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特集

【ミニミニ特集】さよなら今年こんにちは来年!大晦日に見たい映画10選!

お疲れ様でした!今年も例年通り激動の2023年、みなさん本当にお疲れ様でした!いやぁ、疲れた疲れた!あー疲れた!2023年とっても疲れた!よし、映画でも見るか!体の垢は風呂で落ちる!家の垢は掃除で落ちる!だが心の垢はなかなか落ちない!そんなときこそ映画だ!なにかと忙しない現代だが、2時間ぐらいイスかなんかに座ってぼんやりと画面もしくはスクリーンを眺めていれば心の疲れも傷みもいつのまにかサッパリ解消!たぶんそうきっとそう!

ということで今年の汚れた心をウォッシュして気持ちよく新年を迎えるべく大晦日に見たい映画を10本を集めました!みなさんどうかよいお年を!ハッピー・ニューイヤー!!

ストレンジ・デイズ(1995)

ロサンゼルス、1999年の大晦日。他人の主観を体感できるVRドラッグのディーラーとして街の底辺を這い回る元警官の主人公は入手したスナッフ(殺人)VRディスクから知人が何者かに殺害されたことを知る。他方、数日前に発覚した黒人解放運動の指導者である人気ラッパーの殺人事件により街は暴動寸前、警察に加えて軍も出動し一触即発の状態が続いていた。謎のスナッフVR、黒人解放運動指導者の暗殺、そして主人公の元妻が情婦となっている巨大レコード会社の社長の陰謀が、来たるべき2000年に向けてお祭り騒ぎのロサンゼルスで絡み合い、年越しカウントダウンの中で爆発する!

製作に加えて脚本にもビグローの元夫ジェームズ・キャメロンがクレジットされているが、製作時1995年から見た近近未来1999年12月31日を舞台に古典的なフィルム・ノワールを翻案したようなプロットは、キャメロンではなく完全に『ニア・ダーク』や『ハート・ブルー』などネオ・ノワールと言うべき作品で当時知られていた監督キャスリン・ビグローの趣味。おそらくビグローはSFにはあまり関心がなかったんだろう、VRドラッグという設定は巧く生かされているとは言いがたく、近近未来ゆえ現実と地続きの未来世界もリアルなのかSFなのかどっちつかずの中途半端な印象を与えるなど、難点は決して少なくないが、それを補ってあまりにも余りあるのはビグローのダイナミックな演出と、一万人以上のエキストラを動員したと言われるクライマックスの暴動とも祝祭ともつかない大群衆によるロサンゼルス街路占拠シーンの放つ、もはやハリウッド映画では二度と再現できないのではないかと思われる異常なまでの熱気と高揚感。

ビグローが後年撮ることになる『デトロイト』と同じくここでもデトロイト暴動がイメージソースとして参照されているように思われるが、暴動演出の凄さでいえば『ストレンジデイズ』は『デトロイト』よりも遥かに上で、和太鼓からイスラム音楽からパンクロックからと多種多様な音が洪水のようにスクリーンに流れ込み『ブレードランナー』のポストモダン街景を10倍どぎつくしたような人人人の雨あられにカラフルな紙吹雪が舞う光景はとにかくものすごい。

POVで撮影された冒頭の強盗シーンなども現在のPOV映画を凌ぐほどの臨場感、ディープ・フォレストも参加したサントラは人気盤、なぜか1990年代ハリウッド最大の失敗作というぐらいに興行的には振るわなかったらしいが、間違いなくビグローの到達点にして最高傑作であるとこれはもう言い切ってしまうしかない。腕っ節の強いリムジンドライバーを演じたアンジェラ・バセットも最高にカッコいい!

さわだ

スイート・チャリティー(1969)

大晦日にはなんだかグッとくるミュージカル映画が観たいよね。そんな人にオススメなのがこの『スイート・チャリティ』だ!元々はフェデリコ・フェリーニの『カビリアの夜』をミュージカル化した作品。そのミュージカルを監督ボブ・フォッシーによって映画化したのが本作だ。主人公はシャーリー・マクレーン演じる、キャバレーのダンサー兼ホステスの女性。のっけから彼氏(と思っていた男性?)に橋から突き落とされるなど、男運も含めてツイていないチャリティ。そんな辛い目に遭っても、前を向いていこうとする彼女の真っすぐな明るさに励まされる。

