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【あの映画のあれ】あれ8 フランス映画に出てくる「バカンス」

毎度おなじみ映画によく出てくるけど詳しいことはよくわからない「あれ」を基本的にネットで5分ぐらい検索して浅堀りする映画豆知識コーナー、あの映画のあれ。今回は夏と言えばバカンス、バカンスといえばフランス、フランスといえば・・・ちょっと待てよ、そもそもバカンスとはなんなのだ?ということでフランス映画ではバカンス映画というジャンルが定着しているほど根付いているバカンスについて浅掘りしてみましょう。

バカンスとは要するに長期休暇のこと。英語でいえばバケーションです。バカンスといえば夏のイメージもありますが必ずしも夏に限ったわけでなく、夏の方が長期休暇を利用した旅行に行きやすいとか、フランスでも学校には夏休みがあるのでそれに併せて親の方も、ということで夏にバカンスを取る人が多いらしい。このバカンスは有給休暇だけを意味するわけではないものの、フランスでは通称バカンス法なるものが1936年に制定され、この法律によって労働者は年に2週間の連続休暇が義務づけられているため、実質的にバカンス=長期有給休暇となるとのこと。意外にもフランスのバカンスは伝統的なものではなく比較的新しい制度・習慣なのです。それまでは貴族や金持ちたちが避暑地で優雅に過ごしたりするのがバカンスだったとか。

バカンスの過ごし方は人それぞれでしょうが、やはり多いようなのは行楽。ジャック・タチ、ジャック・ロジエ、ギヨーム・ブラックといったバカンス映画の名監督たちが好んで描くのも基本的にはビーチなんかで陽光を浴びながらのんびり過ごすバカンスです。行楽地としてはやはり温暖かつビーチやホテルがある南仏のニースやカンヌ、プロバンスがパッと思い浮かびますが、どうなんでしょう、このへんは案外外国人向けの観光地で、フランスの人がバカンスを過ごすのはもっと身近な行楽地だったりするのかもしれません。そういえば現在東京のユーロスペースで特集上映をやっているギヨーム・ブラックのバカンス映画『宝島』は東京サマーランドみたいなちょっと寂れたプール系の遊園地みたいなとこが舞台でした。ま、どこでどう過ごそうがバカンスはバカンス、バカンスならここ!というところも別にないのか実情でしょう、たぶんきっと。

ちなみにフランスの有休は現在年にトータル5週間。2週間の長期休暇の他に3週間分も休めるというわけです。いくらなんでも休みすぎじゃないか!?という気もしますが、このへんはたとえば同じ部署の人が代わりばんこ有休を取ったりすることで仕事への影響を最小限にしているらしい。面白いのは祝祭日数で、日本の年間祝祭日が17日であるのに対してフランスは半分程度の9日。業種にもよるでしょうが一般的な会社なら祝祭日に加えて夏期休暇や冬期休暇があると思われるので、国や会社が決めた休みの日をみんなで休む、というのが日本の休暇モデルなら、フランスのバカンス型休暇モデルは国や会社が決めた休みの日が少ない代わりに、各人バラバラに長く休むというモデルのようです。なるほど人権と民主主義の本場、という感じもします。

個人的には休みは長期よりも週の中日とかにちょこちょこあった方がストレスフリーな性格なので、制度化されたフランスのバカンスは思ったよりも楽しくなさそうな気がしてしまいますが、こういう制度を作ってもらった方が助かるという人も多いんじゃないでしょうか。なお、バカンス法の成立背景にはさまざまな考えを持つ人たちの思惑が入り乱れているらしく、5分間ネット探索では把握できなかったので割愛。そのかわりこれさえ見ればバカンスのなんたるかが知れる、バカンス映画の名作『ぼくの伯父さんの休暇』の予告編でも貼っておきましょう。ほい。

う~ん、こういうのを見るとやっぱりバカンス、憧れちゃうな~。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com