【ミニミニ特集】チャチャチャ!オモチャの映画10選+1!
バービー人形を映画化した『バービー』がワーナーの興行収入記録を塗り替える世界的大ヒットを飛ばしたこの夏は、その影に隠れてあまり目立たなかったがこちらも同名オモチャを映画化したシリーズの最新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』も公開され、じつはオモチャ映画が映画業界を席巻した夏だった。
オモチャ映画、イイですねぇ~。いくつになってもオモチャ大好き。かの藤井聡太さんも子供の頃は知育オモチャで散々遊んだと言いますからオモチャで遊ぶのは人間がちゃんと育つために大事なこと、いやいやそれよりもなによりも楽しいことです。ということで今回はオモチャ映画の傑作名作秀作思い出作たちを10本、加えて前の特集でもう取り上げちゃったけどオモチャ映画といえばこれは外せないという『トイズ』レビューを再掲載。なにかと物騒で殺伐とした世の中、ときにはオモチャ映画で童心に返ってすれたメンタルを浄化したいものです・・・ということでどうぞ!
LEGOⓇムービー
なんでも作れる夢の世界レゴシティで完全無個性の建設作業員として働いていた主人公。「みんなと同じって楽しいな♪」のディストピアソングを朗らかに歌い今日もみんなのヒーローお仕事社長の命令でビルの建設に勤しんでいたが、そこに謎の美女が現れたことから作業員はこれまで考えたこともなかった大冒険へと旅立つことに。やがて明らかになる世界の真実とお仕事社長の野望。はたして作業員はレゴ世界を救えるのか!
現在公開中の話題作『バービー』やオープンワールドゲームを題材にした秀作『フリーガイ』に間違いなく多大な影響を与えた、21世紀のオモチャ映画クラシック。想像力の赴くままになんでも自由に組み合わせてなんかよくわからないものを作れるレゴブロックのコンセプトを見事に落とし込み、全編デタラメなギャグとパロディとアクションと空想の疾風怒濤、バットマンにスターウォーズまで登場して笑わせたかと思えば、その下地には(文字通りの意味で)なんでも型に嵌めようとする想像力のない大人とデタラメに遊ぶ中で何かを創造しようとする子供の対立という普遍的な物語がしっかりと根を張っている。レゴブロックで遊ぶこと、ひいてはオモチャで遊ぶことの力をこれだけユーモラスに教えてくれる映画というのもないんじゃないだろうか。
(さわだきんた)
ドラえもん のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)
自分の話で言えば小学生の時に『となりのトトロ』と同じぐらいビデオテープで繰り返し観たのが、この『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』(1993年)!ドラえもんが結構序盤に再起不能になってしまうという、子供にとっては恐怖でしかない展開に目が離せない素晴らしい映画となっている。
最近のドラえもん映画は見ていないので何とも言えないのだけど、初期のドラえもん映画は便利なひみつ道具がいざという場面で使えず、のび太たちが自分たちの力で困難を乗り越えなければいけないというストーリー展開が大きな魅力のひとつだった。この映画でもドラえもんが物語の序盤で何者かに攫われ、のび太とその仲間たちだけ、しかもひみつ道具無しでブリキの兵士たちと戦わなければいけないという展開になってしまう。のび太たちが自分たちの知恵と勇気だけで戦い抜こうとする姿には思わずグッときてしまう。
ストーリー展開もなかなか過酷ではあるのだけど、ビジュアル的にも結構怖い!冒頭の深夜のテレビ画面の砂嵐もなかなか不気味だし、デカいアフリカの仮面みたいな迷宮の入り口もかなり怖い!そしてブリキの兵士の可愛らしさと対照的なえげつない拷問シーンも…。ブリキの戦闘機による襲撃シーンも驚くほどリアルだし、子供の時にこの映画を観てトラウマになったという人は多いのではないだろうか。 ロボットによる人間の支配という藤子・F先生らしいSF的テーマ設定、そしてピンチを中盤でひっくり返すような鮮やかなストーリー展開、そして手に汗握る戦闘シーンは今観ても素晴らしい。終盤はブリキのおもちゃをテーマにした作品らしく、子供っぽくコミカルに終わるところもニクいね!
そしてなんとテーマ曲を歌うのはなんと若き日の島崎和歌子。歌詞が映画の内容とあんまりあっていない気がするけど、最後のエンドロールまで見逃してはいけない!ブリキのおもちゃと少年兵の戦い!オススメ!
