【たまに面白い映倫】第28報 『スカーフェイス』と『エイリアン:ロムルス』
〈このコーナーはたまに面白い映倫の年齢区分指定理由や文章表現などを紹介するコーナーです〉
今回取り上げるのはリバイバル公開でR15となった『スカーフェイス』、『エイリアン』シリーズ最新作の『エイリアン:ロムルス』です。引用はいずれもhttps://www.eirin.jp/から。
スカーフェイス
1980年、キューバからアメリカへ渡ったトニーは、マフィアの配下になりコカインの取り引きなどで組織の頂点へと上りつめる。クライム・ドラマ。刺激の強い殺傷・流血、及び常習的な違法薬物使用の描写がみられ、標記区分に指定します。(※劇場再公開向け新版)(2時間49分)
午前十時の映画祭でリバイバル上映されることになったギャング映画の名作『スカーフェイス』は公開時にはおそらく年齢指定が日本ではなかったものの、今回の上映に当たっての再審査でR15に。理由としては「刺激の強い殺傷・流血」もたしかにあるでしょうが、このコーナーでも度々書いているように現在の映倫は残酷描写にはゆるくなった一方で薬物使用の描写には厳しくなったので、主人公トニー・モンタナがコカインで常時ハイになってる(映像もスタッフがハイになりながら撮ったようなハイテンション)この映画などはR指定残当。「常習的な違法薬物使用」という表現からは1回ならともかくお前クスリやりすぎだろ!という担当者のお叱りの声が聞こえてくるようでちょっとおもしろい。
エイリアン:ロムルス
独占企業ウェイランド・ユタニ社の植民地惑星で奴隷労働を強いられているレインは、脱出に必要な冷凍睡眠ポッドを入手すべく、無人の宇宙ステーションに仲間たちと侵入するが……。SFホラー。簡潔な肉体損壊および妊婦にかかわる恐怖演出がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。(1時間59分)
映倫が近年厳しく評価している要素といえば薬物使用の他に社会的弱者に対する暴力というものがある。一口に暴力といってもマジョリティに対する暴力とマイノリティに対する暴力で扱いを変えているのが「いや、暴力は暴力だし誰に対する行為でも犯罪は犯罪だろ!」という気がしてちょっと面白く、この『エイリアン:ロムルス』では単なる恐怖演出ではなく「妊婦にかかわる恐怖演出」と、社会的にも身体的にも弱い立場になりやすい妊婦に対する暴力(恐怖演出というのは要するに暴力行使ということだ)が問題になって全年齢対象ではなくPG12となったようだ。実は『エイリアン』シリーズ作では2012年に公開された『プロメテウス』もPG12となっており、その主要因はエイリアン堕胎手術の具体的な描写があるためだと考えられるが、こちらは指定理由が「殺傷・出血及び外科手術の描写がみられる」ためとある。どっちも同じようなもんだろと思うのだが、指定理由の微妙な違いに、時代の変化が見えて面白いところだ。