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ウチだって社会派だぜ!!

【放言映画紹介 ウチだって社会派だぜ!!】第10回 平和な日常に売春の影!大久保公園パパ活×『未成年』

 2023年4月、女性客を売春させた容疑でホストクラブの従業員(が逮捕される事件があった。店のツケを払わせるために、新宿駅の近くにある大久保公園で立ちんぼ行為をそそのかした容疑である。

 ネット記事によると、今年に入ってから大久保公園ですでに18人もの立ちんぼ売春婦が摘発されているというのだから異常事態である。

 ツイッターで「大久保公園」と検索すると横並びになってスマホに黙々と見入る売春婦や、客と思しき目がギンギンになった大量の中高年男性が映った異様な映像が出てくる。もう本当に気持ち悪い光景なので、思わず「全員牢屋にぶちこめ!」と叫びたくなってくる。赤線に反対した戦後の矯風会のご婦人方もこんな気持ちだったのだろうか。

 問題はそれだけではない。

 バスカフェ妨害で有名な「煉獄コロアキ」なる迷惑インフルエンサーが、立ちんぼ少女と一緒にレンタルスペースに入ろうとする買春客を執拗に追いかける動画を投稿したのだ。追いかけられた男性はなんと杉並区の消防署幹部で、動画が職場にバレて依願退職に追い込まれたらしい。男性は既婚者で自宅ローンも残っているというのだから妻や娘の心情を察するに余りある。

 この動画が話題となってか、今では「大久保公園即おじ図鑑」なる買春客の顔写真を盗撮して脅迫するアカウントも存在するのだから救いようが無さすぎる。

 大久保公園の気持ち悪い買春客にも一人一人にそれぞれの人生があり、もしかすると消防署の人のように妻や子がいるのかもしれない。日本の男性既婚率は60%なので、おそらく動画に映っているおじさんの大部分は既婚者だと思われる。

 この記事を書いてるウチは冴えない子供部屋おばさん、売買春とは一切縁のない人生を送ってきた。・・・しかし、大久保公園の風景は他人事ではない。なんたって動画に映ってるのは自分の父親かもしれないのだ。

 今回は、来るべき買春バレからの家庭崩壊Xデーに向けて、脳内シュミレーションに最適な映画をご紹介しようと思う。

 『チェイサー』(08)『哀しき獣』(10)などの出演で知られる韓国の名優キム・ユンソクの初監督作品『未成年』(19)だ。父親が不倫バレして家庭崩壊するこの映画、繰り返し見て心身を鍛えればどんな家庭崩壊にも耐えられるに違いない。まさに「見るワクチン」とも言うべき、大変ありがたい映画である。


  父が不倫していることを知った女子高生のジュリ(キム・ヘジュン)。その相手は、問題児として知られる同級生ユナ(パク・セジン)の母ミヒだという。ジュリはユナに母親の不倫を止めるよう忠告するが、激しい口論の末ユナは母がジュリの父の子を妊娠していることを告げ、ジュリの母にまでその事実を暴露してしまう。思いもかけない告白に戸惑い、また現実から目を背けようとする両親の姿に傷つくジュリ。一方のユナも、娘を顧みず不倫の恋にのめり込んでゆく母の姿を見て深い孤独を感じていた。そんな最中、2つの家族を決定的に揺るがす、ある事件が起こる…。

(公式HPのあらすじより)

 先に言っとくがこの映画、産む・産まないですったもんだするストーリーではない。ステロタイプな耐える本妻VS悪い愛人みたいな話でもないし、本妻と愛人がなんかの拍子でお互いを認め合って、ダメ父を追い出して新しい女系家族結成!家族は与えられるものじゃない、自分で作り上げるものなんだ!バンザーイ!っていう話でもない。(アメリカ映画になんかもうありそう) 

 右往左往するダメな親たちを尻目に、若者たちは前向きに親離れする・・・それだけの話なのだが、これが実にいい。なんというか良い意味で韓国らしくない家族観で、『パラサイト』(19)や『エブエブ』(22)の濃ゆい家族像に乗り切れなかった人にぜひ見て頂きたい映画である。

 登場人物はどの人も印象的だが、特に妊娠中の愛人ミヒのキャラは面白い。
 十代でユナを生み、女手一つで鶏鍋屋を切り盛りする「どてらい女」なのだが、家に帰ると恋愛モード全開。娘の説得にも耳を貸さず、スマホに彼氏の連絡先を「最後の愛♡」というアッパラパーな名前で登録する恋愛脳ぶりで全く負えない。芸能界に入らなかった広末涼子のような女である。

 もう失うものがなく、ある意味「無敵の人」化しちゃった女・・・本妻にとってはかなり手ごわい存在である。(一見無敵の人に見えてもちゃんと傷ついてるんですよ、という事を丹念に見せていく映画でもあるのだが)

 映画終盤、愛人のユナと本妻のヨンジュが直接対決するシーンがある。ヨンジュはユナに向けて「家庭がある人だって知っていたの?どこまで行くつもりだったの?」と問い詰めるのだが、「浮気すればわかるわ。思い通りにならない。」とユナは答える。

 そう・・・本作の教訓とは「人間関係、なるようにしかならない」ということである。つまり、いざ家庭崩壊に直面した時我々(子供部屋おじさん・おばさん)にできることは多分何もない。

 例えお母さんが愛想をつかして家を出ていったとしても、お父さんが土下座してお母さんが許したとしても、それは単に個人個人の瞬間的な判断が組み合わさった結果でしかない。唯一できる事があるとするなら、すべてが終わった後に「あれはどういう出来事だったのか」と反芻することくらいだろう。

 

ChatGDPににパパ活と売春はどう違うのですか?と聞いてみた。自主性と同意、簡単なようでそれが一番難しい

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ゲームって映画よりも面白れぇな~