【映画で解決！捏造お悩み相談室】第14回 Q「イシナガキクエを探してほしい！」
悩み事の尽きない現代社会を生きるのは大変なことです。ことにその悩みを打ち明ける相手がいない、打ち明けても有効な解決策が出てこないという場合は尚のこと。でも大丈夫、そんなあなたのお悩み、きっと映画が解決します！
ひとつ聞くけど、あんたたち、信用できるんだよね？それじゃあ言うけど、イシナガキクエを探してる。身長は145センチぐらいかな。髪は肩ぐらいまである。顔は面長だね。もう何十年も探してる。わからないんだよ。どこにいるのか。見つけて欲しい。お願いします。
××県 ヨネハラサネツグ
米原さん！なんと驚きました、米原さんじゃあないですか！見ましたよこのあいだテレビでやってた公開捜索番組『イシナガキクエを探しています』！え、ちょっと待って、スタッフちょっとこれ、手紙の消印いつになってる？いや、『イシナガキクエを探しています』ってイシナガキクエを探していた米原さんが亡くなったから企画された番組のはずだから・・・（スタッフ：死亡一ヶ月前ぐらいです）あぁ、じゃあおかしくはないか。いろんなところにこういう手紙送ってたんだね、米原さん。いや焦った～死んだ人から手紙が届いたかと思ったわ～。
え、ちょっと待って、でもそれじゃあこれお悩み、どうすんの？相手もう死んでるわけでしょ？（スタッフ：解決してください）なに解決って。イシナガキクエ見つけろってこと？見つけろったってこれ、だって、ねぇ？なんもわかんないじゃないこれじゃあ。あの番組のスタッフもダメだよね、公開捜索っていうけど、身長とか髪型とかそんな断片的な情報じゃあ探しようがないよ。もっとこうさ、ね？米原さんとイシナガさんの関係を聞くとか、イシナガさんの出身地を聞くとか、通ってた学校とかやってた仕事とか、あるでしょうそういうのが。それが何もないんだもの。これじゃあ公開捜索ったってやりようがないよ！（スタッフ：最終回でどんでん返し的に明かすためにあえて隠してるんじゃないですか）それじゃあ公開捜索する意味がないだろ！じゃあ今回はお悩み主が既に死亡ということで、公開捜索番組『イシナガキクエを探しています』のスタッフにぜひとも見てもらって参考にしてもらいたい映画を紹介します！
『ジャージー・デビル・プロジェクト』！！！
今で言うポッドキャスト的なものの配信者たちがUMAとして知られるジャージー・デビルを探すために森の奥へ。しかしそこで凄惨にして不可解な殺人事件が勃発。グループの中でただ一人生き残ったポッドキャスターは容疑を否認するも犯人として逮捕され有罪判決を受けたが、はたして本当に彼は犯人なのだろうか？この映画は、今も謎のベールに包まれたジャージー・デビル殺人事件の真相に少しでも近づくために制作された真実のドキュメントである・・・という設定のフェイク・ドキュメンタリー・ホラー。
これだけ読めば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の二番煎じかと思われるかもしれないが、実はこの作品、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』公開前年の1998年に公開されたもの。森の中での怪事と都市伝説の組み合わせの類似から『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の元ネタとも言われる、フェイク・ドキュメンタリー・ホラーの先駆的作品なのだ。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に比べるとこちらはよりフェイク・ドキュメンタリーとしての純度が高く、ホラー映画的な見せ場は皆無に近い。ラスト10分のびっくりどんでん返しを除けば映画の大部分は架空の殺人事件にリアリティを持たせるための地味なインタビューや解説に費やされており、そのためやや退屈ではあるものの、退屈であるからこそ時折差し挟まれる画質の粗いフッテージ映像は「そこに何かが映っているのではないか？」と不気味な空気を放ち、終盤ついに登場する「ジャージー・デビル」（あえてカギカッコ付きで表記したことの意味を考えてもらいたい）のピンボケしたその姿には戦慄させられる。だが何よりも戦慄させられるのは・・・。
日本では配信化もDVD化もされておらずビデオテープしか出ていないこの映画。ちょっと見るハードルは高いが、取材というスタイルや粗いビデオ画像の持つ気味悪さ、都市伝説を絡めたストーリーなど、『イシナガキクエを探しています』や『フェイクドキュメンタリーQ』に代表される今日の日本のフェイク・ドキュメンタリー・ホラーの諸要素は既に出揃っており、このジャンルが好きな人なら原点を知るという意味でも必見の作。ということで『イシナガキクエを探しています』のスタッフさん！『イシナガキクエを探しています』面白かったんですけど、『ジャージー・デビル・プロジェクト』みたいにもっとリアルに事件を作り込んでホンモノの取材っぽくした方が怖くてよかったんじゃないかと思います！（スタッフ：ホンモノですよ）ああそうでしたね！ホンモノホンモノ！『イシナガキクエを探しています』はホンモノの公開捜索番組です！（スタッフ：死ね！）ぎゃあああああ！
※質問は完全に捏造なので応募とかしてこないでください。
