でいられていいですね~という気にもなってくる。

 監督のウィリアム・A・ウェルマンがフランス外人部隊でパイロットをしていたこともあって、空戦シーンは本格的。(本格的というか本物なのだが) スタントマンを使わず俳優本人が飛行機を操縦している。現代人からすると手に汗握る戦闘というより、100年前のヒヤリハット案件にしか見えず色んな意味で緊張感がある。てか、実際に撮影中死人が出たらしい。去年公開された『トップガン マーヴェリック』(22)ではトム・クルーズが戦闘機を実際に操縦していることで話題となったが、人が死なずに映画が撮れるようになるまで100年かかったと思うと感慨深いものがある。

 現在デミアン・チャゼルの『バビロン』が公開中だが、ハリウッド黄金期の光と闇を象徴する一本として絶対に抑えておくべき永遠の名作だろう。

アタイサン

マーティ(1955)

『タイタニック』『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『ディア・ハンター』・・・これらの名作群に共通するもの、それは3時間以上の上映時間だ。「バカ野郎!そんな長時間も劇場で観てたら途中でトイレ行きたくなっちゃうし、家で観たとしても3時間もスマホ弄らなかったら脳みそが原始人になっちゃうよ」と思った現代人のあなた!そんなあなたに紹介したいのが、アカデミー作品賞史上最も短い映画(91分)、『マーティ』だ。

主人公はマーティという精肉店で働く中年。弟たちが次々と結婚していく中、恋人もおらず孤独感を募らせ自らを醜男と呼ぶ非モテだが、そんな彼があるダンスパーティで一人の女性と出会い・・・というストーリーのロマンティックコメディとなっている。 実際に観て感じるのはその小品さ。ほとんど一夜の物語だし、ロケーションも少ない。大したことが起きるわけでもない。ラストも呆気なさに驚くだろう。しかしこの無駄のなさが良い!感情的に盛り上げるための余計なクライマックスを用意せず、ただただ語るべきことを語った瞬間に終わるキレの良さ!この無駄に長尺な映画が溢れる現代には沁みるぜ!

なにせ70年前の映画なので価値観的にキツい部分もあるが、しかしこの非モテの心情は今でも通じるはずだ。大作でもない、シリアスな社会派でもない、アカデミー賞映画のもう一つの側面を知れる映画だろう。

ハカタ

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003)

ハイファンタジーとしては2023年現在唯一のアカデミー作品賞受賞作。伝統的にアクションやSF、ホラーといったジャンル映画はあまり高く評価されないアカデミー賞においては『羊たちの沈黙』に続く数少ないジャンル映画の受賞作でもある(その後、SFジャンルでは『シェイプ・オブ・ウォーター』がオスカーを獲得した)

『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』は言う必要もないと思うがピーター・ジャクソン監督による『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の最終章。前二章もその年のアカデミー作品賞にノミネートされているが受賞はならず、最終章で有終の美を飾った形。実質的にはこの最終章にオスカーが与えられたというより『ロード・オブ・ザ・リング』三部作全体に与えられたと考えていいんじゃないだろうか。

内容に関しては説明不要だろう・・・とお茶を濁しているのは劇場公開版に三部作総計2時間以上の追加映像を加えたエクステンデッド版でのオールナイト上映(休憩時間など合わせて12時間)に過去二回も参加して二回とも全然寝なかったにも関わらず細かいところをすっかり忘れているためだが、逆に言えば細かいところを記憶させないほど映画内の世界が完成されているとも言える。

こういう映画はあーだこーだと批評ができない。ただ画面の流れに身を委ねてこの世とは異なる完全なる異世界をフロドたちと共に冒険するのみだ。21世紀の、あるいはファンタジー映画界の『スター・ウォーズ』というべき、異世界映画の金字塔である。

さわだきんた

シンドラーのリスト(1993)

歴代のアカデミー作品賞の中から一度は見ておきたい映画を1本だけ選ぶとしたら?

私が選ぶなら、『シンドラーのリスト』(Schindler’s List)です。この映画は、スティーブン・スピルバーグ監督によって製作され、リストを持つドイツ人実業家オスカー・シンドラーが第二次世界大戦中に多くのユダヤ人を救った実話を描いています。この映画は、人間の善意と悪意、そして人間性の複雑さを深く描写しており、その劇的な物語と精巧な映像表現は観る者の心を打ちます。また、この映画は、ホロコーストの犠牲者たちを記憶し、彼らの尊厳を称えるためにも重要な作品であると考えられています。

見所はどのへん?

