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ウチだって社会派だぜ!!

【放言映画紹介 ウチだって社会派だぜ!!】第12回 腐女子の学級会は海を越えた!ハートストッパー原作者炎上×『暗殺のオペラ』

 突然だが、『ハートストッパー』というドラマをご存じだろうか。ネトフリで絶賛配信中の青春学園ドラマである。去年4月にシーズン1を配信してから、LGBTQコミュニティや文化系女子の間で話題沸騰。ネトフリの新たなる主力作品と目されているシリーズだ。

 今年8月に待望のシーズン2が配信され、日本でも「人気急上昇中の作品」トップ10入りを果たしている。名前だけはなんか聞いたことある・・・という人は多いだろう。

BOY MEETS BOY. 少年たちは友情を育み そして、恋に落ちた
イギリスの男子校に通うチャーリー・スプリングは、ゲイであることをカミングアウトしているが、そのことで酷いイジメを受けた過去を持っていた。同じ学校に通う一学年のニック・ネルソンはラグビー部に所属する優しくて明るいスポーツマン。
ある日、偶然隣の席に座った二人はすぐに心を許せる友達になる。そして、チャーリーがニックを好きになるのに時間はかからなかった。自分にチャンスが無いことはわかっていたけれど……。
でも、「恋」とは不思議なもので、ストレートのニックもまた、思いがけずチャーリーに惹かれていた――。

青春ボーイズラブストーリーであると同時に、〈LGBTQ+〉をテーマにした本作。
主人公以外にもゲイやレズビアン、トランスジェンダーのキャラクターが多数登場します。
違いを認め合える友人や家族の存在、多様性がごく当たり前に描かれる一方で、セクシュアリティの揺らぎや、親へのカミングアウト、学校や家庭内にも存在する偏見や無理解といった、リアルな現実についても描かれています。

原作コミックのAmazon商品ページより。
ウチも優しく明るいスポーツマン、またはスポーツウーマンの恋人(見た目よし)を募集中です。

 シーズン3の制作も決定されており、ファンコミュニティも大盛り上がり・・・のはずが、ドラマ版の脚本も務める原作者アリス・オズマンの過去の言動のせいでちょっと困った問題が起きているのだ。


  

 問題視されているオズマンの発言は以下になる。

「ハートストッパーの登場人物は未成年なので性的描写はない。たとえ成人だったとしても私はそういう描写に入れることに興味がないし。この漫画はYAOI(やおい)でもBLもない。YAOIやBLはクィア男性をフェティッシュで性的な存在として描く悪いジャンルだ。」(2017年Web漫画サイトTAPASでの投稿)

「ご存じのようにBL漫画/YAOIはとても有害で差別的な表現に満ち溢れているのだが、その例外が日本のBL漫画家ハヤカワノジコだ。」(2019年インタビューより。手書きの紹介文)

 ・・・まぁ要するに、日本のBL・やおいから多大な影響を受けてるのにも関わらず、批判する姿勢がめっちゃ白人の上から目線だよね?と批判を受けているのだ。

 くだらねぇ~っ!・・・こんなん腐女子の学級会じゃねーかっ!と思われる方も多いだろう。ネット上では『ハートストッパー』アンチの人がまとめた『ハートストッパー』ファンの痛い言動をまとめた投稿なんかもあるので、マジで学級会です。(余談だが実写版ではこんな騒動もあった)

 これまでこの連載で取り上げてきた時事ネタ・・・例えばウクライナ侵攻や、ガーシーちゃんねるや、スシロー醤油事件など、世間を揺るがした大事件(笑)と比べると、えらく小粒な騒動ではあるのだが、取り上げたのには理由がある。

 それは・・・ハヤカワノジコの紹介文に貼られている漫画のスクショ画像が、違法アップロードからの転載だったからだ。

①ページ四隅に正規版では入ってないであろう変な四角マーク
②著者名間違い(紹介文ではHayakawa Nojikoとなっているが、正しくはHayakawa Nojico表記)
③そもそもハヤカワノジコの作品は英訳されていない。

・・・はい、真っ黒ですね。この批判は日本のBL愛好家にも届き、「タダ見しといてその態度かよ!?」と突っ込まれている。当然である。


 さて、今回ハートストッパー事件に合わせてご紹介する映画は、イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトリッチの傑作『暗殺のオペラ』(1970)だ。原作はボルヘスの短編小説『暗殺と英雄のオペラ』。

 元々テレビ映画として作られた作品で、同時期の「暗殺の森」に比べると普通に見やすい作品に仕上がっている。特に撮影監督ヴィットリオ・ストラートによる北イタリアの田舎の風景がすばらしく、これでテレビ映画はもったいないだろう・・・と言いたくなるくらい美しい映像ばかりである。

