【アカデミー賞特集2023】今年のオスカーはたぶんおそらくきっとこれ!アカデミー作品賞大予想!(その1)
今年のアカデミー賞の目玉作品は何といっても『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だろう。(以下『エブ』と表記)
メインキャスト・スタッフがアジア系で、しかもアカデミー賞では不遇のSF映画がトップに躍り出たのである。まだまだアカデミー賞も捨てたもんじゃないなあ~♪と言いたくなる出来事である。
予想サイトでは『エブ』が作品賞を獲る可能性60%超と予想されており、これはほぼ確定したようなものだろう・・・と言いたくなるが、いや従来のアカデミー賞通り格調高い人間ドラマである『イニシェリン島の精霊』が作品賞だっ!と予想する向きもある。一体どっちが獲るんだ?
そこで、アカデミー賞大好きっ子のウチが00年代以降の作品賞の傾向と対策を解説致します!
~アカデミー賞四か条~
①物語の舞台がアメリカであること
②登場人物がアメリカ人であること
③時代設定が現代であること
④現代アメリカ社会に通じる何かしらの政治的な問題を扱っていること
以上の4つである。ああなんて簡単な四か条なんだろう!
アカデミー賞は基本的にこの4つの条件を満たせば満たすほどどんどん強くなるルールなのである!
もうちょい詳しく言うと、「どんなにおバカな観客でも、この映画を見れば今のアメリカ社会について一席語れるようになるような映画」が強いんである。
補足:「④現代アメリカ社会に通じる何かしらの政治的な問題を扱っていること」についてだが、具体的には人種差別・労働問題・移民・格差・犯罪・銃・反戦・宗教・ポリコレなど。
そんなもの全くない映画の方が難しいし、アカデミー賞で冷遇されているSFやホラーにだって入っている要素だが、おバカな観客にも絶対わかるくらいじゃないとダメ。(具体的には『ゲット・アウト』など)
具体例を見ていこう!
2019年『パラサイト』VS『1917』
| パラサイト | 1917 | |
| ①舞台がアメリカ | × | × |
| ②登場人物がアメリカ人 | × | × |
| ③時代設定が現代である | 〇 | × |
| ④アメリカ社会の問題を扱う | 〇(格差社会) | △(反戦?) |
本命は『1917』だが、ひょっとすると『パラサイト』が獲るかもね?と言われていた年である。
外国映画・韓国人キャスト・全編韓国語でハンデだらけと思いきや、四か条のうち二つを満たしているので実は結構強い。
対する『1917』はハリウッド映画ではあるが、主人公はイギリス人だし、舞台はヨーロッパだし、わざわざ2020年に生きるアメリカ人が第一次世界大戦の映画に賞をやる必要性みたいなのがちょっと薄い。『パラサイト』作品賞は当時は番狂わせのように報じられたが、こう分析してみると受賞は必然だったように思える。
(戦争映画だと作品賞が取れないということはないと思う。世界大戦と現代アメリカ社会の接点が薄くなってしまったからアカデミー賞では弱いだけであって、アフガン紛争やイラク戦争、さらに遡って南北戦争辺りが舞台の映画なら、十分に取れる可能性はあるだろう。)
2021年『パワー・オブ・ザ・ドッグ』VS『コーダ』
| パワ犬 | コーダ | |
| ①舞台がアメリカ | 〇 | 〇 |
| ②登場人物がアメリカ人 | 〇 | 〇 |
| ③時代設定が現代 | × | 〇 |
| ④アメリカ社会の問題を扱う | × | 〇 (障害・当事者キャスティング) |
格調高さというか名作っぽい雰囲気は断然『パワ犬』だが、結果はダークホースのコーダが獲った。西部劇は現代が舞台じゃないので弱いし、監督のジェーン・カンピオンはアメリカ人ではないので、アメリカ社会に対して物申す!という姿勢も弱い。
要するに、アカデミー賞において人間ドラマが絶対に強いジャンルというわけではない。現代アメリカ社会の問題をを描くのに、現代が舞台の人間ドラマの形が一番観客にとってわかりやすいから強いんである。(まどろっこしい言い方だな。)
一番重要なのは現代アメリカ社会の問題に対して何かしらリンクする部分があるかどうかなのだ。その条件を強く満たしてなければ人間ドラマでも弱い。逆にSFでも取れる可能性が出てくる・・・というのがエブVS精霊対決の面白い点である。
(と、書いているがウチは肝心の『精霊』を見れていないので勝手に四か条○×判定していいんだろうか?見れていないけど多分ヨーロッパの田舎に住んでいるおっさんが人間関係でもめて居心地の悪い思いをする映画なんだと思います。)
というわけで、第一回から最新回まで全ての作品賞受賞作を前述の四カ条に当てはまるかどうか判定してみたよ。
注意点
・「時代設定が現代であること」「現代アメリカ社会に通じる問題を扱っていること」の判定は全てウチの主観です。
・一部見ていない作品もあります。よって判定を間違えている可能性もあります。
・指さし確認していないので、抜けている作品があるかもしれません。
| 舞台 | 人物 | 時代 | 政治 | |
| つばさ | △ | ○ | ○ | × |
| ブロードウェイ・メロディ | ○ | ○ | ○ | × |
| 西部戦線異状なし | × | × | ○ | ○ |
| シマロン | ○ | ○ | × | ○ |
| グランド・ホテル | × | × | ○ | × |
| カヴァルケード | × | × | ○ | △ |
| 或る夜の出来事 | ○ | ○ | ○ | × |
| 戦艦バウンティ号の叛乱 | × | × | × | × |
