【発掘80s】第4回 『ルッカー』(1981)
ここは80年代好きの後追い世代による80年代に作られた傑作、あるいは忘れ去られているかもしれないけど傑作ではないかと思う作品をピックアップ(=発掘)して稚拙な感性ながらその魅力を紹介していくコーナーです。※文章は自身のFilmarksにおけるレビューを一部加筆&修正したものになります
今回紹介するのは、ある整形外科医の患者であるモデル達が相次いで不審死。その背後にはCMを通じて信号を送り人間達をコントロールしようとする企業が存在していた・・!というアルバート・フィニーにジェームズ・コバーンら主演でマイケル・クライトン監督脚本のSFサスペンス『ルッカー』(1981)。
CMやメディアによる洗脳を取り上げた点では「ゼイリブ」の先駆けとも感じる今作はアルバート演じる主人公の整形外科医が「完璧な女性」とされる(?)スーザン・デイ演じるヒロインの患者と共に企業に潜入するわけですが、視聴者の視線を読み取ったり一旦データ化すればディープフェイクの如く対象となる人間の声や形まで再現可能といった先進的技術が紹介されており体をスキャン時のCG等はレトロフューチャー的魅力有り。
やがて企業の人間に追われる段階になると撃った人間の意識を一時停止させてしまう光線銃まで登場。撃たれた人間にとっては一人芝居的時間差攻撃とも言える現象に悩まされる辺りが興味を惹くも、演出は案外地味なものに終始しており終盤のCM用セットが配置されたスタジオにおける主人公と追っ手達による攻防戦もいまいち盛り上がりに欠けるもの。
ただ数多のゲスト達向けに上映される自動生成のCMにミスマッチな主人公や彼に撃たれた追っ手の死体が映り込んで笑い声が聴こえる辺りはなかなかユーモラスだし、生成AIが普及し完璧な美を求め美容整形が増加傾向にある現代においては先見性あるかなり興味深い内容と言えそうです。
冒頭のビルから転落し車に叩きつけられるスタントも見所の一つで主人公が乗るポルシェ・928によるカーチェイスも少しだけ有り。色んなモデルが多数登場しますが特に目を惹くのはオープニングから登場する絵に描いたような金髪美女で1981年のプレイメイト・オブ・ザ・イヤーに輝いたテリー・ウェルズ。
スー・サッド・アンド・ザ・ネクストというグループによる主題歌も哀愁有って良い感じ。海外ではブルーレイ化しているものの日本では今現在未配信、DVDは廃盤で入手困難でVHSが流通しているのみという少し鑑賞が難しい作品ですが、YoutubeでLooker(1981)で検索するとRotten Tomatoesによる予告編も投稿されているので断片だけでも雰囲気は分かると思います。



