【たまに面白い映倫】第29報 『牙狼〈GARO〉 TAIGA』と『遠い山なみの光』
映倫サイトに載ってる審査済み作品の紹介文の中にたまにある面白いやつをサルベージする『たまに面白い映倫』。なんだか久々となる今回はいずれも全年齢指定ながら映倫的問題作を二本紹介。
牙狼〈GARO〉 TAIGA
(1時間41分)
まず間違いなく映倫史上もっとも短い映倫文だろう。引用ミスではない。2025年6月25日時点での話だが、『牙狼〈GARO〉 TAIGA』の映倫文は「(1時間41分)」だけなのだ。G区分すなわち全年齢対象ということは書くこともないだろうが、それにしてもである。まぁ普通に考えれば誤植というか無植で、映倫文はおそらく配給から送られてきた映画の概要文に審査文が付く形になっているので、映倫の担当者がミスってしまったか、あるいは配給の担当者が概要を送るのを忘れてしまったのかもしれないが、外野には知る由もない。
ともかく、『牙狼〈GARO〉 TAIGA』という作品に関して映倫サイトからわかることは、これが1時間41分の映画だということである。『牙狼〈GARO〉 TAIGA』、1時間41分です。
遠い山なみの光
日本人の母とイギリス人の父を持つ作家志望のニキは、長崎で原爆を経験し、戦後渡英した母・悦子から語られる長崎での日々を書き記す。時代と場所を超えて交錯する〝記憶″の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー。被爆者を侮蔑する台詞があるが、作品の時代背景を配慮し、また、製作者に差別を助長する意図はないとみて表記区分に指定する。(2時間3分)
近年の映倫では差別描写も年齢区分を決定する一つの要素になっているようで、基本的には差別語があるからとR指定になることはないように思うが、そうした映画の場合には12歳以下の子どもが鑑賞するなら親の助言があることが望ましいとされるPG12が付くことが多い。対してこの『遠い山なみの光』はG区分であるが、その理由は作品の時代背景に加えて「製作者に差別を助長する意図はない」ため。これはちょっと考えさせられてしまう一文である。
たしかに、製作者に差別を助長する意図のある差別語使用と、その意図のない差別語使用は同列には扱えないとは思うのだが、映画作品の場合にはそれがどちらであるか判断する客観的な根拠を見いだすことが難しく、「製作者に差別を助長する意図はない」というのは主観的な判断に思える。G区分でもPG区分でも全年齢が見られるので大した違いではないとはいえ、審査員の主観的な判断で「差別を助長する意図」の有無を判断し、年齢区分を変えてしまっていいのだろうか?そのような意味で、地味ながら議論を呼ぶ映倫文といえるだろう。