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こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.22 『DIAMONDS OF KILIMANJARO』(邦題『キリマンジャロ・ストーンの謎/秘宝に眠る美少女伝説』)を買った

あれはなんというタイトルだったか、『サドマニア』とかだっただろうか、以前本作『キリマンジャロ・ストーンの謎』の監督にしてユーロ・トラッシュの帝王(なんていう説明はビデマに集う猛者には不要でしょうが・・・)ジェス・フランコの女囚映画のひとつを見た時に、この映画は囚人も看守も全員女性で全員裸という映画なのだが、裸が画面に出すぎていてしかもそれをジェスの映画なので殊更に強調するでもなく、ストーリー的にもよくある女囚ものだからただ全員裸で普通の(?)刑務所の日常が描かれるだけなので、女の人の裸がこんなにたくさん出てくるのにこんなに全然エロく見えないことがあるのかとちょっとした衝撃を受けたものだった。なるほど、エロさとは人間のパースペクティブが生み出す幻覚であり、エロいものという具体的な対象があるわけではないのだな。これはフロイト=ラカン派のエロティシズムに関する見解とも符号する。まことにジェスの映画は示唆に富むことこの上なし、見る者の思考を揺さぶる現代アートのようである。これは、もちろん「わかってる」人に向けて書いている冗談なので、ジェス・フランコ?誰それ?という人は信じてはいけません。

というわけで今回は『キリマンジャロ・ストーンの謎』のDVDをビデマで買ってみた。この映画はまずタイトルが魅力的であった。DIAMONDS OF KILIMANJARO・・・タイトルにモンドとジャーロが入っている!キリ・・・キルも入っている気がするな!そしてDVDのジャケットに描かれているのは人狩り部族と大きな口を開けたワニから逃げるおっぱいを両手で隠した黒髪の半裸女性!実際に出てくるのは金髪の女ターザンだし部族もほとんど戦闘をしない平和な人たちなのでこれは嘘のジャケットだが、仮に本当でもジェスの映画は別に面白くはないから本当でも嘘でもどっちでもいいし、むしろどうせ嘘だろと瞬時に思わせるところがこのジャケットの味のあるところだ。こんなものを目にしたら買わないわけにはいかない。

映画が始まると即座に映像に傷が大胆に入り環境音トラックが途切れ途切れになっているプロ仕様。最初はディスクの不具合かと思ったが台詞の方は途切れていないのでこれは原盤の問題のようだ。英国人探検家がアフリカ奥地のジャングルに墜落するこのシーンの映像と音声は実にガタガタだが、それから十数年後ぐらいに急に飛んで混乱させられる次のシーンから先はまぁまぁキレイで音声不調もなかったので、もしかすると冒頭のシーンだけネガが残っておらず、どこかの映画館に眠っていた上映用プリントから起こした映像を繋いだのかもしれない。どんなカス映画でもその背景には様々なドラマがあるものだ。

さてジャングルに落下した探検家はいわゆるカーゴカルトというやつで現地の部族に神として崇められ『闇の奥』よろしくジャングルの奥地にすごい慎ましい王国を築くことになる。探検に同行した娘は大自然の中で逞しく育ち今や女ターザンとして部族を率いている。もちろんコスチュームは腰みの一枚でおっぱい丸出し。ターザンなのでロープアクションもスタントなしで披露するがその動きはあまりにももっさりしており迫力ゼロ。ただしこれはジェスの即興撮影(無気力とも言う)のせいなので、実は木から木へロープに掴まって移動という結構体を張ったことをやっていた。立派だと思う。

親子はジャングルの中で楽しくやっていたが本国イギリスの方では家に残った母親が危篤の状態、遺産相続の話が持ち上がってなんとしてでも娘を連れ戻せと老けメイクのリナ・ロメイ(ジェスのミューズ)が捜索隊をジャングルに派遣する。一方、王国の方では部族の血の気の多い若頭的な女の人が女ターザンの平和的な統治方針を気に入らず、そのうち寝首を掻いてやろうと秘かに企んでいた。果たして行く先々でセックスするばかりで全然人探しをしているようには見えない探検隊は女ターザンを連れ戻すことができるのだろうか。そして部族の内部抗争の行方やいかに。