(ぺんじん)
チャイルド・プレイ2
オモチャ界きってのスラッシャー殺人鬼チャッキー大活躍の二作目はチャッキーの暴虐度合いもアップしたがオモチャ感もしっかりアップ、壊れたチャッキーをオモチャ工場の人が修理して再び出荷してしまうチョンボでは済まない大チョンボをやらかすアヴァンタイトルにワクワクさせられるがいやそんなもの捨てろよ!直すなそして出荷するな!
恐ろしいが邪悪な遊び心に溢れた人形殺人鬼というチャッキーのキャラは前作で確立されたので今回は詳しい説明などなく次々と人をジョークのような方法でぶっ殺していく。これが楽しい。前作のような緻密なサスペンスやダイナミズムは若干薄れた分、チャッキーのキャラクターが前面に出ており、後のブラックユーモア路線の萌芽が見えるのも注目ポイント。チャッキーの目的は相変わらずアンディくんの肉体だ。アンディくんの肉体を乗っ取るためにチャッキーが選んだ儀式の舞台はオモチャ工場ってわけでクライマックスはいろんな仕掛けとパッケージされたグッドガイ人形ででいっぱいのオモチャ工場での攻防。子供の頃、ここが大好きでビデオで何度も見てたなぁ。ちょっとコワイくて楽しいオモチャ映画です。
(さわだきんた)
キラー・ホビー オモチャが殺しにやってくる
クリスマス・ホラーの人気(なのか?)シリーズSilent Night, Deadly Nightのシリーズ最終作はタイトル通り殺人オモチャが群れを成して襲ってくる映画だ。殺人オモチャだけではない。殺人ロボットも襲ってくる。もしかすると殺人ロボットサンタが暴走する今年のクリスマス・ホラー話題作『クリスマス・ブラッディ・クリスマス』はこの映画からインスピレーションを得ているのかもしれない。
殺人オモチャの襲撃というアイデアは大変いいのだが物語の方は全然関係ない不倫話とかに脱線してなかなかオモチャが暴れてくれないのでぶっちゃけあまり面白い映画とは言えず、殺人オモチャも殺人オモチャというか・・・見た目的には普通の可動オモチャが主人公のキッズに向かって普通に歩いてくるだけみたいな・・・まぁこの書きっぷりから内容に関しては察してくれと思うのだが、とはいえいろんなオモチャが動くのは楽しいし、殺人ロボット(これも大して動かないが・・・)まで出てくるのだからそう文句は言えない。クリスマスの夜に無邪気なキッズが見る悪夢のような映画、ということにしておこう。
(さわだきんた)
ジングル・オール・ザ・ウェイ
『ジングル・オール・ザ・ウェイ』というタイトルの通りにクリスマス映画なのだが、本作は仕事人間のシュワちゃんが息子のクリスマスプレゼントのために超人気ヒーロー・ターボマンのオモチャを手に入れるために奮闘するという映画である。お話は全くそれだけで90分の間にストーリーが脇道にそれることはない。プロデューサーのクリス・コロンバスは『グレムリン』や『グーニーズ』や『ホーム・アローン』に関わった超一流のちびっ子向け映画の第一人者で本作もそれらの作品と同様なコメディ映画である。
お話としてはダメ親父なシュワちゃんが子供のためにオモチャをゲットして、大人として父としての信頼と威厳を取り戻すというものなのだが、面白いことに主役のシュワちゃんをはじめ本作の登場人物は全員大人げない。人気オモチャを手にするためにあの手この手で他人を出し抜こうとする浅ましさや必死さ、それらがあくまでもちびっ子向けコメディの範疇を出ないように描かれるのである。何なら手段を選ばぬオモチャゲットに血道を上げる大人たちよりも黙って待ってる子供たちの方が大人に見えてしまう構造にもなっている。でもそこが面白いよね。子供のためならいくらでもエゴを出して醜い争いに身を投じる大人たち、それはもちろん家族への愛ゆえになのだがその愛が争いを生むという物語でもあるのだ。
モチロン、本作は家族揃って安心して観られるコメディ映画なので最後は綺麗に着地するのだが、人気オモチャを巡る狂騒曲に巻き込まれた大人たちがまるで子供のような低レベルな争いを繰り広げる様はおかしくも情けない批判精神に満ちていると思う。オモチャの存在意義という面でも子供からのものと大人からのもので異なる目線があり、子供が観るのと大人が観るのとでは全然印象が異なる映画でもあろう。
(ヨーク)
ピーウィーの大冒険
