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たまに面白い映倫

【たまに面白い映倫】第10報 『ブラックナイトパレード』ほか

〈このコーナーはたまに面白い映倫の年齢区分指定理由や文章表現などを紹介するコーナーです〉

今回紹介する4本の作品はいずれも2022年11月に映倫審査が完了した新作邦画。とりあえずはそれぞれの紹介文を読んでみて欲しい。

甘い夏

将来への展望を持てず漠然と日々を過ごす淳は、アルバイト先にやって来た真由香に一目惚れ。年上の青年・明宏と奔放な女性・りえのカップルとも知り合い、一緒に遊ぶようになった4人は交流を深めていくが……。青春群像劇。(1時間18分)

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ブラックナイトパレード

コンビニバイト歴3年。受験、就活失敗。何をやってもダメな男・日野三春。世間がクリスマス・ムードで盛り上がる中、突如、黒いサンタ服を着た謎の男・クネヒトに連れ去られてしまう。ファンタジー。(1時間48分)

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blue rondo

徹夜のバイト明け、早朝の渋谷の街で、自殺した兄のカノジョと再会したケイは、その女=ルミにどうしようもなく惹かれていくのを感じる。ラブストーリー。刺激の強い性愛描写および違法薬物の吸引がみられ標記区分に指定します。(1時間48分)

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朝がくるとむなしくなる

会社を辞めてコンビニでバイト中の飯塚希。実家にも帰れず、独りきりで、変化のない日々を過ごしていたが、そんな時たまたま、中学時代の同級生・加奈子と再会する。ドラマ。(1時間15分)

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・・・バイト、しすぎじゃない?なにもバイトをすることが悪いとは思わないが、映画の主人公の職業をバイトばかりに設定するのはどうなのか。しかも内2本はコンビニバイト。バイト設定だからこそ描けるものだってそれは確かにあるだろうが、うだつの上がらない日々を表示する記号としてバイト設定を用いているのだとしたら、いささか安易ではないだろうか。これが11月に4本。参考までに書いておくと11月の映倫審査作品は洋画邦画アニメにドキュメンタリー、更には旧作の再審査など全て合わせて約113本ほど。その中の4本の新作邦画で主人公の職業がバイトになっていることが比率として多いか少ないかは人によって捉え方が異なるだろうが、とはいえ4本もの作品で紹介文に出てくる職業は他にない。

職業がバイトというのもつまらないが内3本は出会いを起点にした青春ドラマらしいのがまたつまらない。いや、これはあくまでも紹介文の話で、実際に観ればそれぞれの映画にそれぞれ違った良さもあるのかもしれないが、紹介文を読む限りでは似たり寄ったりの印象を受けるのも事実。そう考えれば1本だけバイトが出会いと青春以外のことをするらしい『ブラックナイトパレード』は立派かもしれない。あくまでも紹介文に関して言えば、サンタの世界というファンタジーを際立たせるためのバイト設定の観があり、他3本と異なり明確な目的をもって主人公の職業をバイトとしているように見える。

予算の少ない映画にとっては主人公の職業さえ自由に選ぶことは難しい。たとえば弁護士の設定なら弁護士事務所のシーンや法廷のシーンが必要になるわけで、そうなれば当然必要予算も相応に増える。しかしコンビニバイトの設定ならコンビニスタジオを借りて撮ればいいわけだから追加の予算はかからない。『ブラックナイトパレード』はメジャー製作の映画なので話が別だが、主人公のバイト設定がこんなにも多い背景には、日本の映画の多くはぶっちゃけ予算が全然ないという世知辛い事情があるのだろう。予算がないからバイト設定、予算がないから出会いと青春。なにもそれが悪いとは思わないが、映画を作るという目的のためにその映画で何を描くかということが置き去りにされているような印象も受け、貧すれば鈍するとはまさにこのこと、とため息が出てしまう今回の4本なのだった。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com