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ウチだって社会派だぜ!!

【放言映画紹介 ウチだって社会派だぜ!!】第5回 ナメクジ食べるな!大阪王将×『怒霊界エニグマ』

 7月24日、ツイッターに爆弾が落とされた。
 中華料理チェーン「大阪王将」仙台中田店の元店員を名乗るアカウントが、ずさんな衛生管理の実態を明らかにしたのだ。虫・カビ・残業代未払いなんぞは序の口。なんと店の敷地内で猫を飼育したり、厨房にナメクジが大量発生していたというのだから驚きである。事件を知った市議会議員が保健所に問い合わせる事態にまで発展した。もはや仙台市を揺るがす政治問題の様相を呈している。
 
 この衝撃の大阪王将事件にちなんでご紹介したい映画がある。その名も『怒霊界エニグマ』(87)
ダリオ・アルジェントと並ぶイタリアのホラー・マエストロ、ルチオ・フルチの作品だ。
 舞台は女子大の学生寮、いじめによる事故で昏睡状態に陥った少女が不思議なパワーで加害者に復讐する・・・・『サスペリア』(77)と『キャリー』(76)を足して2で割ったようなストーリーである。
露骨なパクリ臭と不出来な脚本ゆえに、マジメに語られることが少ない本作だが意外と見所が多い。特にバラエティ豊かな復讐パートは一見の価値あり。いくつかご紹介しよう。


①鏡の中の自分に首を絞められて死亡
生徒たちに混ざって被害者少女をいじめていた体育教師。鏡を見ていたら自分の顔が歪み、中からもう一人の自分が出てきた!そいつに首をギューってされて死亡。

解説:鏡に自分の像が歪んで映る場面についてだが、何か大層な特殊効果を使っているわけではない。役者の顔にガラスかサランラップを押し当てて「ほら歪んだ~」とやっているだけである。
たまに電車で窓ガラスに顔を密着させてよだれまみれになっている乳幼児がいるが、あんな感じ。

②死体のある部屋に閉じ込められて発狂死
目覚めたらベッドで一緒に寝ていた男が首ちょんぱになっていた。悲鳴を上げて部屋から出ようとするいじめっ子。しかしドアを開けるとそこは廊下ではなく、今いる自分の部屋に繋がっていたのだ!
自分の部屋と死体が延々続く無間地獄に囚われ、正気を失って死亡。

解説:自分の部屋から永遠に出られないというシチュエーションは怖いのだが、「ドアを開ける→死体を発見して叫ぶ→ドアを閉める」という動作を色んなアングルで繰り返して、出られない~!部屋から出られない~!とやっているだけである。
だが安い作りだと笑いたくはない。フルチの「やりくり上手ぶり」が光る名場面ではないか?

③大量のカタツムリで窒息して死亡
いじめっ子、目が覚めたらなぜか全裸。しかも体の上に大量のカタツムリが!
体が動かず、カタツムリが口の中に入ってきて窒息して死亡。

解説:この映画最大の見せ場。生きたカタツムリ数百匹が画面を覆いつくす!一度見たら忘れられないインパクトがあるが、真に素晴らしいのはその直前の場面である。
大量のカタツムリが出てくる夢を見たいじめっ子、慌てて飛び起きるがカタツムリの姿はどこにもない。なんだ夢か、と一息つくものの、壁に貼ってあるシルヴェスター・スタローンのポスターの上に一匹のカタツムリが・・・という前振りがあるのだ。
美少女×キモイ生物の組み合わせは誰でも思いつきそうなものだし、それこそフルチ永遠のライバル・アルジェントも『フェノミナ』(85)で似たようなことをやっている。
しかし、スタローン×カタツムリの組み合わせができるのは・・・世界でただ一人、フルチだけだ。(スタローン本人も思いつかないだろう)逞しい肉体にねっとり絡みつくカタツムリ、人を食ったようなユーモアと倒錯したフェティシズムが混ざった素晴らしいシーンである。

 


 さて、大阪王将と『怒霊界エニグマ』、一見全く関係ない2つの事柄から我々は何を学べるだろうか?

 まず、ナメクジはマジで危ない。ナメクジの中には広東住血吸虫という寄生虫が存在し、コイツが体内に入ると失明・脳炎を発症、最悪死に至る。スープの中にでっかい虫とかネズミが入ってたら絶対に気づくだろうが、ナメクジだと「変わった形のシイタケだな~」とか言って案外食ってしまうかもしれない。恐ろしい。
 「ナメクジ 死亡」で検索すると、度胸試しでナメクジを口にしてしまい、その結果命を落とした・・・という世界中の痛ましい事件が続々ヒットする。WHO(世界保健機関)が「エニグマ」を推奨映画に選定し、啓蒙として世界中で上映していれば救えたはずの命である。まさかこの作品を見たあと、道端に落ちているナメクジを思わずパクっとしちゃう人は・・・おるまい。効果てきめんである。

 「エニグマ」に出てくるのは、ナメクジじゃなくてカタツムリでしょ!と突っ込みが入りそうだが、広東住血吸虫はカタツムリの中にも存在する。両方とも気を付けるべし。
 (よくよく考えると、報道されているナメクジ健康被害事例より「エニグマ」の現場の方が酷いような気がするけど、まあいいや。)
 
 もう一つ学ぶべきこと・・・それは仕事人としての姿勢である。大阪王将事件の告発者は調理3級・餃子3級なる認定試験に合格するなど、努力を続けていた(本人談) しかし腐敗しきった環境を如何ともしがたく、今回の告発に踏み切ったのである。

 その姿・・・斜陽のイタリア映画界、削られる予算の中で気を吐き続けたフルチに重なるものがないか!?(ということにしてください)一方はイタリアの映画監督、もう一方は日本の飲食業界で働く若者。全く境遇の異なる二人だが、同じ熱い血が流れているように感じられるのだ。大阪王将事件が映画化した際のタイトルは『飲食界エニグマ』で決まりだろう!

 キャリア末期の出がらしと侮ることなかれ。「エニグマ」に焼き付いたフルチの苦闘、低予算ながら一生懸命見せ場を作ろうとする根性は、全ての職業人が見習うべき立派な姿勢である。

 この映画はどんなビジネス書より価値があると断言しよう!以上。

大阪王将で働くフルチ店員の図。得意料理はもちろんモツ料理でしょう。

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正直映画よりもゲームの方が好きなんだよな