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こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.12 『GOROTICA』を買った

DVDの再生ボタンを押すとFBIの警告画面の次にin memory of Anthony Perkinsの文字が出てきたのでそういう名前のスタッフでもいたのかなと思ったがエンドロールには見当たらない。『サイコ』の倒錯モーテル経営者役で最もよく知られるホラーアイコン、アンソニー・パーキンスが亡くなったのは1992年、この映画GOROTICAは1993年の作ということはおそらくアンソニー・パーキンスの訃報を受けてこのテロップが入れられたのだろう。いや、そういうことのために使う普通それ? in memory of 〇〇ってあれでしょその映画のスタッフとかキャストが製作中に亡くなったりしたときに載せるやつでしょ? そりゃ別にアンソニー・パーキンスを追悼するのは自由だけれどもこれじゃあこの映画にアンソニー・パーキンスが関わってるみたいじゃんか。いいのかな。まぁいいか天国のアンソニー・パーキンスもきっとこの映画の完成を祝福してくれているだろう・・・そうかな!?

映画本編に入るとすぐに現れるのは死体写真の数々。主人公はネクロフィリアの女で、死体写真集ビデオを寝室で見ていた彼女はノってきてしまって骸骨オブジェを股間にあてがいオナニーを始める。ネクロフィリアの女を主人公とする映画といえばジャーマン・ゴアの異端児ユルグ・ブットゲライトの『ネクロマンティック2』がやはり有名。こちらは1991年の映画であるからおそらくそれに触発されて制作されたのだろう(『ネクロマンティック2』にも主人公が動物虐待ビデオを鑑賞するシーンがある)。GOROTICAの方はアメリカ映画だが、アメリカの自主ホラーらしからぬ陰鬱なムードがこの映画の特徴だ。

さてそんな女が墓地へ出かけたところ遭遇したのが死体を車の後部座席に乗せて途方に暮れた宝石強盗の男。この死体は男の相棒だったのだが盗んだダイアモンドを呑み込んだ状態で警官に撃たれて死亡してしまい、腹の中のダイアモンドが欲しい男は死体を捨てるに捨てられず困っていたのだった。死体の扱いならお手の物ってんで女は死体と男を家へと招く。目的は当然新鮮な死体とのファックであるが、ブットゲライトの影響を受けているぐらいだしこれはさぞや汚物まみれの腐敗解体展開になるんだろうなと思ったらゴア特殊メイクなし、腹を撃たれて死んだはずなのに銃創のどこにもないこの死体は生きた役者が根性で演じており、従って絵面的には日本のAVに時間停止シリーズというのがあるが、それの男女逆バージョンみたいな感じで完全マグロ状態の男優を性欲強めの女が犯しているだけにしか見えず、期待したグロはなかった。

それにしてもこの死体役の男優は頑張っている。死体だからとにかく動かないでくれと指示を出されているのだろうが疑似とはいえでかいおっぱい丸出しのサド顔の女が上にまたがってベロベロしたりグラインドしたりしているわけである。マゾなので書きながら興奮してきてしまったが、動くなと言われても自分ならばと考えれば下半身はビンビンだろうし脇腹はピクピク動き吐息も漏れてしまうだろう。更にこの死体役の男優、ネクロフィリア女に長い髪をバッサリと刈られてモヒカンにされた上、乳首にピアッシングされてしまう。後者に関しては手で隠れてよく見えないところもあったので実際は針を通していない可能性もあるが、そんな役者を傷つけないための高等技術(およびその配慮)を持った人が作った映画には見えないし、少なくとも見えているところではかなりブスッと針が乳首を責めていたので、痛かったことは間違いない。それでも微動だにしない死体役の男優。役者なのかどうかもわからないがホラー映画出演者の鑑である。

