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たまに面白い映倫

【たまに面白い映倫】第21報 『フェルメール The Greatest Exhibition -アート・オン・スクリーン特別編』と『戦場のピアニスト』

〈このコーナーはたまに面白い映倫の年齢区分指定理由や文章表現などを紹介するコーナーです〉

映倫サイトを覗くのはおよそ一ヶ月ぶりじゃないかと思いますが、やはりたまに見たら面白い映倫テキストが見つかりましたので、今回も二本紹介したいと思います。(引用はいずれもhttps://www.eirin.jp/から)

フェルメール The Greatest Exhibition -アート・オン・スクリーン特別編

2023年、アムステルダム国立美術館で開催された史上最大のフェルメール展に集められた作品を美術関係者がそれそれ紐解いていくドキュメンタリー。(1時間33分)

全年齢指定のこの映画、一見するとどこも面白くないのですが、よく見ると「関係者がそれそれ紐解いていく」。「それぞれ」ではなく「それそれ」こんなよくある誤字をあげつらうのも趣味が悪いと思われるかもしれない。しかしです。関係者が「それそれ」と美術品を紐解いていく光景を想像したら・・・ちょっと面白くなってしまった。なんだかお祭りみたい。楽しそうですよね、ソレソレって次から次へと作品解題。だからどうした、どうでもいいだろ。いや、どうかそんなことは言わないで・・・。

あとタイトル長い。

戦場のピアニスト

1939年、ワルシャワ。ウワディスラフ・シュピルマンはラジオ局専属のピアニストだったが、ユダヤ人であったことからナチスの迫害のターゲットとなり苦難の日々を過ごすことになる。実話に基づくドラマ。市民に対する容赦のない戦争の暴力が描かれているが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。(※劇場再公開向け新版)(2時間30分)

こちらはPG12指定。2003年の初公開時にはPG指定にはなっていなかったと思いますが、今年12月の4Kデジタルリマスター版でのリバイバル上映に際しての再審査によりPG12となったもよう。その理由に注目。「市民に対する容赦のない戦争の暴力」、この映倫表現は初めて見た。とても抽象的な文言でこれだけでは何がPG指定に値すると判断するのかよくわからない。残酷描写があるのか、死体描写があるのか、銃撃戦などがあるのか。その点で映倫テキストとしてどうなのかと思いつつ、しかしロシアのウクライナ侵攻およびハマスのイスラエル越境民間人虐殺、そしてそれを受けてのイスラエルの無差別的報復空爆とガザ封鎖・侵攻・・・と悲惨な戦争の暴力が溢れる2023年11月現在、「市民に対する容赦のない戦争の暴力」の文言はたかだか年齢指定理由ながら重く響きます。

このテキストが具体的にいつ作成されたものかは不明ながら、映倫サイトによれば作品の審査日は2023年10月26日、ガザへの地上侵攻はまだ始まっていないもののイスラエルによる激しい空爆でパレスチナの民間人に多くの犠牲が出ていた時期です。これはやはり偶然ではなく現今の世界情勢を憂いた担当者の戦争に対する怒りや悲しみや、平和への願いのにじみ出たテキストなのではないだろうか。しかもその作品がナチスドイツによるポーランド侵攻とユダヤ人迫害を描いた『戦場のピアニスト』という・・・。暴力がまた別の暴力を生んでしまう歴史の悲劇を浮き彫りにする、思いがけず文学的でメッセージ性の強い、もはやこれ自体が作品と言いたくなる映倫テキストでした。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com