ジャンルも内容も問わずカス映画を300本ぐらい撮っているジェスなのでジェスといえばこれというトレードマークのようなものをその膨大な作品群に見出すのは難しいが、それでもジェスの良質の作品からはいくつかの特徴を抜き出すことができるように思う。それはひとつに論理的な構成を取らないシュルレアリスムの志向であり、もうひとつは被写体から体温を抜いてしまう乾いた演出、ヌーヴォー・ロマン的な倦怠感にまみれた空気の醸成、そして意外と西欧文明の陰影を捉えた寒々しくも美しい風景ショット、である。

アフリカ奥地のジャングルが舞台という時点でこの『キリマンジャロ・ストーンの謎』にそうした要素がとくに無いことはもうおわかりだろうと思う。一言で言えば、これは全然面白くない映画だ。ジェスの映画の中でもかなり面白くない。しかし、逆にそれが『キリマンジャロ・ストーンの謎』の魅力ではないかと思う。ジェスの良質の作品とは要するにアングラ芸術的な暗さ硬さを持った作品なのだが、『キリマンジャロ・ストーンの謎』は明るくそして柔らかい。女ターザンはアイドル顔で可愛らしく屈託なく快活な性格で好きになっちゃう。対する部族若頭はずっと恐い顔をしたモデル系の美人さんで強い女フェチとしてこれは眼福。これはジェス映画すべてに言えることではあるが、二人とも裸にまったく照れや恥じらいがないところがすばらしい。もちろんそれを完全にお仕事的に捉えるやる気のないカメラもだ。

未開の部族というから人食いでもするのかなと映画的偏見丸出しで見ていたがそんなシーンは一切ない。基本的に平和な映画であり、『ヘル・オブ・ザ・リヴィングデッド』よろしく流用丸出しにも程がある動物記録フィルムの流用により動物がたくさん出てくる点も平和感を増幅させる。だって裸で泳いでた探検隊の女の人が「ワニだ!助けてー!」とか言ってもそのワニの映像は記録フィルムのものなので絶対にワニに食われるわけがないとこちらとしては思ってしまう。その人が探検隊のワイルドイケメンに助けられた直後セックスを始め(忙しいな!)ロマンティックなラウンジミュージックが流れる中で突然ガゼルの記録フィルムが入ってきたりするので吹き出してしまった。ジェス映画のボケは狙いと天然の判別が非常に困難だが、異境で部族の王になった探検家がスコットランド魂に目覚めてキルトを着用するようになり、彼が画面に現れるとバグパイプ音楽が流れるという演出に関しては狙ったギャグに見えたので、実はこれは面白くないだけでジェスにしては珍しい陽性のアドベンチャー・コメディだったのでは?という疑惑が浮上する。ロープアクション演出のゆるさや唐突すぎる悲劇オチももしかすると観客を笑わせようとしてのものだったのかもしれない。

そのような目で見れば俄然興味深く見えてくるこの一本。そうでなくてもアフリカ奥地では間違いなくロケしていない南欧的のんびりバカンスムードには悔しいがわりかし癒やされてしまったので、面白くはないがそう悪くない映画なのかもしれない。それにしても、今回買ったDVDはSHRIEK SHOWというレーベルのものなのだが、中古かと思ったら未開封品みたいだったので中にメーカーの宣伝チラシが入っており、『ごくせん』とか『るろうに剣心』のアニメ版も同じメーカーからDVDがリリースされていることが確認できた。同じメーカーとはいえ別レーベルならそういうこともあるのかもしれないが、他に出してるDVDがジェス映画とか『サンゲリア』とか『殺し屋1』とかなのに『ごくせん』と『るろうに剣心』って。そこは客層がほぼ絶対に被らないと思うのだが・・・さすがジェス・フランコ作品、汲めども汲めども謎は尽きない(どうしてこんな映画が日本でビデオリリースされていたのかも謎)

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Twitter→@eiganiwaka