| 巨星ジークフェルド | ○ | ○ | ○ | × |
| ゾラの生涯 | × | × | × | ○ |
| 我が家の楽園 | ○ | ○ | ○ | × |
| 風と共に去りぬ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| レベッカ | × | × | ○ | × |
| 我が谷は緑なりき | × | × | ○ | ○ |
| ミニヴァー夫人 | × | × | ○ | ○ |
| カサブランカ | × | ○ | ○ | ○ |
| 我が道を往く | ○ | ○ | ○ | × |
| 失われた週末 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 我等の生涯の最良の年 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 紳士協定 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ハムレット | × | × | × | × |
| オール・ザ・キングスメン | ○ | ○ | ○ | ○ |
| イブの総て | ○ | ○ | ○ | × |
| 巴里のアメリカ人 | ○ | △ | ○ | × |
| 地上最大のショウ | ○ | ○ | ○ | × |
| 地上より永遠に | ○ | ○ | ○ | × |
| 波止場 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| マーティ | ○ | ○ | ○ | × |
| 八十日間世界一周 | × | × | × | × |
| 戦場にかける橋 | × | × | ○ | ○ |
| 恋の手ほどき | × | × | × | × |
| ベン・ハー | × | × | × | × |
| アパートの鍵貸します | ○ | ○ | ○ | × |
| ウェスト・サイド物語 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| アラビアのロレンス | × | × | × | ○ |
| トム・ジョーンズの華麗なる冒険 | × | × | × | × |
| マイ・フェア・レディ | × | × | × | × |
| サウンド・オブ・ミュージック | × | × | × | 〇 |
| わが命つきるとも | × | × | × | × |
| 夜の大捜査線 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| オリバー! | × | × | × | × |
| 真夜中のカーボーイ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| パットン大戦車軍団 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| フレンチ・コネクション | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ゴッドファーザー | ○ | ○ | ○ | × |
| スティング | ○ | ○ | × | × |
| ゴッドファーザーpart2 | ○ | ○ | ○ | × |
| カッコーの巣の上で | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ロッキー | ○ | ○ | ○ | × |
| アニー・ホール | ○ | ○ | ○ | × |
| ディア・ハンター | ○ | ○ | ○ | ○ |
| クレイマークレイマー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 普通の人々 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 炎のランナー | × | × | × | ○ |
| ガンジー | × | × | × | 〇 |
| 愛と追憶の日々 | ○ | ○ | ○ | × |
| アマデウス | × | × | × | × |
| 愛と哀しみの果て | × | × | × | × |
| プラトーン | × | ○ | ○ | ○ |
| ラスト・エンペラー | × | × | × | × |
| レインマン | ○ | ○ | ○ | × |
| ドライビングMissデイジー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ダンス・ウィズ・ウルヴズ | ○ | ○ | × | ○ |
| 羊たちの沈黙 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 許されざる者 | ○ | 〇 | × | ○ |
| シンドラーのリスト | × | × | × | ○ |
| フォレスト・ガンプ 一期一会 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ブレイブハート | × | × | × | × |
| イングリッシュ・ペイシェント | × | × | × | × |
| タイタニック | × | × | × | △ |
| 恋に落ちたシェイクスピア | × | × | × | × |
