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たまに面白い映倫

【たまに面白い映倫】第26報 『胸騒ぎ』と『トランスフュージョン』

〈このコーナーはたまに面白い映倫の年齢区分指定理由や文章表現などを紹介するコーナーです〉

厳密には年齢制限ではないためR指定に比べてイマイチ存在意義の掴みにくいPG12。映倫サイトには「12 歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要」な区分と書かれているPG12に指定された直近公開の2本の映画から、今回はPG12について考えてみよう。

胸騒ぎ

バカンス先で親しくなったオランダ人の家族から自宅に招待されたデンマーク人の一家は、違和感に満ちた恐ろしい週末を過ごすことになる。スリラー。簡潔な性愛描写、及び男性フルヌード、女性ヘアヌード、及び児童虐待の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。(1時間37分)

セックス、ヌード、児童虐待まで積んでPG12。思わず「映倫がんばった!」と何様目線で労いたくなってしまう。映画感想サイトなどを見ればこの映画を見て不愉快になった大人の「これはR指定にするべきじゃないのか」という八つ当たり的な意見も散見される中、たしかにえげつないストーリーではあるが残酷やエロの具体的な描写はほとんど無い(ちょっとはある)ので、そうであるならR指定にできる根拠はないとした映倫判断は、表現の自由ならぬ鑑賞の自由の観点から英断といえるのではないだろうか。

しかし小学生以下のキッズにこの不快かつ救いのないダークなサスペンスはいささか刺激が強すぎそうなのも事実。そこでPG12の出番である。主人公がいくら嫌な目に遭ってもはっきり嫌と言えず、本当は早く帰りたいのに相手に気を使ってさっさと帰らなかったことで大惨事になってしまうこの映画は、まさに「12 歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要」だ。嫌なことをされたらちゃんと嫌と意思表明すること、帰りたくなったら自分の意志でキッパリと帰ること、さもなければこんな風に大惨事になってしまうかもしれない・・・そうキッズたちに助言するために、むしろ積極的に親子鑑賞をすべきPG映画とさえ言えるのではないだろうか。

トランスフュージョン

妻を事故で亡くし男手一つで息子を育てる元・特殊空挺部隊員のライアンは、生活のため昔の仲間に誘われ裏家業に手を出すが思わぬ事態が待っていた。アクション。20歳未満による喫煙・飲酒・無免許運転、及び殺傷・流血の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。(1時間45分)

「20歳未満による喫煙・飲酒・無免許運転、及び殺傷・流血の描写」と、こちらもかなり盛っているわりにPG12で済んでいるのは、いずれの描写・シーンもごく簡潔なものに留まっているためだろう。『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』がタイトルからしてキッズ向け映画であるにも関わらずキッズの無免許運転が出てくるからという理由でPG指定を食らい配給がツイッター上で異例の「ご家族みんなで楽しめる映画です」の声明を出す展開にまでなった(※現在は削除されている模様)数年前がウソのようだ。しかし、これもまた「12 歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要」な映画である。「必要」というか、ぜひとも親子で鑑賞して見終わった後にいろいろと語らってもらいたい。親子の絆が負の連鎖を引き起こして取り返しのつかない地点にまで行き着いてしまうノワール映画であるからして、親子で語れば面白さが何倍かに増すのではないだろうか。そう考えれば、PG映画とは「子供向けではない」という意味ではなく、「親子鑑賞向き」の映画なのかもしれない。ちなみにこちらも展開は救いがない。救いがない映画は基本的にPGらしい。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com