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こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.40 『リバイアサン』(1989) 4KUHD盤を買った

先日ネットを眺めていたらソニーが録画用Blu-rayディスクの生産を終了するという報道が目に飛び込んできた。プレスリリースによると後継規格の開発予定はなし。いつかはその日も来るだろうとはわかっていたものの、まさかこんなに早く来るとは、しかも後継規格もなしとは・・・長らく物理メディアの第一線に立っていたソニーの物理メディアからの撤退宣言は思いのほかショック。今回のプレスリリースはあくまでも録画用ディスクの生産終了ということだからソニーが権利を持つ映画のDVDやBlu-rayソフトが発売されなくなるということではないとしても、日本国内では円盤作らずの流れはおそらくこの決定で加速することは間違いがないんじゃないだろうか。もしかすると今後、日本映画のソフトが欲しければ海外盤を買うことが当たり前という時代も遠からずやってくるのかもしれない。

ところでそのソニーは2005年~2015年までの間、ハリウッドの老舗映画スタジオMGMを傘下に持っていた(現在はAmazonがMGMを保有している)。MGMといってもピンと来ない人もいるかもしれないので代表作を挙げると・・・そうだね、深海SFホラーの金字塔『リバイアサン』だね。日本ではソニーがBlu-rayディスクの生産すら終了という中、なんと海の向こうでは『エイリアン』と『遊星からの物体X』をあまりにも捻りなくストレートにパクっているくせに公開が1989年と完全に商機を逃していたあの2匹目のドジョウ映画『リバイアサン』が2025年現在の最高品質映像ディスク規格である4KUHDで発売されていた!その衝撃事実をビデマ店頭で確認後、もちろんソフトは捕獲だ。

しかし残念ながら我が家には4KUHDの再生環境がない。現在販売されている4KUHDソフトは初期のBlu-rayソフトがそうであったように下位規格であるBlu-rayソフトとのコンポになっているのが一般的なので、これもセットで付いてるBlu-rayで見ることはできたのだが、気持ち悪いほど超ぬるぬる動く4KUHD画質で見ることは叶わなかった。はたして4KUHDで『リバイアサン』を見たらどんな気持ちになるのであろう。なにも『リバイアサン』を4KUHD化しなくても他にも4KUHD化すべき映画は山ほどあるだろとか思うのだろうか。きっと思うに違いないが、それは老後の楽しみに取っておこう。

画質以外の内容は4KUHDとBlu-rayで同一。ということでBlu-ray画質で『リバイアサン』を約一ヶ月ぶりに見直した結果(最近じゃねーか)、家にあるシネフィル・イマジカで放映された際の『リバイアサン』をDVD-Rに録画したものとはまるで別物のように見えて驚く。画質を落として録画しているとはいえおそらく2006年頃にシネフィル・イマジカで放映された『リバイアサン』はかなりクリアな映像だったのだが、さすがオリジナル・フィルムから4KスキャンしたBlu-rayの1920×1080P高画質、これまでよく見えなかった細部の解像度が段違い。

見所のひとつはそうして隅々まで堪能できるようになった美術。『エイリアン』のパクリと心なく言われがちだし実際にパクリ丸出しの『リバイアサン』だが、『スター・ウォーズ』初作や『エイリアン』『レイダース 失われたアーク』『トータル・リコール』といった錚々たる作品群にコンセプト・デザイナーとして参加し、『コナン・ザ・グレート』では美術監督を務めたロン・コッブによる海底基地のインダストリアル美術はまさに眼福。基地セットに施された細かなヨゴシ加工が高画質化で視認できるようになったことで作り物感が増してしまったところもあるのだが、そのことでむしろ等身大サイズの模型のように見えて、これぞハリウッドの美術屋さんの職人芸と嬉しくなってしまった。

そしてそしてもう一つの見所はなんといってもクリーチャー。スタン・ウィンストン・スタジオによるこのクリーチャーは『エイリアン』や『遊星からの物体X』に比べて独創性がないのは間違いがないのだが、もともとスタン・ウィンストンのクリーチャー造型はB級を志向しているし、暗闇やスモークなどで誤魔化し誤魔化し撮らないと成立しないというものではなく、はっきりとその姿を観客に見せるために作られている。監督のジョルジ・パン・コスマトスもその意を汲んでかカッと照明を当ててデカデカと謎の深海クリーチャー・リバイアサンくんをカメラに収めているので、高画質化によってスタン・ウィンストン・スタジオのこちらも職人芸を存分に味わえる。中でも切断された足リバイアサンくんのねちょねちょした動きと質感は素晴らしく、実は『エイリアン』よりも『リバイアサン』の方が好きだったSF異教徒としては感激もの。

『リバイアサン』のSF映画としての面白さはこうした徹底的に「見せる」姿勢にあるのではないかと思う。同時期に相次いで製作された『ザ・デプス』や『アビス』などは様々な深海SFは「見せない」ことでサスペンスを演出しようとしていたが、陰鬱なサバイバル劇だった『ランボー』を見せまくりアクションに変えてしまった『ランボー/怒りの脱出』のジョルジ・パン・コスマトスに手による『リバイアサン』は、海底基地のセットも見せるしクリーチャーだってしっかり見せる。それがかつては芸の無さと見えたかもしれないが、時代は変わる。映画高画質当たり前の今となっては、何も隠さず全部見せまくりの『リバイアサン』はかえって豊かな映像体験をもたらす映画となったのだ!

ピーター・ウェラー、ダニエル・スターン、メグ・フォスターといった曲者役者たちの共演も楽しくジェリー・ゴールドスミスのソナー音をモチーフにしたテーマ曲も印象的な深海の『エイリアン』こと『リバイアサン』。ぜひとも今こそ見て欲しい一本だ。なお今回買った4KUHD盤の特典は映画史家のオーディオ・コメンタリーやメイキングなど。トレーラー集にはなぜか『ザ・グリード』など他の深海映画のトレーラーも入ってた(ということは『ザ・グリード』の4KUHDも・・・出るのか?)

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com