【コーエン添田のワンサポナタイミン・ザ・幕】第4回 モリコーネの謎を追え!
フランキー・レインのアルバム『Hell Bent For Leather!』。
西部劇映画やTVの主題歌を多く歌ったフランキー・レインの、西部劇に特化したアルバム。全曲新録で、Conducted by JOHNNY WILLIAMSとあるのは若きジョン・ウィリアムスのことらしい。ディミトリ・ティオムキン作品『ローハイド』『ハイ・ヌーン』『OK牧場の決斗』など。
Wikipediaページでは本アルバムや、ジョン・ウイリアムスとの仕事について章が割かれている。https://en.m.wikipedia.org/wiki/Frankie_Laine
オールデイズ版CDにはボーナストラックとして『OK牧場の決斗』『ローハイド』『ガンスリンガー』等のオリジナルシングル版が追加されており、これらがかなり「ロード・トゥ・荒野の用心棒」している。
『OK牧場の決斗』にはFilm Versionとクレジットされているテイクがあり、ここで口笛が登場する。映画の冒頭部分を確認したところ、確かにこちらが使われている。
『ローハイド』はクリント・イーストウッドが出演していたTV西部劇。
で、フランキー・レイン&ディミトリ・ティオムキンが完成させた西部劇歌謡の流れにあるのがピーター・デイヴィス『みのりの牧場』。
このアレンジを手掛けたのがエンニオ・モリコーネであり、オケをそのまま流用して口笛を被せたのが『荒野の用心棒』。
『みのりの牧場』はトラディショナルを元にしたウディ・ガスリー作品。ブラザーズ・フォアやキングストン・トリオも取り上げている。
この曲のWikipediaページにはジョン・スタインベック『怒りの葡萄』の世界を思い起こさせる、とある。https://en.m.wikipedia.org/wiki/Pastures_of_Plenty
Googleで歌詞と翻訳を見ると、確かにそんな感じだ。
で、その『怒りの葡萄』を映画化したのがジョン・フォードなのである。
『怒りの葡萄』は西部劇ではなくて、もう少し後のアメリカが舞台。翻弄される労働者たちが描かれる。そして『みのりの牧場』はフォーク、プロテスト・ソングで知られるウディ・ガスリーの作品。
その『みのりの牧場』にディミトリ・ティオムキン由来のムードを注入し、西部劇化したのが第一の飛躍。そこからヴォーカルを抜き、全く別の主旋律を改めて書き、口笛で演奏。独立したインストとした。これが第二の飛躍。こうして「西部劇といえば口笛」という印象を決定づける『荒野の用心棒』が生まれる。
ここまでは分かった。
では、本国アメリカにおいて既に「西部劇といえば!」を完成させていたディミトリ・ティオムキン。彼の音楽はどこから来たのか?
このページに詳しいバイオグラフィがある。
http://oo11.web.fc2.com/FC/tiomkin.htm
ロシアでの青年時代に、ラフマニノフやグラズノフからの影響。ベルリンやパリでの修行時代、渡米そしてジャズとガーシュウィン。ハリウッドへ。マックス・スタイナー。西部の大平原(プレーリー)とロシアの大草原(ステップ)……。
彼自身が西部劇の「ストレンジャー」のようではないか。
ジャズ、ガーシュウィン、ハリウッド黄金期。ポピュラーとクラシックの間に橋を渡し、手招きしているようなラインナップである。大変なことになった。