せっかく仕入れた死体なのでネクロフィリア女はネクロ同志兼顧客のもとへ死体を持っていく。困ったのは宝石強盗の男である。これじゃあいつまで経ってもお腹のダイアモンドが手に入らないじゃないか・・・故買屋にはもう売ると約束してしまったのに!ということで男が二人のネクロフィリアと一つの死体の待つ家に向かったところ目に飛び込んできたのはネクロ顧客の男が死体を犯しながらその背中をボンテージに身を包んだネクロフィリア女が鞭でしばくという異常な光景。貴様ら異常だ!パンパン!ネクロ顧客を撃ち殺しその返り血を浴びた宝石強盗の男を見てネクロフィリア女王様はゲタゲタと笑い声をあげる。あんたが撃ち殺したそいつはエイズだよ、あんた感染しちゃったね!アハハ!まさかの展開に絶望した宝石強盗の男はとりあえずネクロフィリア女王様を撃ち殺して元相棒の死体の腹を割きダイアモンドを取り出すと、それを餌に故買屋を呼び出し一緒に焼身自殺を遂げるのであった。ちゃんちゃん。

似ているということもないのだがこのプロットから連想させられたのはデンマークのネオ・ノワール派監督ニコラス・ウィンディング・レフンの初期作『ブリーダー』で、悪趣味の方向性や殺伐とした発想に被るところがある。もちろんGOROTICAの方はレフンの初期作のように完成されておらず素人丸出しの自主映画なので、いくら悪趣味な展開が続いても絵面はむしろ牧歌的、血も内臓もほとんど出ない(部屋を汚したくなかったんだろう)し人を殴るショットでは編集が甘く寸止めしているところまで映り込んでしまっているので、感じるのは恐怖や生理的嫌悪感や迫力ではなくいろいろ考えて工夫してみんなでがんばったな感と主演のネクロフィリア女の縦長おっぱい大放出による素朴なエロさである。とはいえこの映画とレフン映画の差は少なくともプロットの面ではそれほど大きいものではない。あと一歩、いや十歩、いや・・・もうちょっと・・・あと三十歩ぐらい・・・だけ演出力があれば、この映画の監督ヒュー・ギャラガーもレフンのように有名監督になれていたのかもしれない。

ところでこのDVD、ジャケ裏にあらすじ以外の何の作品情報も書いてないアングラ感ありありのパッケージだったのだが、映像の方もアングラ感でノイズバリバリのゴワゴワ画質。レンタル落ちしたVHSテープでも拾ってきてマスターにしているのかと思いながらエンドロールを見届けると思いもよらない展開になった。画面にはもう何も映っていないがシークバーを見るとあと20分ぐらい収録時間が残ってる。まさかレンタルビデオですらなくレンタルビデオのダビングテープなのか・・・と呆れが脳裏をよぎったところで画面に何の説明もなく無音状態で人体骨格標本が登場。なんなんだろうか、呪いのビデオ的な演出なのだろうか。すると場面が変わり今度は映画の最初の方に出てきたダイアモンドのショットになる。どうやらこれは役者やスタッフを呼ばずに監督が一人で撮れる実景ショットを集めたもののようだ。・・・お前重ね録りしたろこれ!実景ショット撮った8ミリビデオテープもう使わないからってその上から映画本編ダビングしただろ!それをマスターにしてるだろこのDVD!

思わず脱力させられたが生活臭が濃厚でこれはこれで面白い仕様か。この実景ショット集はメイキングとしても一応見れるので(というかメイキングそのものだ)、骸骨が横方向ではなく縦方向にくるくる回るタイトルバックの謎も判明。どう回してるんだと思ったら横向きにした骸骨をテグスで吊って回転させ、その回転方向が画面上下になるようカメラを横に倒して撮影していたのだった。なるほどこんな簡単な仕掛けでちょっと不思議な映像というのは撮れるものですね。その素朴な創意工夫に、やはり病的なものや恐怖感よりも牧歌的な微笑ましさを感じてしまうGOROTICAなのだった。

※こんなソフトをリリースするのはどんなメーカーかと思ってリリース元SRS CINEMAのサイトを見たら日本漁村版『白鯨』として知られる硬派な文芸映画『鯨神』を出していたりするちゃんとしたところだった・・・。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com