 この名作がどのように違法アップロードと関わってってくるのだろうか?『暗殺のオペラ』は2016年のリバイバル上映を期にソフト・配信化されたのだが、それ以前は見たくても見れない幻の名作だったのである。

 話は2014年に遡る。当時未成年だったヤング・ウチは今は亡きNAVERまとめの「DVD化されていない名作映画」というページを読むのが好きであった。そのページではユルマズ・ギュネイの『路』(82)とか『UTU/復讐』(83)とか『子供たちをよろしく』(84)とかが紹介されていて、記事を読みながら見たくても見れない無数の映画について思いをはせたものである。

 その中でヤング・ウチの心をとりわけ引いたのは『暗殺のオペラ』であった。

 さてツイッターを始めたばかりのヤング・ウチは、ある日相互フォロワーの人が「暗殺のオペラをやっと見れた!聞きしに勝る名作でした!」と呟いているのを発見する。(以下、その相互フォロワーをAさんとします)

 恐れ知らずのウチはAさんに直接「暗殺のオペラはどこで見れますか?確かレンタルもDVDも無かったですよね?」と直接尋ねてしまったのだった。

 するとAさんはご丁寧にも「大きな声では言えませんが、こちらのページから見れますよ・・・」と、なんと!ご丁寧にも!ネットにアップされている『暗殺のオペラ』のリンクを教えてくれたのである!もちろん違法アップロードなので、ガビガビでかろうじて英語字幕が読み取れる超低画質だったのだが・・・。

 ヤング・ウチはなるほど、みんなこうやって苦労してマニアックな映画を見ているのか・・・と思ったことを覚えている。(違うと言いたいが違うとも言い切れない!)

 Aさんから教えてもらった違法『暗殺』であるが、結果から言うと、ウチはその動画を見なかった。これは別にウチの遵法意識が高かったからではなく、単にいつでも見れるという安心感から見なかったというだけである。英語字幕とか面倒くさいし。(10年前くらいの出来事だし、Aさんはもうツイッター(X)をやっていないので、時効ということにしといて下さい・・・)


  ・・・とまぁウチのこのエピソードに限らず、現代で違法アップロードを全く、全く、一分も見たことがない、触れたこともないという人はかなり少ないと思う。

 映画ファンにかぎらず、アダルト動画を見るのに毎回必ずお金を払っている人はいるのだろうか?
どうせみんなXVIDEOSとかRedTubeで済ましてるでしょ?キリストは「罪のないものが石を投げよ」と言ったが、アリス・オズマンに石を投げられる人間はいるのだろうか?という話になってくる。
払っている人は素晴らしい!ぜひ継続してください!

 (もちろんアリス・オズマンは単なるBL好きの一般庶民ではなく、ネトフリと契約して何億円も稼ぐトップクリエイターなのだから批判されて当然である。しかも自分では違法アップロードを批判する発言もしていたのだから脇が甘すぎる。)

 違法アップロードを見るなとは言わない。SNSやってれば普通に違法転載のエロ動画とか流れてくるし。だからウチは「悪いことしても黙ってればバレないよ」と言いたい!スシローのペロペロ少年も動画に撮ったからあんなことになってしまったのだ。いくら醤油さしを舐めても、啜っても、小便を混ぜても良い!構わない!人間は本質的に自由!(ダメです)

 ただ、言うな!書き込むな!動画に撮るな!悪いことなんだからやるなら絶対にバレないように!
(実際にこういう人こういう人がいます。)

 かの窪塚は「悪いことすんなって言ってんじゃないの。ダサイことすんなって言ってんの」との名セリフを残したが、ウチは悪い奴になっても、馬鹿な奴になるな!と言いたい。

 悪い奴は反省して改心する可能性があるけど、バカは反省もできないからね! 

 

 

~以下完全に余談~
 配信サービスの発達により、違法アップロードに頼らず(頼るな)幻の名作映画が見れるようになってきて早数年。好きな映画を好きな時に見放題かと思いきや、「もうすぐ配信終了」の作品群を駆け込みで見てるだけ。
 ウチはケン・ラッセルとかファスビンダーを見たくてU-Nextに加入したのに、現実は『クロコダイル・ダンディー』(86)とか『スチュアート・リトル』(99)を義務的に見る生活を送っている。
 渋谷ツタヤのレンタル終了で、レンタルビデオ店は色々不自由なことも多かったけど(よく延滞金取られてたし)、もうちょっとこう映画との付き合い方に余裕があったよな~と思ったよ。

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ゲームって映画よりも面白れぇな~