MOVIE TOYBOX

映画で遊ぶ人のためのウェブZINE

こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.10 『The Necro Files』を買った

『ゾンビ映画大事典』によると触手責めというエロ表現を生み出した日本のアダルト漫画/アニメの『うろつき童子』に触発されて制作されたらしいこの映画、確かにDVDジャケットを見るとメタル調にコミカライズされた登場人物たち(ダッチワイフ含む)が描かれており、微かではあるが元ネタの空気を感じ取ることができる。といっても『うろつき童子』の方は見たことがないのでなんとも言えないところもあるが、まぁ触手責めを生んだ・・・というくらいだし、80年代後半のアダルト漫画/アニメならおそらく『妖獣都市』をずっとエロ方向に過激化したようなテイストなのだろう。反体制意識と表現の自由の追求とハードボイルドの残り香と女性嫌悪が奇妙に入り交じったあの感じが本当に少しだけなのだが、今回買ったSPASMO VIDEO版のDVDジャケットにはあったのだ。

それにしてもおそろしい映画である。主人公は連続レイプ殺人魔、いつものように女の人を犯して殺して臓物を食ってあまりの不味さに吐いていると駆けつけた警官二人組(片方は被害者の兄貴とからしい)にブチキレられてその場で射殺、めでたしめでたしと思われたがこのレイプ殺人魔の悪行に目を付けた悪魔崇拝者によってゾンビ復活させられてしまう。復活したレイプ殺人魔はなぜかチン〇が40センチぐらいに伸びておりいつもはこのチン〇だらりと垂れているがエロイ女が近くにいるとセンサーのように反応し勃起して犠牲者のいる方向を指し示す(最悪の鬼太郎である)。せっかくゾンビになったのにこいつときたら凝りもせず再びチ〇コの命じるままに犯し殺し臓物をむさぼり食うのであった。

一方そのころ、生前のこいつを射殺した刑事二人組の片割れは犯罪と悪徳の蔓延る街の惨状に怒り狂っていた。あまりに怒りが激しすぎて捜査中に麻薬の売人を撃ち殺してしまうキレっぷり。自暴自棄になってヘロインを相棒のすぐ横で打ってめちゃくちゃ怒られるのでもう単なるジャンキー殺人犯であるが、その二人が捜査を担当することになったのが例のレイプ殺人魔ゾンビによる猟奇殺人。そうとはお互い知らぬまま宿命の対決が迫る中、悪魔崇拝者たちが復活の儀式で使った赤ちゃんもまぜか蘇り「ウイィッヒィー!」とか叫びながら宙を飛び始めるのであった・・・。

とにかく不道徳要素がテンコ盛り。レイプ殺人、カニバリズム、鉤十字、悪魔崇拝、赤子殺し、無差別乱射、空飛ぶ赤ちゃん・・・ここまで盛れば悪食映画ファンも文句はないだろう。まるで友達のいない高校生男子がヤバイ俺を演出すると同時にそんな自分に酔うためにノートの片隅に書き綴った落書きをそのまま映像化したような世界観である。面白いか面白くないかは別としてその世界観を恥ずかしげもなくやりきったのは立派と言わざるを得ない。なんというか、若さを感じる映画だ。

言うまでもなくめっちゃ安い映画であり空飛ぶ赤ちゃんなどは人形であることを隠す気が一切なく、展開は支離滅裂で悪魔崇拝の儀式など高校生の遊びにしか見えない、レイプ殺人魔ゾンビがダッチワイフと出会って愛の渇望を言外に吐露する場面など噴飯ものと、要するに幼稚でバカげているのだが、しかしその見た目のバカバカしさに反して演出の方は無駄にシリアスぶっており、チープで陰鬱なテーマ曲を聞きながら見ているとなんだか気分が荒んでくる。このバカバカしいのに楽しい気分にさせてくれず脳が消化不良を起こす感じはジャーマン・ゴアと似ている。これ自体はアメリカ映画なのだが、ハイティーン男子の鬱屈を内包しながら厨二的暗黒パッションだけで突っ走るところがアンドレアス・シュナーズやオラフ・イッテンバッハといったジャーマン・ゴアの巨星たちの初期作を思わせるからだろう。

よってジャーマン・ゴアのパワフルなネガティヴィズムに惹かれる成人済みの映画好きならば一見の価値あり。ゴア描写も内蔵特化で安いながらも気持ち悪くさせてくれることうけあいだ。ゾンビ映画としてはまぁ・・・ゾンビ一匹しか出ないしゾンビマスクでゾンビっぽく見せてるだけの上に食うより犯すことに関心があるゾンビなのでかなり厳しい出来ではあるが、ロングチンコ垂れ下がりゾンビなどというものは他では見たことがないし誰もやろうと思わないと思うので、まさしくゾンビ映画のチン作として見ておくと何の役に立つとは具体的に言えないが長い人生何があるかわからないのでいつか何かの役に立つかもしれない。

ちなみにこの映画、ホラーとポルノの融合を謳い数々の奇作怪作駄作を世に放ったイタリアの怪人ジョー・ダマトに捧げられている。深く頷けるところである。

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com