上流階級の社交界を舞台にした”The Aloof”, “The Heavyweight”, “The Big Finish”3連発の圧巻のダンスシーンを始めとして、歌、独特な振り付けのダンス、ボブ・フォッシーのズームイン&ズームアウトを多用したグイグイなカメラワークは今観てもウキウキする感じで楽しい!チャリティの妄想描写がアゲアゲでノリノリだし、当時のヒッピー・ムーブメントも反映して基本的にはコメディ調で楽しいんだけど、ラストはとても寂しい…。ハッピーエンドバージョンもあるぐらいだしね…。でも人生ってこんなもんだよな…としみじみする感じが大晦日にピッタリな映画という感じがする。『男はつらいよ』シリーズの人情味のあるラストに近いなと思ったりして。

いやぁ『スイート・チャリティ』って本当に良い映画ですね…えっ?大晦日あんま関係無いって…そんな人には鼻の穴に練りわさび詰め込んじゃうぞ♡(テヘッ) ハッピーニューイヤー、ミスターローレンス!(ニコッ)

ぺんじん

カヴァルケード(別題:大帝国行進曲)(1933)

 第六回アカデミー作品賞受賞作品。ロンドンに住むとある中産階級の主婦を中心に1899年の大晦日から1932年の大晦日までを描いた家族ドラマ。恐らくアカデミー賞の中で一番知名度の低い一本だが、見て納得。普通につまらない。原作はノエル・カワードの舞台だが、映画になると尺も描写も足りず、イベントだけかいつまんだ早回しの思い出アルバムって感じである。息子が戦死したことを知る一番の見せ場もエモ不足で全く心が動かない。なんでこれが『一日だけの淑女』を差し置いて作品賞を取れたのか?
 最後の1932年大晦日の場面で、大戦で息子は死に社会は堕落しイギリスの栄光は終わった・・・って総括してる老いた主人公夫婦を見ると、いやいや!これから超特大イベント・第二次世界大戦があるのに何終わった感出してるの!と未来人目線で突っ込みたくなる。(注:1933年の映画です) こないだツイッターで『大正野球娘。』のスレで「でもこれから関東大震災なんだよな」と茶々を入れる「関東大震災兄貴」なる荒らしの話が流れてきたが、この展開ではウチも「第二次世界大戦姉貴」にならざるを得ない!
 しかしながら昨今の世界情勢を踏まえますと、これから第三次世界大戦だってのに2023年の人って呑気だったんだね~って、未来人から笑われる可能性が無きにしも非ず。2024年は少しでも良い年になってほしい(涙)

アタイサン

コンティニュー(2020)

年末年始はとにかく浮かれがちだ。年末は一年の締めくくりで仕事やら何やらから解放されて束の間のひとときを楽しむし、年始は年が明けて目出度いので何かと浮かれる。 しかしッ!年が明けたところで毎日の生活が変わるわけがないッ!新年の目標を立てたところで自分の根本的な何かを変えなければ、達成も何も得られないだろう!

ということで大晦日の夜に見たい映画は、ジョー・カーナハン監督『コンティニュー』!個人的にループものの傑作だと思っている。何度も何度も同じ一日をループして決まった時間で必ず殺されなくてはならないゲーム構造に陥ってしまったフランク・グリロ(生まれ変わったら彼になりたい)が、何度も何度もトライ&エラー&殺人を繰り返すことで自分自身をも変えていく。

この映画の何が年末にふさわしいかというと、ラスボスを倒し、息子との時間を作り、裏ステージともいえるRTAで元妻をも救った後、度重なるタイムループのせいで崩壊しかかっている世界を救うため、グリロがタイムループの機械に自ら入るところだ。お決まりのゲームコースから外れて、どうなるかわからない未来に身をゆだねる。元妻や息子と抱き合うような幸福なハッピーエンドではなく、どこか歯切れの悪いエンディングが、一年の総決算であり新年の前日である大晦日に沁みるに違いない。

ニューゲームに挑むため、捨て台詞を吐きながら自らのこめかみに銃口を当てて自殺するグリロの姿は、明日を生きる元気をくれることだろう。

散々院

トゥモロー・ウォー(2021)

クリスマスの時期に、初の冬開催のワールドカップを行っているシーンからこの映画は始まるので、年末が舞台の映画である。(これが実は後の伏線となっている)

突如、未来人がやってきて、未来では未知の生物と戦争状態にあって兵士が足りないので、過去に戻って徴兵に来ました…というこの映画。クリス・プラット主演でゴージャスで賑やかなシーンが多く、長めの上映時間にアクションにコメディに伏線回収に家族のドラマと、展開がこれでもかとぎっしり詰まっているので、非常に年末向けの映画だと思う。徴兵された兵士たちが未来に転送されて以降は、未知の生物「ホワイトスパイク」との怒涛の戦闘シーンとなるが、このモンスターはどこかの映画で見たような設定が山盛りにされている。大挙して襲ってくる姿はトム・クルーズがエイリアンと戦う映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(時間が関わるこの映画の設定もこれを想起させる)やマット・デイモンが万里の長城で怪物と戦う映画『グレートウォール』を思わせる。実はモンスターは雌の個体が希少で雌を倒せば勝てるかもという展開はクリスチャン・ベールがドラゴンと戦う『サラマンダー』を思わせるし。終盤のある展開はどことなく『エイリアン』『遊星からの物体X』『プレデター2』をも思わせる。

