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こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.23 『NIGHT OF THE DEMON』(1980)を買った

NIGHT OF THE DEMONと聞いて映画偏差値の高い人が頭に思い浮かべるのはおそらくRKOの暗黒星ジャック・ターナー監督による同名のクラシック・ホラーだろう。もちろんこれを書いている私も映画偏差値の高いエリート秀才なのでビデマの棚にこのタイトルを見つけた時にはほほうターナーの名作ですな、とすぐに思い当たったものだ。だがしかし、棚からソフトを引き抜いてジャケットを見てみるとそこには立ちションを終えて実に渋い表情でチャックを上げている革ジャン男の姿。絶対に、違う。あの高雅なるジャック・ターナーが立ちション男の映画を撮るはずがないのでこれは何か明らかにタイトルが同じだけで得体の知れぬ別物だ・・・。

裏面を読むにどうやらこれはマニア業界ではよく知られたカルト映画、ビッグフットの出てくるゴア映画らしい。早速サルベージして家のPCにディスクを入れるとナイスバデーなアメリカおねえさんの前説が始まってしまった。この人はWWEディーヴァのマリア・ケネリス、そしてこのDVDはMaria’s B-Movie Mayhemというマリア・ケネリスがホスト役を務めるカルト/トラッシュ映画シリーズの一本であった。映画の始まりと終わりにマリア・ケネリスが現れ「今日の映画はやっべぇぞ~チンコをもぎ取るからな~チンコチンコチンコ!」とか解説してくれる。早い話が水野晴郎の代わりに女子プロレスラーが出て『ビバリーヒルズ・コップ』の代わりに臓物映画を流す金曜ロードショーということであろう。

マリアさんの解説にもあるがこの映画はチンコがもがれる映画としてごく限られた一部に知られている作品のようだ。都市伝説を研究する大学の調査チームがやってきたのはビッグフットによる殺人事件の噂が後を絶たないアメリカ田舎山。巨大な人型の足跡やビッグフットを祀り怪しげな儀式を行う邪教集団を目撃した調査チームはビッグフットの存在を確信し、ついにはビッグフットを目撃したと思われる人物とコンタクトを取ることに成功する。その後ビッグフットが一行の前に姿を現し皆殺しにするのだが、チンコもぎはその際にではなく調査チームの長である大学教授が語る都市伝説の中に登場する。

「その日、この峠を一人の風来坊バイカーが通ったんだ。尿意を催した彼はバイクを止めて近くの茂みで立ちションをした。ウガー!そのとき、ちょうど男の小便がかかる所に潜んでいたビッグフットが現れ、男のチンコをもぎ取った!・・・だが警察はこの不可解な事故を闇に葬ってしまったんだ・・・」本当に大学教授なのか疑いが出てくる発言だが、教授の表情は大真面目だ。それにしてもジャケットの立ちション男ってこれだったんですね。立ちションをして渋い顔でチャックを上げているのかと思ったがそうではなく、ビッグフットにチンコをもぎ取られたため股間を押さえて苦痛にあえいでいる場面。突然チンコをもがれたんだからそれはそれは渋い顔になるわけだ。

ビッグフットの映画なのにDVDジャケットに映っているのが苦悶の表情を浮かべるチンコもがれ男一人という思いきりの良さにカス映画を想像したが、実際に見てみればこれがなかなかの本格ゴア、着ぐるみビッグフットの見せるストレートな暴力性は意外にも迫力があり、その殺しもアメリカン・スプラッターブーム前夜1980年という製作年を考慮すれば頭一つ抜けた残虐さで、翌1981年の『陰獣の森/ふりむくな!忍びよる殺人鬼の影』を思わせる陰惨ムードと合わさって、見ているとなんとも心が荒む。

この厭な味わいはエクスプロイテーション映画特有のやっつけ撮影によるものではないようだ。ビッグフット教団が取ってつけたようだとかビッグフットに犯された可哀相な女の人が語る悲惨な体験談がとくに本筋と関係ないとかいい加減なところも多いのだが、撮影自体はプロの技術を感じさせるもので、この時代のB級映画にありがちな「撮りこぼしたショット」がとくに見当たらず、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は当然参考にしたであろう山小屋籠城戦に続くビッグフット皆殺しシークエンスはわざわざスローモーションで撮られている。ビッグフッドの獰猛なうめき声が響く中一人一人スローモーションで無残にも腕が引きちぎられはらわたが引きずり出され頭部が半切断され顔面が焼かれ・・・この酷さでどうしてビデオバブルの時に日本に入ってこなかったんだろう?『血まみれ農夫の侵略』なんかよりもよほど人でなしのビデオマニアにウケそうな気もするのだが。

皆殺しと言いつつその顔面を焼かれた教授だけは一応生きて魔の山を出るのだが、入院した病院で警察にその体験を話しても当然信じてもらえず、錯乱してるみたいだからと鎮静剤を打たれて黙らされたところで映画は終わる。誰も救われず何も解決せずビッグフットの正体も邪教集団の目的もビッグフットに人生を狂わされた女の人の行方も結局すべてわからないまま。ある意味、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の先駆けのような映画とも言えようか。この一抹の幻想味も帯びたネガティブな魅力は時代の徒花の一言で説明し尽くせるものではないだろう。チンコがもがれる映画として語り継がれてきたらしいこのNIGHT OF THE DEMONだが、決してチンコがもがれるだけの映画ではないのだ。

こんなえげつなく面白い映画を紹介してくれたのだからマリアさんには感謝しかない。特典映像として映画とはまっっったく関係のないマリアさんの新曲PVが収録されているのも無問題だ。それにしても、こういう企画ものの映画ソフトってBlu-rayの時代に入ったらめっきり減ってしまいましたな。企画もの映画ソフトからしか摂取できない栄養分も世の中にはある。CODE REDレーベルから出ているこの一本、思いがけない掘り出し物でたいへんによかったです(ちなみにチンもぎ男のジャケットはリバーシブル仕様になっており裏面に返すとそちらはちゃんとビッグフットの映ったジャケットになっている。ただし左下にビッグフット風コスチュームに身を包んだマリアさんもしっかりと映り込んでます)

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Twitter→@eiganiwaka