『シンドラーのリスト』の見所はたくさんありますが、私が特に印象的だと思ったのは以下の点です。 まず、この映画は非常にリアルな描写がされているため、観る者はまるで自分がその場にいるかのような感覚を味わうことができます。例えば、ホロコーストの惨状が描かれる場面では、血のにおいや叫び声が聞こえるように感じられます。 また、主人公のオスカー・シンドラーが、当初は利益を追求するためにユダヤ人を雇用することを決める場面が印象的です。しかし、徐々に彼の心が変わっていく様子が描かれており、最終的には多くの人々を救うために自己犠牲をしています。このように、人間の善意や悪意、そして変化する心情を描いたストーリー展開は感動的です。 さらに、この映画は撮影技術にも優れています。例えば、黒と白のモノクロームで描かれた映像表現は、物語の厳しさや重さをより強く印象付けます。 以上のように、『シンドラーのリスト』は、リアルな描写、感動的なストーリー、優れた撮影技術など、多くの見所がある作品です。

ChatGPT

許されざる者(1992)

 「最後の西部劇」といわれた、この映画。娼婦の顔を傷つけた若者たちに賞金がかけられ、老いたイーストウッドは家族と牧場のために銃を手にする。
 賞金の噂を聞きつけ、町にやってくるのは彼だけではない。中でも印象的なのが、イングリッシュ・ボブというキャラクターだ。
 駅馬車から降り立ったボブは伝記作家を連れている。彼の虚飾だらけの伝記は、西部開拓時代の英雄ワイアット・アープや、禁酒法時代の英雄エリオット・ネスを思わせる。
 しかし彼の虚飾は町の保安官によって剥ぎ取られてしまう。保安官はボブの過去を知っており、伝記を読み上げながら逐一、彼の見た事実で上書きしていく。

 結局、ボブは町を追い出されることとなり、駅馬車で去っていく。伝記作家は町に残ることを決める。この伝記作家は本作の語り部なのだろうか。イングリッシュ・ボブは典型的な西部劇の「よそ者」である。そのことはイギリス出身というヒネりによって徹底される。彼は西部開拓時代の終わりにあって、伝記作家を連れ「生き証人」としての食い扶持を探している。自身の物語を映画界に売り込んだワイアット・アープのように。
 そのボブが伝記作家と引き離され、町を追い出されるのである。入れ替わるようにして、老いたイーストウッド、かつての「名無しの男」が現れる。なるほど最後の西部劇。

コーエン添田

西部戦線異状なし(1930)

これを超える戦争映画はもしかしたらあるかもしれないが、後の戦争映画で様々な角度から取り上げられることになる戦場の諸相は1930年公開のこの映画で全て描き切られている、と言っても決して過言にはならないだろう。なにしろリアリティがすごい。戦間期の映画だけあって戦争の記憶が生々しく画面に投射され、主に描かれるのは塹壕戦だが、莫大な資金と火薬を投入して再現されたその戦場映像はドキュメンタリー映像と嘘をついても俺を含む今の人にはぶっちゃけわからないんじゃないだろうか。

もちろんリアルなのは戦場だけではない。兵士たちはあまりにもあっけなく死んでいき誰が生き残るかは運次第。津波のように繰り返し繰り返し終わりなく押し寄せる敵兵はいつしか虫かなにかのようにしか思えなくなってくる。心身ともにズタボロになって故郷に戻ればかつての栄華はもうそこにはない。傷痍軍人がゾンビのように人気のない通りを横切り、徴兵を免れた老人たちはバーで空疎な床屋戦略論に興じ、母校に戻ればプロパガンダに踊られされた若者たちが目を爛々と輝かせている。一兵卒の憔悴しきった心情や銃後の現実もまた容赦なくリアルに再現されるのだ。

第一次世界大戦の激戦地・西部戦線に学徒動員で送り込まれたドイツの高校生が体験する戦場の一部始終を叙情を排してドライに描破したこの映画はおよそ100年前のものだが、当時とは比べものにならないほど兵器や戦術の発達した現在でもウクライナ東部の一部では砲弾節約のために塹壕戦が行われており、予備役のロシア兵は銃剣代わりにシャベルを用いているという話もある。今なお、『西部戦線異状なし』は戦争の実相に深く切り込んだ第一級の映像資料なのである。

さわだきんた

ウエスト・サイド物語(1961)

2021年にスピルバーグ監督によってリメイクされた本作。スピルバーグ版のドリーを使った滑らかな撮影も素晴らしかったけど、それでも色褪せないのがこの1961年公開の『ウエスト・サイド物語』だ!

元々はブロードウェイで上演されていたミュージカルをロバート・ワイズとジェームズ・ロビンズの手によって映画化。60年以上前に公開された映画なんですけど、まぁ今観ても素晴らしいですね! 実際のミュージカルだと舞台の幅は決められているけども、映画の中では前後左右に大移動!特にNYCでロケ撮影をした映画冒頭のシーンでは、敵対するギャングのジェッツとシャークスがNYCの街を縦横無尽に動きながら、寸分の狂いもなくフォーメーションを変えながらダンスしていて、もうなんというか動くアート作品を観ているよう!この冒頭のシーンはマイケル・ジャクソンの“Beat it”にモロに影響を与えております。

『ロミオとジュリエット』をベースにしたラブストーリー的な部分も良いんだけど、やはりこの映画だと相対するグループによる武闘的なミュージカルシーンが魅力的。アップテンポな「マンボ」に「アメリカ」。そして争いの最中で2度目に歌われる「トゥナイト」がまた切ないんですよね… ダンス良し、音楽良し、カメラワークも素晴らしい!観るべし!