こう言ってしまえばパクリばっかりの映画に思えるかもしれないが、意外とこれらを全部ぶち込み、臆面もなくやり切っているのが、中々の離れ業に思える。アマゾンプライム配信の映画だが、もし入っているならおすすめの一本である。

左腕

ニューイヤーズ・イブ(2011)

ムービー・トイボックスの執筆陣ならきっとマイナーかつ、それを大晦日映画と解釈するか!?と驚くようなチョイスをしてくると思うので、敢えて俺はド直球の火の玉ストレートで行こうと思う。その作品は『ニューイヤーズ・ラブ』である。もうタイトルからしてそのまんまの大晦日映画。内容もニューヨークの大晦日に奔走する人々の姿を描いた群像劇もの。そして監督はコメディ映画で名を馳せたゲイリー・マーシャル。『プリティ・ウーマン』の人ですね。

これがねぇ、もう実に大したことがない群像劇で、実に他愛のない映画なんですよ。でもそういうのもいいんじゃないかな。一年の最後の日に、日付が変わったら内容なんてすっかり忘れちゃう映画を見て、その年のことは水に流して翌日からは新しい一年を迎えるという、そういう映画ですよ。大それたメッセージとかは全くないけど、普通の人の悲喜こもごもが描かれていて、一つの街の中に色んな人がいるっていう当たり前のことを軽いコメディとして描いてるだけの本作は戦争がすぐそこにあるような時代にこそグッとくるのかもしれない。境遇の異なる色んな人たちが同時に新年を迎えるっていう、当たり前なんだけどそういうことが描かれる映画ですね。

ま、俺自身そんなに推すほど好きな映画でもない(オイ!)んですけど、むしろこれくらいの何でもない映画ってのが大晦日なんかにはいいんじゃないだろうか。デ・ニーロやミシェル・ファイファーやハル・ベリーといったキャストも豪華でボーっと見てるだけでも楽しいだろう。

ヨーク

クリード チャンプを継ぐ男(2015)

 これのどこが大晦日映画なんだよ!?と疑問に思われる方も多いだろう。大晦日とは単なる12月31日にあらず!古い自分に別れを告げ、新年から新しい自分、生まれ変わった自分として「再誕」を誓う日である!
 その点この『クリード』画面に大晦日要素は一切無いが、流れる血が、汗が、精神が、どうしようもなく大晦日!大根役者スタローンをウン十年ぶりのオスカーノミニーに導き、待ちに待った決勝戦で英国紳士のザ・演技派マーク・マイランスに敗れるという熱い楽屋裏も、どうしようもなく大晦日!縄跳び、ジョギング、懸垂、ニワトリのおっかけ等、ひたすらハードな運動を頑張る主人公アドニス。彼を見ていると、まるで自分の腹にたまったカロリーも見る見るうちに消費されていくような感覚になること間違いなし。熱い修行シーンを見て、デブ・オタクのウチも一念発起!はじめはプランク20秒だったのが、今では90秒できるようになりました!
 みんなも『クリード』を見て、明日からムキムキマッチョの映画ファンになろう。まずは渋谷駅からイメージフォーラムまで走り込みだ!途中の歩道橋はウサギ跳びで階段を登るべし!サボるんじゃないゾ。

アタイサン

サイン(2002)

宇宙人の襲来を前に、家族が最後の晩餐をする。エイリアンの地球侵略をある一家の視点で超局所的に捉えた映画『サイン』のクライマックス。各々好きなものを食おうと食事をするが「スパゲッティ」「フレンチトースト」「照り焼きのチキン」「べーコンたっぷりのチーズバーガー」とにじみ出る生活感がたまらない。日本人なら「寿司」とか「焼肉」とか「カレーライス」とか、そういう物が加わるかもしれない。

