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こないだビデマでこれ買った

【こないだビデマでこれ買った】Vol.24 『MANSION OF THE LIVING DEAD』を買った

こないだビデマでジェス・フランコのゆるゆるジャングル映画DIAMONDS OF KILIMANJARO(『キリマンジャロ・ストーンの謎/秘宝に眠る美少女伝説』)を買ったことは前の記事に書きましたが、ジェス・フランコといえばやっぱホラーでしょ、面白いか面白くないかはともかくとして、いや面白くないとしても!というホラー映画ファンは多いのではないかと思われます。それもたしかに一理ある。ビデオバブルの際に日本に輸入されたジェス映画といえば厳密に数えたりしたわけではありませんがおそらくほとんどホラーもの。ホラーといってもゆるすぎるし基本的に何をやってるのかよくわからないのでホラー映画として成立していないこともしばしばではありますが、ともあれジェス自身ホラー好きを公言しているし、ジェス映画といえばとにかくチープでわけわからんホラー映画というイメージはいまだに根強いことでしょう。

ということで今回ビデマで買ってきたのはホラー系のジェス映画、その名もMANSION OF THE LIVING DEAD!なんというゾンビ映画に決まっている英語タイトル。ジェスのゾンビ映画といえば『バージン・ゾンビ/悪魔の死霊軍団』や『ゾンビの秘宝』、ジェスが監督に予定されていたものの撮影途中で謎の失踪を遂げたため急遽ジャン・ローランが代打監督で現場を回したと噂される『ナチス・ゾンビ/吸血機甲師団』などが日本には輸入されたためあまりにも狭い界隈によく知られているが、どうしたことかMANSION OF THE LIVING DEADはそのどう考えてもゾンビ映画でしかない英語題にもかかわらず今まで輸入されておらず、ジェスのゾンビ映画として日本ではあまり知られていないようだ。

しかしこれこそ本当は真っ先に日本に輸入されるべきジェスのゾンビもの。というのもこの作品、DVDのジャケットにもしっかりと大迫力で描かれているようにスパニッシュ・ホラーの代名詞的傑作にしてゾンビ映画界に屹立する異端作『エル・ゾンビ』シリーズをオマージュしたというか露骨にパクった映画なのだ!ジェス・フランコ×アマンド・デ・オッソリオ(当然クレジットなし)の無許諾とはいえ夢のコラボ!『ゾンビの秘宝』などを見る限り明らかにゾンビに興味がないジェスがこともあろうに『エル・ゾンビ』の世界に挑むというのだから、これはゾンビ映画ファンなら必見の作なのだ!

だがまぁ大いに予想されたことではあったがなんか全然そんな映画じゃなかった。レズカップル二組がダブルデート的にオフシーズンの寒そうな海辺のホテルにやってきて乳繰り合ったりしていたがこのホテルはどうも変、従業員の態度が無駄に悪かったり言動が壊れていたりする上になんとなく入った支配人の部屋には首輪でベッドに繋がれた裸の女がいるではないか。動揺する四人の内の誰かだったが繋がれた女の方は至って冷静でいくら逃げろと言っても取り合わずまぁウチらこういうライフスタイルやからねみたいなことを言うので困ってしまう。そうこうしているうちに前をはだけたバスローブ一枚でエロくホテル散策をしていた四人の内の誰かが礼拝所のようなところに足を踏み入れたらそこにいたのはなんと顔面にパイ投げされたみたいな風貌の修道士たちであった。

どうも彼らは異端の秘儀により不死となったような感じでこれがつまりLIVING DEADということなのだろう。DVDジャケットに描かれていた『エル・ゾンビ』風のゾンビとはだいぶクオリティが違うような気がするし全員棒立ちしているだけなので最悪カネがないから役者の代わりにマネキン置いてるだけなんじゃないかとすら思わせるが、邪悪司祭の号令により突然元気を取り戻した顔面パイ投げゾンビ修道士たちは全員で女を強姦したのち冒涜の言葉を述べて彼女を刺し殺す。強姦するとき以外はずっと礼拝所に突っ立ってるだけなので永遠の命とはなんとつまらないものだろうと限りある命が愛おしくなるところだ。

言うまでもなくゾンビ映画としてはカスだがジェスのゾンビ映画代表作は文字通り悪夢みたいな『バージン・ゾンビ/悪魔の死霊軍団』なのでこのMANSION OF THE LIVING DEADも「そういうもの」と理解して見れば結構楽しめないこともない。謎の首輪繋がれ女が象徴するようにサディスティックかつミソジニスティックなこの映画は主人公グループが全員性の自由を謳歌するレズという設定のため、ゾンビ修道士が彼女たちを襲うシーンには姦淫を罪とし同性愛を堕落とするキリスト教倫理に反したことの罰という側面が見て取れ、逆説的かもしれないがそこには自由と適当をこよなく愛するジェスによるカトリック批判が込められていると考えることができる。これは『バージン・ゾンビ/悪魔の死霊軍団』とはまた違った意味で、フランコ政権下のスペインを生き検閲と戦いながら創作活動を続けてきたジェスの見た不条理な悪夢なのかもしれないのだ。

冷たく無機質な撮影は構図がバッチリ決まってカッコよく、BGMの代わりに終始吹きすさぶ風音が冷えた画面を更に冷やす音設計も良い、レズ四人組はいずれもアメリカのホラー映画に出てくる若いチャンネーとかではなくしっかり二回分ぐらい成人済みなので、その熟したボディの放つエロティシズムはなにやらアートの風格があります。『エル・ゾンビ』をパクったのに結果的にどこまでも『エル・ゾンビ』の影響を感じさせない作品に仕上げてしまうジェス・フランコ。この人はやはりおそるべき映画人であると再確認させられるMANSION OF THE LIVING DEADなのでした。

今回買ったDVDはSEVERINから2006年にリリースされたものなので生前のジェスとそのミューズであるリナ・ロメイのインタビューが特典で収録。リナはともかくジェスの言葉などどこまで信じていいのかわかりませんが、本人的にもこれはお気に入りの映画らしい。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com