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【あの映画のあれ】あれ7 『ルックバック』とかに出てくる「統合失調症」

毎度おなじみ有名映画によく出てくるが考えてみたら詳しくは知らないあれを基本的にGoogleで検索して浅掘りするネット時代の教養講座、あの映画のあれ。今回はやはりいろんな人がモヤついているのではないかということで大ヒット公開中の映画『ルックバック』に登場するあれ、統合失調症について調べてみましょう。具体的な病名こそ作中では言及されないものの、主人公たちを襲う殺人犯が統合失調症のように描写されていたことから差別的な表現ではないかとSNSで物議を醸し、原作マンガは後に台詞の修正が行われたわけですが・・・はたして統合失調症とはどんな病気なのでしょうか?

殺人犯が統合失調症のように描写されたことで『ルックバック』は物議を醸したので、まずは統合失調症の人の犯罪率から浅掘りしていきましょう。警視庁の統計によれば精神疾患を持つ人(疑い含む)の検挙数はすべての犯罪者検挙数の中の1%前後のようです。病名別の統計は見当たらなかったので統合失調症の人に限った数値は不明ですが、全犯罪者の1%程度である精神疾患を持つ犯罪者の中の更に何%かということですので、逆に考えれば健常者の犯罪者数は統合失調症の犯罪者数の約100倍。健常者の方が精神疾患を持つ人よりも圧倒的に危険な存在というわけです。

しかし罪名別で見ると少し不穏な傾向も。詐取や窃盗といった主に金銭目的と思われる犯罪の検挙総数に占める割合が1%~0.7%程度であるのに対し、殺人や放火といった他者への危害を目的としていると思われる罪種では10%前後と他に比べて高くなるようです。これはあくまでも統合失調症だけではなく精神疾患を持つ犯罪者全体の統計ですが、おそらくこうしたことから統合失調症患者は犯罪率が高いというような誤ったイメージが生まれているのかもしれません。

それにしてもなぜ罪種に偏りがあるのでしょうか。憶測に過ぎませんが、全検挙数の1%という比率からして精神疾患を持つ人は基本的に犯罪に手を染める心の余裕がないので、犯罪に手を染めるということは相当精神的に追い詰められており、そのため犯罪が凶悪化しやすいのかもしれません。MSDマニュアル家庭版の当該項目によれば統合失調症の人の約20%は自殺を試みており、5~6%の人は自殺を遂げているとのこと。それだけ多くの人が自殺を考えるほど追い詰められることもあるのが統合失調症という病気なのです。

さてその症状はと言えば、これが実に多彩。「陽性症状」「陰性症状」「解体症状」「認知障害」と大きく四つに分類されるようですが、その内容は一見して関連性がわかりにくいところもあり、遺伝性の病気である可能性が高いとされているものの、具体的な発病メカニズムもわかっていないので、将来的に発病メカニズムが解明されればいくつかの症状は別の病気として再分類されたりするのかもしれません。

それぞれの症状を見ていきましょう。まず「陽性症状」はおそらく一般的な統合失調症のイメージに近いもので、幻覚や妄想のこと。実際には鳴っていない音が聞こえたり、実際にはそうされていないのに誰かに電波で攻撃されていると思い込むなどがそれに該当するようです。次に「陰性症状」は感情が平坦になり(感情鈍麻)喜んだり悲しんだりできなくなること。無口になり人とコミュニケーションを取らなくなるのもこれに分類されるようです。

「解体症状」は思考や発言が支離滅裂になることや、場違いな格好や行為を行うこと。電波に攻撃されているというような妄想を語ることも一見すれば支離滅裂と感じられるかもしれませんが、理路整然と妄想を語っている場合は解体症状はなく、思考がまとまらずに文脈がめちゃくちゃになってしまうものが解体症状のようです。「認知症状」も素人目にはそれとよく似ているように思えるのですが、これは集中力が失われ一つのことが全うできず、映画を見てもストーリーが理解できないような状態を指すとのこと。

これら多彩な症状が一挙に押し寄せている場合もあればどれか一つだけということもあるわけで、完全な遺伝性疾患というわけでもなく環境によっても発症する可能性があるというこうした複雑さから、また未遂を含めた自殺率の高さからも、統合失調症がいかに難儀な病気かなんとなく理解できるんじゃないでしょうか。発症するのは高齢者よりも若年者が多く、投薬効果が出やすく予後が良好なのは男性よりも女性。ふーん考えれば考えるほどなんだかよくわからない病気です。

といっても統合失調症は早期発見によって寛解が見込めることが現在はわかっているらしく、おそろしい病気ではありますが、過度に恐れるのもそれはそれで誤りでしょう。治療法は主に抗精神病薬の継続的な投与。ただしこれにも統合失調症特有の困難があり、自らが病気であるという意識がない人も多いらしい統合失調症では、抗精神病薬を継続的に服用してもらうことが難しいケースもあるようです。

知っているようで案外知らない統合失調症。とりあえずこんな感じで病気の概要を頭に入れておけば映画『ルックバック』がもっと楽しめる・・・かな?

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com