【こないだビデマでこれ買った】Vol.46 『Dinosaur Valley Girls』を買った
夏休みは映画館の稼ぎ時。ということで現在好評公開中なのが『ジュラシック・ワールド/復活の大地』です。子どもの好きなものといえばやはり今も昔も恐竜、夏休みは恐竜博が科学博物館などで開催されるのが恒例となっているし、キッズと親御さんの二人分の料金をふんだくれる恐竜映画は夏休み映画の花形であるのです。
さて、恐竜といえばビデマである。牽強付会がいささか過ぎるような気もするが、でもビデマさんのSFコーナーにはいつ行っても必ず恐竜ものが何本か置いてあるから、まったくのウソというわけでもないだろう。ただこの映画はSFコーナーじゃなくてその向かい側にあるエロ映画コーナーに置いてあった。その名もDinosaur Valley Girls。明らかに恐竜とエロいお姉さんたちが出てくるだけの志の皆無な映画であるが、何気なくジャケ裏を見たらショッキング、他と見間違えようのないカレン・ブラックの顔があるではないか。いったい1970年代ハリウッドのスター女優カレン・ブラックの出演する恐竜エロ映画とはなんなのか?わけがわからなくなったので、そんな映画は買うしかない。
それで見た感想だが信じがたいヒドさで家で見てるのに早く家に帰りたくなってしまった。もちろん1995年公開の作であるからして1993年公開の『ジュラシック・パーク』に便乗したトラッシュであることは劇中でジュラシック・パンクなるカス曲(ちなみに曲調はパンクではない)が流れることからも明白だが、それにしたってカスにも下限というものがあるのではないだろうか。
テレビで悪く言われたことを気に病んだハリウッドのアクションスターが裸の原始女性たちを夢想して博物館に行ったら原始人と恐竜が戦う原始時代にタイムスリップするという展開はまぁいい。良くはないが杓子定規にいちいちダメと言っていたらカス映画は見られない。問題はそこからだ。恐竜のストップモーションがものっそいぎこちないのもトカゲをミニチュアセットの中に入れてデカく見せてるだけなのもバカバカしくていやクラシカルで良いのだが、原始人たちは男族と女族に分かれ住んでいて女族の洞窟に連れて行かれた主人公のアクションスターは当然原始女性たちにモテモテ、ウハウハハーレムを築くというだけのシーンが40分ぐらい続いてしまうのだから俺はどうすればいいのだ。
いわゆるハードコアポルノ到来前のヌーディキューティ映画、上半身裸でおっぱい丸出しの女の人たちがキャッキャしてるだけのソフトコアポルノ映画を意図的に再現しているのはわかる。しかしわかったところで面白くはないではないか。おっぱいとおっぱいの間に差し挟まれるのは『俺たちひょうきん族』みたいな原始人コント。原始人なので意味のあるセリフはなくウガウガ言ってるだけで頭を殴るとポコンと効果音が鳴りおっぱいがポロリするとぼよ~んという音である。恥じらいの概念のない原始人はオナラもたくさんするので隙あらばブー。おっぱい、ひょうきん族、おっぱい、ひょうきん族、おっぱい、ブー、ひょうきん族、ブー、ひょうきん族・・・苦痛である!
昨今トラッシュ系のサメ映画が一部好事家に愛好されているがトラッシュ系のサメ映画はどんなにカスでも一応サメのような形をしていることもあるししていないこともある何かはそれでも出してくれるものである。それにひきかえこのDinosaur Valley Girlsはどうだ、恐竜映像はおっぱいとひょうきん族のブリッジに使われてるだけではないか。一応最後は男族と女族がアクションスターの教えたキスとロマンティックラブによって和解し協力して恐竜に立ち向かうが添え物程度のアクションさえそこにはない。なにも本格的なアクションなんか期待していないじゃないか。えいやえいやと恐竜の着ぐるみに空手チョップを食らわせるとかその程度でいいのに、なぜその労力も割いてくれないのか・・・。
さすがアメリカン・トラッシュ、どんなに雑に撮っても妙に絵になるシーンが出来てしまったりするユーロ・トラッシュとはレベルが違うが、おそるべきはこんな見るとバカになってしまう呪いのビデオのようなトラッシュ・エロに70年代のトップ女優の一人であったカレン・ブラックが出ていて、しかも原始人女族のリーダー役を他の素人役者たちとは格の違う演技力で演じていることだ。『国宝』どころではない凄まじい落ちぶれに愕然としてしまうが、しかしいくら落ちぶれたといっても名作に多数出演のかつてのハリウッドトップ女優、どうしてこんな予算が5万円と飲み屋代しかないような映画に呼べたのかと不思議だったが、監督のプロフィールを検索したら腑に落ちた。
この監督ドナルド・F・グラット、スパイダーマンなどのA級キャラを含むマーベルコミック、およびそのテレビアニメに脚本家として多数関わり、役者としては『卒業』や1976年版『キングコング』に出演(近年では『Yes!プリキュア5』のアメリカ放送自にゲスト声優として参加した)、更に著作は小説やノンフィクション、恐竜図鑑など80冊を超えて、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のノベライズ執筆もかのジョージ・ルーカス直々に任されたという才人にしてハリウッドの影の大物だったのだ。おそらくこうした縁でカレン・ブラックも友情出演的に出てくれたのだろう。こんなゴミとしか言いようのない映画のBlu-rayソフトにしては異常に特典が豊富なのが不思議だったが、それも大物グラットの監督作だからということじゃないだろうか。

いったいなぜ大物グラットがここまでレベルの低い映画を世に送り出すことになったのかは不明だ。その意味では恐竜以上にミステリーを秘めた、考古学的調査の対象となり得る作品かもしれない。なおこの作品、ヌーディキューティものであるにも関わらず乳首露出シーンをすべてカットした全年齢版も制作されているらしく、それもこのBlu-rayには特典として入っていた。ただでさえ見るべきものがない映画なのにそこからおっぱいまで抜いてしまったら虚無でしかないと思うのだがなんなのだろうか。なんなのだろうか?この夏、みなさんも恐竜の神秘だけでなく、Dinosaur Valley Girlsの神秘にも触れてみてはいかがでしょうか・・・。