ぺんじん

風と共に去りぬ(1939)

 これを見ずして映画好きを名乗ることなかれ。長い長いアカデミー賞の歴史の中で究極の一本を選ぶなら、それは『風と共に去りぬ』以外にあるまい。最高の一本かどうかは議論の余地があるが、最強の一本と言われればほとんどの人が納得してくれるのではないか。

 本作の魅力は一にも二にも個性的なメイン男女4人のキャラクターである。ストーリーは元がロマンス小説なので全然大したことない。おバカな南部のお嬢様が色んなひどい目にあって、強くたくましい女として成長するだけの話である。好事家を満足させるようなひねった構成や崇高なテーマがなくとも、キャラクターの魅力さえあれば歴史に残るということを証明した作品である。つまり今の日本のキャラクター漫画の大先輩のような存在といえよう!

 我々東アジア人が「子供の頃は飛影が一番好きだったんだけど、大人になってから桑原の良さが一番わかる」といった話題で何時間も喋れるように、北米人なら「子供の頃はスカーレットがクソ女すぎてムカついてたけど、大人になってからはメラニーの方がムカつく」という話題でめっちゃ盛り上がれるに・・・違いない!(そ、そうかな?)

アタイサン

ノーカントリー(2007)

 歴代アカデミー作品賞受賞作品で何かを語ろうと思った時、マジで何も出てこなかった。映画好きでもなんでもないとしたら、俺のアイデンティティとは一体なんなのか。

 改めて歴代受賞作を見返すと、特に90年代は凄まじい。『羊たちの沈黙』『許されざる者』『シンドラーのリスト』『タイタニック』etc…その一方で受賞を逃した作品に『グッドフェローズ』『パルプ・フィクション』『ショーシャンクの空に』『ファーゴ』『プライベート・ライアン』『シックス・センス』などなど、眩暈がするような映画史上の最高傑作が毎年のように出ていたのだ。

 そんな中、歴代受賞作で最も凶悪な人間が出ている作品を選んでみた。ハンニバル・レクター博士も恐ろしいのだが、『ノーカントリー』のアントン・シガーが恐ろしいのは、とにかく無関係な一般市民が殺されるところである。映画を見ている我々と同じ立場である小市民が何の因果もなく殺されるので、見ている人は強制的に他人事では無くなってしまう。

 そのアカデミー賞史上最も最悪なシーンが、売店の店主が何の理由もなく、コインの面裏で命を賭けさせられるシーンである。ここは本当に恐ろしい。なんて理不尽なおかっぱ野郎なんだ。その後、モーテルでのサノスの大立ち回りでシガーから逃げる際、たまたま通りかかったドライバーがショットガンで頭を撃ち抜かれるシーンも最悪である。もうこういうシーンほんと厭!(ちなみに『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督はかなり影響を受けていると思われ、このような厭なシーンのみに世界で一番特化した作品『ハングマンズ・ノット』を自主制作している)

二階堂 方舟

ロッキー(1976)

のちには裏アカデミー賞ことラジー賞の殿堂入りという不名誉を授かることになるシルヴェスター・スタローンだが、主演と脚本を兼任してその名を一躍世界に知らしめた代表作『ロッキー』は実はオスカー受賞作。『ロッキー』というコンテンツはその後大ヒットシリーズへと成長するがこの一作目はやはり特別、金なし職なし(借金取りのバイトはあり)甲斐性なくて希望もなし、そしてもちろんボクシングの才能もなしとないないづくしのロッキー=スタローンがそれでもチャンピオン・アポロに完敗して笑いものにされること必至のエキシビション・マッチに己の全てを懸けるストーリーは当時ロッキーと同じような貧乏役者だったスタローンの魂の叫びが込められたもので、いつの時代の冴えない人間にも響く普遍性がある。

当時のスタローンが無名で貧乏だったからこそそんな普遍性を獲得したこの映画は撮影だって金がないのでセットなどは組めずに寂れたフィラデルフィア市街で全面ロケ、その寒々しい光景がストーリーやスタローンの寂しげな佇まいとマッチして見事な効果を上げているのだから痛快だ。貧乏だから、才能がないから、生まれが悪いから・・・もしそんな理由で何かを諦めようとしている人がいるなら、諦めるのは『ロッキー』を見てからでも遅くない。持たざる人間だからこそ出来ることもこの世には確かにあるのだと、ロッキーは教えてくれるはずだ。

さわだきんた

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