こうして一家は最後の晩餐にとりかかるも、訪れるであろう未知の恐怖から、どんよりとした雰囲気に包まれる。一家はクリスチャンなので食事前の祈りを捧げようとする。だが家長であるメル・ギブソン演じる父親は突如怒りだし「何が神だ!もう俺は祈らない、好きに食え!」という。メル・ギブソンは怒り、子どもたちは泣き、そして急に家族たちは泣きながらメシを食い、そして抱擁を交わす。何度みても笑ってしまうが、同時に泣いてしまう。この最後の晩餐に漂うリアリティには脱帽せざるを得ない。シャマラン監督のユーモアとドラマ作りのセンスが詰まった名シーンだと個人的には思う。

家族や一族揃って好きなものを食う。年末にはピッタリのシーンではなかろうか。年末年始に現実の親戚付き合いは煩わしい事も多いが、それも何かの「サイン」としていつか自分を守ってくれるかもしれないので、この映画を見てこの時期を乗り越えたいと思う。

左腕

本日休診(1952)

年末年始ともなると病院のたぐいはどこもお休みで急に虫歯が発覚したりすると大いに焦るものです。しかし戦後庶民はそんなことはお構いなし、「本日休診」の札のかかったご近所クリニックに次々と押しかけ先生そう言わず診てくれよォ~と老いた町医者に強引に自分の都合を飲ませるのでした。タフですね!

井伏鱒二の同名小説を松竹三大巨匠と当時呼ばれた渋谷実(ほか二人は木下恵介と小津安二郎)が映画化したこの作品は『自由学校』『てんやわんや』など戦後復興期の混乱残る日本社会を軽妙なタッチで描いた渋谷の作だけあって貧しくて愚かで身勝手な庶民たちの姿を鋭いカッティングでドライに捉えたホロ苦ユーモア群像劇。戦地でどうにかなってしまい今も戦争が続いていると思い込んでいる男を三國連太郎、ヘタレのヤクザを鶴田浩二、その情婦を淡島千景、車夫を佐田啓二が演じている。

いずれ劣らぬクセモノ揃いの患者たちにはクスッと笑わせられるも、急患第一号が強姦被害者というぐらいなのでユーモアを剥ぎ取ればそこに見えるのは戦後十年弱経過しても未だ貧しく傷つき希望が持てないでいる庶民のリアルと、そんな社会にあってものうのうとのさばり弱者を貪る権力者の姿、そのやるせなさ。

けれども大抵の病気や怪我はしっかり治療をしてじっくり時間を掛ければやがては癒える。これはもう一生ものかと思われた妄想兵士・三國が空を舞う航空兵(鳥)を眺めて「内地へ帰還か・・・」とポツリこぼすラストは、三國の病もついに快方へと向かうのかもしれないと思わせて感動的だ。三國と彼が部隊兵として強引に連れてきた近隣住民たちの見上げる空は未だ暗いが、そこには丸い月が煌々と輝いている。

さわだ

ポセイドン・アドベンチャー(1972)

大晦日にはコタツでヌクヌクしながら、バタバタと人が死んでいく景気の良いパニック映画が観たいよね!そう!そんな人にピッタリなのが、この『ポセイドン・アドベンチャー』だ! 舞台はまさに大晦日から元日を迎えようとしている豪華客船。乗客たちは正装に身を包みながら優雅に新年を迎えようとしていた。しかし、予想外の大津波により豪華客船は転覆し、乗客たちは真っ逆さまになった船内で大混乱に陥ってしまう。そんな中一人の牧師の導きにより、一部の人々は船外脱出を試みるのだが…といったストーリー。

主人公の牧師が野心的なリアリストという所がいかにも上昇志向なアメリカンな感じ。このジーン・ハックマン演じる牧師と対立しながらもしぶしぶ付き合っていくのが、アーネスト・ボーグナイン演じるベテラン刑事。ボーグナインの顔面は相変わらず胸焼けするほど濃いんだけど、このガンガン進んでいく牧師と頑固親父の刑事の対立構造はあんまり見たことがない感じで面白い!普通は逆でしょ! それ以外にも船内を知り尽くした生意気な船オタクの子供、リタイアした老夫婦、独身貴族男性、バンドマンの兄妹など、様々な年齢層、様々なバックグラウンドを持った登場人物たちが協力しながらも船内の様々な難所に立ち向かっていく感じは、テレビゲーム的な要素もあって最後まで目が離せない!

エンターテインメント的でコミカルなシーンも多いんだけど、死体がバンバン映るし、人が死ぬ瞬間もキッチリと描いていて、なかなかえぐみがあって素晴らしい!海上事故の悲惨さを感じるなら『タイタニック』よりも『ポセイドン・アドベンチャー』だ!群像劇がある!上下逆さまになった船内の素晴らしいセットがある!人が呆気なく死ぬ!死体が転がっている!年末年始に見る映画はコレだ!!

ぺんじん

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