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博多ゾンビ紀行

【博多ゾンビ紀行】第15回 ゾンビ映画史上最悪の邦題『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』

ゾンビ・オブ・ザ・デッド
監督 コノール・ペンダーガスト
出演 イシー・マーサー・ジェームス イータン・マスカット

どうもこんにちは、ハカタです

これまで僕はさまざまな変なタイトルのゾンビ映画を紹介してきた(例:ゾンビマックス怒りのデスゾンビ、おっぱいゾンビ、など・・・)
こういったタイトルの大半は日本の配給会社が勝手につけた邦題であることが多い、このような妙なタイトルも日本のゾンビ映画における文化と言えるだろう。
今回紹介するのはそんな謎邦題シリーズの中でも特に終わってるタイトルのゾンビ映画『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』だ!

『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』!死者のゾンビ!見ているだけで頭痛が痛くなってきそうなタイトルは(本当にどうしようもない作品が出た時に苦渋の決断でつけるタイトルなんだろうなあ・・・)と想像させられてしまうが、実際のところ中身はどうなのか?そういった常人ならどうしても気になりつつも確実に足を踏み入れられない場所に率先して飛び込むのが僕の役目なのだ。

さてこの原題『fresh fleaks』がどういう映画かというと、なんかどっかの遺跡で発見されたミイラ死体が人を殺しまくるし、主人公の大学生にも襲いかかるしで大変だ!更にその危機は主人公の通う大学にも迫っていた!という話だ

この映画はまず女性研究員に何者かが襲い掛かる映像から始まるのだが、しかし映像が暗すぎる・・・というか、漆黒。ということでどういうシーンなのかがまずよくわからないというトラップが冒頭からあり、明るくて見やすい映像を撮るのにもカネがかかるという映像制作の裏側を実感させられる。

さて話は進みなにかトラウマを抱えてるらしい大学生の主人公がなんかダラダラと映画館に行ったり研究室の死体がなんか動き始めたりする中で、トラウマの元らしい過去回想に入るのだが、この過去回想がかなり厄介である。
この過去回想で謎の根源である遺跡の発掘作業が描かれるのだが、もうこれがものすごいダラダラとしている。ストーリーと関係ない動物と自然の映像がすっごいダラダラと描かれる。
79分しかないのにそのうちの貴重な1分をイグアナをただ映すだけのシーンに費やす。これは数多の低予算映画を観てきた僕でも悶絶するレベルの退屈さであり、何度(もう勘弁してくれ・・・)と呟いたかわからない。

あと作中、シャーン、カーン、コーンみたいなSEがあまりにも、一本の映画で使われていいレベルの致死量をはるかに超えた量で多用されており観てて気が狂いそうになるのも特徴だ。

そんなこんなで今までのクソ映画と正直「格」の違うつまらなさである今作だが、しかしこの映画、「2周目」が本番なのだ。そんな最近のなんかの賞とりまくったインディーRPGみたいな映画あるの?と思われるかもしれないが、ある。
なぜ2周目が本番なのか?その秘密は吹き替え、そして監督のコメンタリーにある。

まずこの映画、吹き替えがやたら出しゃばってくる。
本編だと脱力ものとは言えシリアスな雰囲気を保っているが吹き替えだとまるでフルハウスかってくらい陽気な雰囲気に変わっちゃっているのだ。正直これはどうかと思わなくもないが、この滑り芸じみた吹き替えは正直楽しい。本編を楽しくしちゃってる時点で良くない吹き替えではあるのだが、楽しいもんは楽しい。
特に有難いのが前述した悶絶レベルの退屈シーンである動物パートにもなぜか吹き替えがあることだ。もう作品の雰囲気がどうとかいうレベルではないが、退屈を和らげてくれるのは素直に有難いと思ってしまう。

そして何より面白いのが監督のコメンタリーだ。
この映画のDVDの特典にはZ級映画には珍しく副音声コメンタリーがついてくる。それも全編ほとんど語り通しの豪華版だ。

そんなコメンタリーは「ゾンビはゴムのマスクを作って〜」とか「ここは血のりが飛び散って大変だった」といったごく普通のコメントもあるが、「ここは必要かわからんが撮った、この時点では脚本はなかった」「マジの考古学者の記録のために撮った発掘映像を使った」といった驚愕かつ作品の出来的に納得のコメントがポンポン出てくる。

まずそもそもこの映画はどういう映画なのか?そもそもこれは「商品」ではない。当時高校生だった監督が友人を集めて作った自主制作映画なのだ。だから普通の映画なら冒頭に入る製作会社のロゴなどは全くない。なんでそんなのが日本に輸入を?さあ・・・?

そんな映画だからか「本当はナタを使いまくる予定だったが副校長に怒られたので、仕方なく登場人物に捨てさせた」「代わりにそこら辺にあった鉄の棒とかで撮った」などといったコメントも出てきて、それはもうリアル『桐島、部活やめるってよ』なんだよ!最高。

他にも「ここの白い紙は台本だ」(堂々と画面に入れるなよ!なお画質が悪いため普通に観る分にはわからない)「どう見てもめちゃくちゃドロドロの死体の顔を見た医者がうーんこれはミミズ腫れだなと言うが、それはヤブ医者だからではなくこれはゾンビマスクが発想が遅れたので仕方なく後半で使う用のものを流用したからだ」(じゃあ脚本変えろよ!)などと言った名言が続出。
「このおじさんはゴムのセールスマンなんだけど、映画に出たい!と…こちらも(人員不足なので)ぜひ!と、この人は次回作にも出演しているよ」というささやかな友情を感じさせるシーンなども最高だ!

これはリアル『桐島』だし、それに加えて作中の違和感が全部回収されるのはリアル『カメラを止めるな!』だし、1人の人間の夢と情熱と破滅(出来的な意味で)を描いてる世界一ショボい『ホドロフスキーのDUNE』でもう笑いと感動が止まらない。

僕は今作をTSUTAYAディスカスでレンタルして観たんだけど、このコメンタリーは保存版ものだと思ったしDVDを買いたくなったよ。
こんな迷惑をかけてかけられての珍道中を経て出てくる格言が「ゾンビ映画の撮影には近づくな」なのがまた良い。
散々酷評したが、実際学生の自主制作で元から商品ではない事を踏まえればこんなもんだろうなとは思えるし。とにかく殺しに殺しを重ねる終盤の見せ場重視っぷりはよい。

結論を言えばこの『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』は一周目は字幕で観て悶絶し、二周目は吹き替えプラスコメンタリー字幕で鑑賞し、青春映画として鑑賞する・・・といった形で観ればなかなか楽しい映画体験になると思われる。2回観ても2時間40分でアバター2より短いしな!!!
でも一回目の時点で限界なシャーン、カーン、コーンみたいなSEを2倍聞くハメになるので注意!!!!

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博多には行ったことがない パラッパラッパーで全ての感情を表すアカウント→ @goodbye_kitty3