MOVIE TOYBOX

映画で遊ぶ人のためのウェブZINE

こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.14 『TUBERKULOSE』を買った

DVDの裏ジャケを見るとシリアルナンバーが振ってあってこれは30枚中の15番らしい。30枚限定生産とは超ハイブランドな販売戦術である。ただこのソフトはたぶん売価2000円ぐらいだったので30枚売り切ったところで利益はミリ単位も出ないだろうと思われるが。まぁ利益とかそういうことじゃないね、せっかく映画を作ったからには30枚だけでもDVD焼いてみんなに見てもらいたいということだろうね。そうとなればこちらもサルベージしないわけにはいかない。将来的にこの映画の監督が超有名人になる可能性は限りなくゼロに近いゼロだとしても、万に一つそうなった場合には手元に置いておけば高騰して億万長者になれるかもしれないわけがない。

それにしても買ったはいいがどこの国の映画なのかすらわからない。何語がわからない文字の羅列の下の方にDeutschとあるがこれがヒントだろうか。で・・・でぅっち?学の無さが沁みる。デンマークかなと思ったがGoogle先生に尋ねるとドイツということであった。でぅっちの下にはジャンルと読める欄がありこれはわかりやすい、スプラッター、トラッシュ、コメディとある。自らトラッシュを名乗っている映画などろくなものはないが、とはいえジャケ裏にはドロドロ血で縁取られた画像がたくさん載ってるから血は出てくれるに違いない。血が出てくれれば内容などなんでも構わないだろう。そういうホラー映画ファンの甘やかしが世界中の自主ホラー映画監督をダメにするんだ!

特典は何やらいろいろ入っているらしいが英語字幕はついていないので本編を見始めたはいいが何を言っているのかわからない。最初のシーンは二人の男が酒を飲んで酔っぱらっているというもの。これが最初の犠牲者かもしれん。ホラー映画に出てくる酔っぱらいは死ぬものだ。あるいは腐ってるか放射性廃棄物でも入った酒のせいでゾンビにでもなるのだろう。しかしそうはならずしばらくグダグダと飲み続けるシーンが続いたのちまた別の二人の男たちのシーンになる。ここに登場するビン底メガネの男は階段を上る時に上半身を大きく前後に揺すりながら歩を進めていた。ははぁ、さてはふざけているな?

案の定であった。それからビン底メガネと長髪男の何を言っているのか全然わからない座り会話シーンが続き、ビン底メガネがエロビデオを見ながらオーバーにリアクションするシーンなどになるのだが、そこではビン底メガネがアドリブで次々におもしろいことをやってしまいカメラを兼ねる監督の笑い声をマイクが拾ってしまう。その音とシーンをあえて編集で残す監督の意図は明白だろう。暇な若者どもが仲間内でのおもしろいことを記録する終末映画ならぬ週末映画である。

週末映画にルールなどないので今度は山でオッサンがキレて何か叫びまくっているだけの意味不明なシーンになるが驚いたことにそこで発覚するのはヨーロピアンビスタのアスペクト比を作るためにどうもカメラ側で操作しているのではなくフード上下に紙かなんか貼って物理的にマスクをしているらしいことだった。その証拠に画面下部はマスクが取れてマスクの向こうの風景が横一直線に映り込んでしまっている。そもそも物理的にマスクを作るという発想がなかったので一瞬感心してしまったが冷静に考えればカメラ側でアスペクト比を変えればいいだけなので意味がわからない。再びシーンが変わると今度は監督の友人と思われるやたら迷惑に叫ぶ男がドライブスルーでファストフードを買うドキュメンタリーの場面になるので意味とか求めても仕方がないのだろう。

それにしても血はいつ出るんだろうか。もう40分ぐらい一切内容を理解しないまま週末演芸を見せられているが一向に殺人鬼とかゾンビが出てくる気配がないし、監督の友人がドライブスルーでファストフードを買うだけのドキュメンタリーパートが入ってくるぐらいなのでこれから惨劇が始まるぞという予感が少しもない。隙あらばあぁまたビン底メガネのおもしろいアドリブのシーンだ。と思ったら今度は無駄に声のでけぇ飲んだくれDVオッサンが死んだ表情の妻に当たり散らす不快な貧乏家庭コントか。なんでもいいが早く誰か死んでくれないだろうか。

途中何かに覚醒した山のオッサンが斧で誰かを殺すシーンもあったがまぁとにかくそんな調子でこれを映画と呼べるのならば映画は進みラスト5分ぐらいになってようやくDV家庭の不幸な息子が悪魔に覚醒して父親惨殺、そういえばあのビン底メガネはどこへ行ったんだろう、山のキレたオッサンはなんだったんだろう、監督の友人がドライブスルーでファストフードを買うドキュメンタリーパートのどこがおもしろいと思ったんだろう、山のように不燃性の疑問を残して映画は呆気なく終わってしまった。なんだかよくわからないがおそらく酒に呑まれるとろくなことにならないとかそういうことを群像劇的なスタイルで表現しようとした映画なんじゃないかな。こんなもん円盤焼くな。

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com