| アメリカン・ビューティー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| グラディエーター | × | × | × | × |
| ビューティフル・マインド | ○ | ○ | ○ | × |
| シカゴ | ○ | ○ | ○ | × |
| ロード・オブ・ザ・リング王の帰還 | × | × | × | × |
| ミリオンダラー・ベイビー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| クラッシュ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ディパーテッド | ○ | ○ | ○ | × |
| ノーカントリー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| スラムドック$ミリオネア | × | × | × | × |
| ハート・ロッカー | × | × | ○ | ○ |
| 英国王のスピーチ | × | × | × | × |
| アーティスト | ○ | ○ | × | × |
| アルゴ | × | ○ | △ | ○ |
| それでも夜は開ける | ○ | ○ | × | ○ |
| バードマン | ○ | ○ | ○ | × |
| スポットライト 世紀のスクープ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ムーンライト | ○ | ○ | ○ | ○ |
| シェイプ・オブ・ウォーター | × | ○ | × | × |
| グリーンブック | ○ | ○ | ○ | ○ |
| パラサイト | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ノマドランド | ○ | ○ | ○ | ○ |
| コーダ あいのうた | ○ | ○ | ○ | ○ |
集計結果(△は便宜上○として集計)
| 判定 | 本数 | 比率 | 主な特徴 | 代表作 |
| ○○○○ | 29 | 30% | アカデミー賞本流 | 『ウエスト・サイド物語』『ムーンライト』 |
| ○○○× | 22 | 23% | 古き良き娯楽映画 | 『巴里のアメリカ人』『ロッキー』 |
| ×××○ | 6 | 7% | 異国の風 | 『アラビアのロレンス』『ガンジー』 |
| ××○○ | 5 | 5% | 家族史 | 『カヴァルケード』『わが谷は緑なりき』 |
| ○○×○ | 3 | 3% | ポリコレ時代劇 | 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『それでも夜は明ける』 |
| ×○○○ | 3 | 3% | 思想が強い | 『カサブランカ』『プラトーン』『アルゴ』 |
| ××○× | 2 | 2% | セレブの恋愛模様 | 『レベッカ』『グランド・ホテル』 |
| ○○×× | 2 | 2% | 懐古趣味 | 『スティング』『アーティスト』 |
| ×○×× | 1 | 1% | ファンタジー | 『シェイプ・オブ・ウォーター』 |
| ×××× | 21 | 22% | コスチューム史劇 | 『ベン・ハー』『わが命つきるとも』 |
| 合計 | 94 |
さて、××××がついている作品が22%もあるのだが、一体どういうことだ!・・・実はこれらの作品にはある共通点があるので、ご安心を。
~×付きのためのアカデミー賞新四カ条~
①対抗馬が弱い(×の付く作品同士の争い)
②キャリアの長い名監督への功労賞
③超大作
④ワインスタインが暗躍した
| 対抗 | 功労 | 大作 | 暗躍 | |
| 戦艦バウンティ号の叛乱 | ○ | |||
| ハムレット | ||||
| 八十日間世界一周 | ○ | |||
| 恋の手ほどき | △ | △ | ||
| ベン・ハー | ○ | ○ | ||
| トム・ジョーンズの華麗なる冒険 | ○ | |||
| マイ・フェア・レディ | ○ | |||
| わが命つきるとも | ○ | |||
| オリバー! | ○ | ○ | ||
| アマデウス | ○ | ○ | ||
| 愛と哀しみの果て | △ | ○ | ||
| ラスト・エンペラー | ○ | ○ | ||
| ブレイブハート | ○ | |||
| イングリッシュ・ペイシェント | ||||
| タイタニック | ○ | ○ | ||
| 恋に落ちたシェイクスピア | ○ | |||
| グラディエーター | ○ | ○ | ||
| ロード・オブ・ザ・リング王の帰還 | ○ | |||
| スラムドック$ミリオネア | ○ | |||
| 英国王のスピーチ | ○ |
××××のついている21本のほとんどは、新四か条のいずれかに当てはまることがおわかりだろうか。
つまりアメリカ社会を扱わずとも、巨匠のキャリアの総決算的な大作なら作品賞を取れる可能性が高い。(というか、アカデミー賞というとこっちの方の作品のイメージの人が多いかもしれない)
さて、四カ条・新四カ条を踏まえて今年のアカデミー賞に話を戻すが、『精霊』はどちらの条件も十分に満たしているとは言えまい。対して『エブ』は四か条の全てを満たしている。(アメリカ人・アメリカ舞台・現代・アジア系移民)
やはり『エブ』大本命である!というのがウチの結論です。(ここまで書いて精霊が獲ったら恥ずかしいので、取ってください。)