見た目は危ない大人、頭脳は危ない子供な謎の中年ピーウィー・ハーマンが盗られた愛車(自転車)を探してアメリカ横断大冒険!監督ティム・バートンの実写作品としては最初期にあたるこの映画、ピーウィーのキャラもあまりに特濃だがバートン汁もまた特濃、冒頭のピーウィーハウスからしてものすごい。ゴジラだの飛行機だのクルマだののオモチャで溢れかえるピーウィー寝室のベッドでウヘヘッウへへッと跳ね回りながらオモチャと戯れる謎の中年ピーウィーの絵面は異常なインパクトだが、ピーウィーダイニングに降りるとそこにはカラフルなピタゴラ発明品がでーんと置かれてガチャガチャと朝食を作っているのである。出来上がった顔の形をしたベーコンエッグに話しかけるピーウィー。「シリアルが食べたいヨー」「よし、シリアルだな!グフフ!」。
完全にヤバイ人なので引くが、とにかくこの隅から隅までカラフルで遊び心いっぱいのオモチャで溢れ、街に出れば一輪車や前輪だけ大きいサーカス自転車などイロモノ自転車が通りを走り、首長竜のモニュメントのシーンではカートゥーン風アニメも駆使するその稚気むんむんの映像世界はあまりにも魅力的だ。ちなみにピーウィーを演じたポール・ルーベンスは今年2023年の7月30日に亡くなった。合掌。
恐怖人形
日本人形こと市松人形は何かと心霊話の題材となりやすい。持ち主が死んでしまった、髪に人毛が使われている、特に謂れがないのに祟ってくるなど、市松人形というだけで恐怖を喚起させる存在だ。実際の市松人形は愛らしいと思うのだが…!
今作は、市松人形を唯一無二の友人としてサマーキャンプにも連れて行った少女が、子供のいたずらにより眼の前で人形をキャンプファイヤーされたことによる一連の復讐劇となっている。とくれば、貞子よろしく呪いによる心臓発作や『ファイナル・ディスティネーション』のようなピタゴラスイッチ死、はたまた黒沢清『花子さん』における存在の消滅などが祟りとして思い浮かぶのではないだろうか。ところがどっこい、中盤から画面に映るのは斧、包丁、縄など手を変え品を変え、挙句の果てにチェンソーを振り回して血しぶきを浴びる2メートルほどの巨大市松人形。抱きかかえるほどの大きさだった市松人形が段々と大きくなっていく様は、怖さよりも笑みが溢れる。無表情で淡々と人間を物体に変えていく巨体。恐ろしいはずなのにどこか笑ってしまうのは、キャンプ場と巨大な市松人形の取り合わせゆえ。恐怖の2乗を果たすはずが機能していない。
実は本作、心霊の皮をかぶった『13日の金曜日』ミーツ『悪魔のいけにえ』!参加したら十万円の報酬に釣られてコテージに集められた品行不方正な若い男女たちが、惜しげもなく命を散らす。誰が生き残るのか、登場人物の言動ですぐに理解できるので気を楽にして見ることができるだろう。序盤で唐突に絡んでくる心霊研究者の存在も、物語を混沌で彩らせる。呪いを身に受けるために市松人形の四肢を縛ってスタンガンを当てるという映像は、凡百の心霊作品ではお目にかかれない。そして、巨大化して物理で祟るのも少女を思うゆえの行動だろうと許容しながら見ている諸兄は、終盤で驚愕の事実を目の当たりにする…!これが許せるかどうかで本作の評価が変わるような気がするが果たして…。
(散々院 札子)
G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ
同名アクショントイを映画化したシリーズのリブート版。キャスト、設定は一新され以前の映画化作品である『G.I.ジョー』『G.I.ジョー バック2リベンジ』とは関係が無い。以前のシリーズではスパイ映画的な色合いが濃かったG.I.ジョーだが今回はライバルのストーム・シャドーとジョーの因縁を描くエピソードゼロ的なストーリーのため、ファンタジックなトンデモニンジャ映画として全面展開。富士山の見える成田飛行場に降り立ったジョーが向かったのはニンジャの盟主が収めるニンジャ城、もともと地下闘技場でファイトマネーを稼ぐ荒んだ生活を送っていたジョーだったが、おめーの力が必要だということでストームシャドーにスカウトされ日本へとやってきたのである。
