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推薦ポエム品評会

【推薦ポエム品評会】第6回 『宇宙探索編集部』品評会

著名人による新作映画の推薦コメント。それは今や洋画宣伝に欠かせない要素であり、ときにビジュアルやあらすじよりも強力に見る者の鑑賞意欲を喚起する。こうしたコメントは宣伝であるからして、それがどんなにつまらない映画でもあからさまに貶すようなものはない。しかし、とはいっても書くのは人間。コメントを頼まれたはいいが褒めるに褒められない、しかし頼まれた仕事は断れない。そんなこともあるだろう。また逆に、あまりにも映画が面白すぎて冷静にはコメントすることができない。そんなこともあるだろう。

そこに、ポエムが生まれる。商業と芸術、仕事と趣味、理性と感情のせめぎ合いの末に生み出される映画宣伝の推薦ポエム。宣伝の役目を終えれば誰に顧みられることもなく忘れられていく推薦ポエムを、確かに存在したものとして記録に、そして記憶に残す。そのために品評を行うのが本コーナーである。


今、中国SFがアツい。ケン・リュウから火がついた中国SFブームは各国のSF界を席巻し劉慈欣(リュウ・ジキン)の大作SF小説『三体』は日本SF界の中心人物の一人である大森望をして「怪獣みたいなSF」と言わしめせ、そのNetflixドラマ版『三体』も大きな話題を呼んだ。そんな中で発表された孔大山(コン・ダーシャン)監督によるこのフェイク・ドキュメンタリー風のSF映画『宇宙探索編集部』はもともとは北京電影学院大学院の卒業制作作品として計画されたものの、業界人の注目を集めて多くの著名中国映画人が参加、そして公開されるや若者を中心に大ヒットを記録したのだという。俺が映画館で見た時にも登場人物に倣って鍋を被ったコスプレ・スタイルの中華圏ファンがいた。

しかし日本では中国SF小説はヒットしても中国映画はインド映画や韓国映画のようにはヒットしない。『宇宙探索編集部』も最初は大阪アジアン映画祭で上映され、のちに一般公開されたものの、上映館はミニシアターばかり。宇宙からの電波を受信しようとするUFO探求者と鍋を被ったジャージ男が西遊記みたいな旅を繰り広げる映画、と聞いてもどうやら多くの日本の映画ファンはグッとくるものがないらしい。そうとなれば推薦ポエムの出番、いつになく力の入った『宇宙探索編集部』の推薦ポエムを、それでは品評していきましょう!(引用はすべてhttps://moviola.jp/uchutansaku/から)

アポロを知らない世代がつくった、
奇妙奇天烈なUFO探索ロードムービー。
笑いながら見ていたのに、
最後は不覚にも目頭が熱くなった。
おもろうて、やがて悲しき宇宙人。

大森望(SF翻訳家/『三体』『流浪地球』ほか多数)

日本における中国SF紹介者といえばこの人、大森望のコメントはさすがに手慣れたもの、笑えるコメディでありつつ泣ける映画でもあり、かなり変な映画であるというこの映画の特徴を的確に捉え、新世代の監督の作であるという知っ得情報まで入った、コスパに優れたお買い得な推薦ポエムとなっている。だが「おもろうて、やがて悲しき」なのは宇宙人ではなく人間の方ではないのか。「おもろうて、やがて悲しき人間」よりも「おもろうて、やがて悲しき宇宙人」の方が字面が面白いのは確かだが。このあたり、翻訳家のセンスが見えるところだろうか。

次から次へと現れる奇人変人の精鋭たちに、
もう宇宙人が現れなくても、彼らで十分だと思えてきます。
宇宙の中でも最もディープで愛すべき地球人に出会える
エモーショナルな感動作。
高度に進化した宇宙人にはこの映画は作れません。

辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)

奇人ウォッチャーの顔を持つマルチタレント、辛酸なめ子の推薦ポエムはやはり登場人物の奇人っぷりにフォーカスしたもの。「次から次へと現れる奇人変人の精鋭たち」の表現がバカバカしくて面白く、「高度に進化した宇宙人にはこの映画は作れません」の締めに漂うポンコツ人間愛と反骨精神にシビれる。「高度に進化した宇宙人にはこの映画は作れません」の文言はまたハリウッド映画みたいな宇宙船とかが出てこない見た目がチープな映画であることを言外に仄めかし、ピリリと皮肉が効いている点も技ありである。

