【こないだビデマでこれ買った】Vol.15 『FRANKIE IN BLUNDERLAND』を買った
ビデマさんで円盤を買ってきた主に日本未公開のよくわからん映画を紹介するこのコーナー、さて次はどの映画にしようかなと考えてそういえば最近予算800円くらいのトラッシュ寄りの映画ばかり取り上げているなと気付く。これではまるでビデマさんがゴミ映画の宝庫のようではないか。いや、それもまぁ必ずしも外れているわけではないが、とはいえ予算800円ぐらいのゴミ映画の在庫はあくまでもビデマさんの魅力のひとつ、ゴミ映画も含めて玉石混淆世界のふしぎ映画ヤバ映画なんだこれは映画が掘っても掘っても掘りきれないほど揃っている映画の底なし沼がビデマさんです。ということで今回はいつものゴミ映画ではなくちゃんとした方向にスゴかった映画を取り上げましょう。
FRANKIE IN BLUNDERLAND!
ちゃんとした映画であることを示すためにタイトルを大文字デカサイズにして感嘆符も付けてみました。これがなんとかゾンビーズみたいな感じの予算800円映画であればお前はしょせんその程度なんだから出しゃばらずに標準の文字サイズで我慢しろ!と叱りつけているところですが、なんといってもFRANKIE IN BLUNDERLANDはちゃんとした映画なのです。その証拠に少なくとも英語圏では世界最大の映画データベースサイトIMDbの作品ページを見たらユーザースコア平均が本日時点で10点満点中の6.7!ガチのやつじゃないか・・・俺もそれ見てびっくりしたよ。
しかし驚くべきはIMDbの点数よりもその内容であった。このWILD EYE盤のDVDはパッケージを開くとちょっとかわいいクモのぬいぐるみみたいなやつの顔部分に女優さんの顔をきわめて雑に合成した劇中キャプチャと思しき怪画像が出迎えてくれ、これはだいぶアレな映画なんじゃないかと早くも予想させるのであったが、ディスクをPCにぶち込み本編を再生し始めるとアラこれはなんと!・・・よくわからない!ジャケ裏に書いてあるあらすじを斜め読みしてたぶんアシッド映画とかだろうもうひとつの現実でロボットとエイリアンと人間クモに遭遇するみたいな感じらしいから、と思っていたのだが、アシッド映画なら主人公が幻覚世界に突っ込むなにかしらのキッカケがあるはずなのだが、この映画にはない。
物語は主人公の冴えないメガネ男が妻の浮気を目撃するところから始まる。途方に暮れた主人公は線路をとぼとぼ歩いて家に向かうがその途中線路を枕に寝ているドラキュラマントを着けた浮浪者と遭遇、一悶着合ってメガネを割ってしまう。家に戻るとそこには浮気男と一緒に謎のレトロ調テレビ番組を見る妻。彼女が手にしているリモコンはわけわからんデカい(本当にデカい)。翌日、主人公は台所でオッサンのフェアリーと世間話をし、ちょっとした弾みで妻と浮気男を殺害してしまう。しかし妻はすぐに復活、いつの間にか復活していた浮気男によって拉致されてしまうのだが、どこにどんな方法で監禁しても妻は監禁状況をガン無視して普通に外に出てくる。
そんなこととは知らない主人公は妻が浮気男に誘拐されて大変だということで妻を探しに街に出るのだが、モーテルに行けばオーナーは切腹を始めモルモン教徒の宇宙人は布教に励みパーティに向かえば修学旅行のお土産屋で売ってるスポンジ棒で警官がパーティキッズにボコボコにされており、そこで出会った娼婦の正体はロボットであった。書き忘れていたがモーテルで人間グモから啓示を得た主人公は投身自殺を図り止めに入った善意の隣人をパニックになって殺してしまっていた。この主人公はパニックになるととりあえず目の前の生物を殴り殺すクセがあったのだ。その後もドラッグの売人みたいな柄の悪い若者の友達だった生きたパペットくんを殴り殺したりしながら主人公は女スパイとニアミス、不倫男との決闘を妻に促され、ペチペチしたこどもパンチでキュートな決闘を展開しているあいだに妻に家ごと焼かれる。これまでに出てきてまだ主人公に殺されていない人や生物が集まって映画のようにそれをポップコーンとか食べながら鑑賞してたら不倫男の相棒がキング牧師の演説を始めるのだった。妻は普通に家帰ってまた例のレトロ調テレビ番組をでかリモコン片手に見る。
かなり徹頭徹尾よくわからない。脈絡のない展開もよくわからなければナンセンスで噛み合わない会話もよくわからず、とにかくよくわからないとしか言いようがないよくわからなさだが、決して気取ってムカつくタイプのよくわからなさではなく、下町感覚のポップでキュートで一抹の人情味も感じないではない不条理アシッド喜劇であり、安~いエフェクトによるファンタジック映像や主人公の素っ頓狂で憎めないキャラクターがこんなに意味不明な映画なのに親しみやすさすら醸し出しているのだから不思議である。幼児情操教育番組的というか。ある意味『テレタビーズ』とか『シナぷしゅ』と同系統の作品と言えるのではないだろうか。
個人的にめっちゃ良かったのは主人公の妻がこの手の映画にしては珍しくかわいかったところ。常時田舎のヤンキー姉ちゃんみたいな感じでキレているのだがそのキレで歪んだ怒り顔がほんとかわいい。口をぐいっと尖らせてね。まったくわけのわからない映画だがそういう役者の魅力は各登場人物からきっちりと引き出しており、これが天然の人がヤケクソで撮ったものではないことがわかる。確信犯的に、けれども嫌味なく、親しみやすく意味不明。そのような意味で、これは確かにちゃんとした映画なのだ。なんだかんだ最後の最後には事の真相(?)を入れてるしね。ズッコケオチですが。