そこで待ち受けるカンフー映画風の数々の試練や人智を超えた神の巨蛇、そしてヤクザとの抗争!アクションコーディネーターは谷垣健治だけあって迫力よりもケレンを重視したアクションの数々は楽しく、煙玉や隠れみの術などなどハットリくんで見たことのある忍術は楽しい。日本語ネオンがピカピカするエンドロールもノリノリで、リアル日本ではなくあくまでもオモチャファンタジーの中の日本の物語であることを理解できる人ならば大いに楽しめるに違いない。
(さわだきんた)
スモール・ソルジャーズ
スモール・ソルジャーズ──タイトルを聞いてもピンとこない人もいるかもしれない。しかし一目見れば絶対に見たことがあるはず。何となく世間に忘れ去られた風のスモールソルジャーズたちは、国道沿いにあるハローマックの名残の靴屋的な切なさを彷彿とさせる、まさしく大人になったら忘れ去られるおもちゃのような映画だ。
しかし侮るなかれ。ジャケの時点で哀愁漂うキャラたちが切なエモいだけの作品ではなく、天才ジョー・ダンテの才能が大爆発したとんでもない傑作なのだ。まずオープニングから視点移動の滑らかさで誰もが只者でないと思わさせられること必至。ハイテンションにテンポよく展開されていく中で、『ホステル』ばりにさりげない伏線が回収されていく構成の妙!そしてやはり、哀愁漂うキャラクターたちの表情。こんなん愛してしまうに決まってんだろ!ここまで来ると猫が出てくるだけで「ああ、そう言えば最近の映画って本物の犬とか猫とかってあんま出なくなったなぁ」としみじみ感動してしまう。
映画とは何か?という問いに答えはないが、スピルバーグがきっかけでハリウッドに呼ばれたダンテやヴァーホーヴェンの作った作品たちを観るたびにはこれこそが映画だと強く感じる。
(二階堂 方舟)
くるみ割り人形(1979)
ホフマンの原作よりもチャイコフスキーのバレエ作品として知られる『くるみ割り人形』をこの頃児童アニメに力を入れていたサンリオがストップモーション・アニメで映画化。ストップモーション・アニメといえばアート的な印象も強いがこの映画は徹底してキッチュでアートの真逆、どのくらい真逆かというと大橋巨泉がゲスト声優として登場しご本人による『11PM』的トークを繰り広げたり歌謡番組のパロディが始まったりするぐらいだ・・・ってそれ子供は楽しいのか!?
とにかくキッチュな映画なので人形たちの造型などきわめて漫画的、演出は当時のテレビアニメ的で子供騙しのハッタリが多く、アート的もしくは映画的な「名作」といったものとは程遠い。しかし・・・だからこそこれは夢のようなオモチャ映画だ。子供たちの家にあるような民芸品的暖かみのあるオモチャたちが所狭しとひしめき悪趣味一歩手前の絢爛豪華なドールハウスで踊ったり、ガチャガチャと火薬を爆発させて戦ったり、大橋巨泉ごっこをやったりするのである。とくに色とりどりのお菓子の舞い踊るお城のシーンなんか見ていて涙が出てきてしまう。これが子供の夢でなかったらなんなのか!
サンリオ作品なのでキティちゃんとキキララも特別カメオ出演、唐突な実写バレエの挿入なども楽しい、サンリオ入魂の一作。
(さわだきんた)
トイズ
クリスマスといえばオモチャということで『トイズ』なのだがオモチャ工場を舞台にしたこの映画、子供の頃にビデオがすり切れるほど見た。何が楽しいってクライマックスのオモチャバトル。オモチャ工場を軍事転用して兵器オモチャを作ろうとする新経営者を追い出すべく工場創業者の息子ロビン・ウィリアムズがオールドスクールな動くオモチャたちをかき集めて兵器オモチャ相手に戦争を始めるのだが、そのミニミニスケールのカタストロフィーは幼き日を俺を完璧に魅了した。画面を埋め尽くす色んな種類の動くオモチャたちと破壊、破壊、破壊!当時はそんなことは考えていなかったかもしれないがシンバルを鳴らすお猿オモチャが兵器オモチャをシンバルで挟んでやっつける場面など、力なき者たちの決死の抵抗といった趣で実に痛快かつ泣けてしまう。
それ自体がオモチャのようなオモチャ工場のカラフルで奇抜なビジュアルは楽しく、MTVを利用して監視の目をかいくぐるアイディアなど、映像的にもシナリオ的にも遊び心がいっぱい。ロビン・ウィリアムズのオモチャ大好き無垢大人も見事にハマって、ハンス・ジマー&トレヴァー・ホーンという今からすれば夢のようなタッグのキラキラ80sサウンドトラックがオモチャ戦争を盛り上げる。監督バリー・レヴィンソンの個人的最高傑作だ。
(さわだきんた)