つい笑ってしまう描写の中にある、宇宙への壮大な想い。
それは、人類にとって普遍的かつ究極の問いかもしれません。
宇宙も謎ですが、私たち人類も謎だらけ。
だからこそ愛おしい。

山崎直子(宇宙飛行士)

地球の外に生命体はいるのかいないのか。
科学の究極ともいえる謎の一つに対して,
タン編集長が自分,
そして仲間のすべてを犠牲にして解明しようとする
ヒューマンドキュメンタリー。
最後の宇宙の映像は一見の価値あり!

大場康弘(宇宙化学/北海道大学低温科学研究所 准教授)

へんてこな人々のけったいな旅の記録。
時にコミカルに時にシリアスに、
でも終始淡々とマニアックでストイックな旅の記録が綴られ、
独特なリズム感を醸し出している。
なぜか、デヴィッド・リンチ監督の劇場デビュー作
『イレイザーヘッド』を 思い出した。
緊迫感につつまれたザラザラした空気感は、
見てから何十年も経っても時々思い出す。
『宇宙探索編集部』の独特のリズム感も
そんなふうに頭に残るのかもしれない。

井田茂(惑星物理-宇宙生物学者/東京工業大学教授)

大森望や辛酸なめ子は推薦ポエム界のベテランだが、以上三名はおそらくこれが初の映画推薦ポエムになるのではないかと思われるいわば業界の新人、『宇宙探索編集部』の魅力を伝えるには業界外、とくに科学の視点も必要という配給の判断には好感が持てる。

三名の中ではやはり井田茂の推薦ポエムが異彩を放っており、強烈である。『宇宙探索編集部』と『イレイザーヘッド』はあまりにも似ていない。そのあまりにも似ていない映画を強引に接続してしまう手法は「解剖台上のミシンと傘の偶然の出会い」そのものであり、シュルレアリスム推薦ポエムとして見事。

人は、なぜ未知なるものに魅かれるのか。
その答えが、この映画にはある。
UFOを通して、人生の意味を知る。
都市伝説を超えたヒューマンドラマだ。
気がつけば、UFO雑誌の編集者である主人公に自分を重ねていた。

三上丈晴(月刊ムー 編集長)

どこの国でも、UFO研究家の人生は厳しい。
世間から冷笑され、家族や親戚にも見放され、
高額のガセネタをつかまされたりする。
それでもどこかにあるはずの真実を求めて突き進むタン編集長の姿には、
我が身につまされるものがあった。

羽仁礼(一般社団法人超常現象情報研究センター 主任研究員)

万有引力の法則を確立したアイザック・ニュートンが錬金術の研究家としての顔も持っていたことからも分かるように、科学とオカルトは対立概念のようでありながらもルーツを辿れば同根であり、『宇宙探索編集部』もまた科学とオカルトが渾然一体となった映画であった。その推薦コメントに科学の視点を導入するなら、オカルトの視点を導入するのも必然であろう。

現代日本オカルト業界ではよく知られた三上丈晴と羽仁礼の推薦ポエムはいずれも映画の主人公タン先生の体験と自らのそれを重ねている点で共通する。『宇宙探索編集部』という映画がいかにオカルト探求者をリアルに描いているか、二人の身体性を伴ったポエムからは伝わってくる。とくに羽仁礼のポエムは具体的で生々しく、笑いながらちょっと泣いてしまった。空疎なレトリックでも折り目正しいロジックでもない、これが魂の叫びでなくてなんなのか。見事なソウル・ポエムである。

さて今回だが、いずれのポエムもそれぞれ方向性の異なるユニークなポエムとなっており、水準が高いからこそ甲乙付けがたく、特選をひとつだけ選ぶことはできなかった。いずれ劣らぬ『宇宙探索編集部』の推薦ポエムだが、ただその中で「おっ?」と思わされるものが一編だけ目に留まったため、今回はそれをピックアップして品評会を終えたい。

つまり、一生青春ってことだ!!

ビビる大木(タレント)

いやもうちょっと真面目にコメントしてやれや!

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Twitter→@eiganiwaka