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ウチだって社会派だぜ!!

【放言映画紹介 ウチだって社会派だぜ!!】番外編④オーストラリア映像博物館(ACMI)に行ってみた!

2025年8月、メルボルンにあるオーストラリア映像博物館に行ってきた。

メルボルン中心部に位置するこの施設は、オーストラリアの国立博物館であり、映画・テレビ・ゲームなど映像文化全般を扱う施設である。(略称:ACMI)

博物館の外観はこんな感じだ。随分オシャレな文化施設である。入場は無料です。

施設内には展示エリアのほか、カフェ&バー、ギフトショップ、シアターが併設されている。メルボルン・シネマテークなる会員制の上映会もあるそうだ。

映画館での2025年の上映作品はというと、メキシコ映画特集(1月に京橋で上映されたものとほぼ同じ)、チェコの巨匠フランチシェク・ヴラーチル特集、ジョン・M・スタール特集、さらには1970年代オーストラリア映画特集やオーストラリアの女性アニメーター紹介まで、なかなかマニアックで気合の入ったラインナップである。

掲載されている特集解説文も主張が強く、読み応えがある。せっかくなので一例をご紹介。
※訳はChatGPTによもの。

1975年は、オーストラリアの政治、文化、社会生活における分水嶺の年であった。それはまた、オーストラリア映画の「ルネサンス」における重要な瞬間でもあり、第二次世界大戦後の長きにわたる散発的で、ときに事実上存在しなかった長編映画制作の時代と、1975年にオーストラリア映画委員会(AFC)が設立され、同年のピーター・ウィアー監督『ピクニック at ハンギング・ロック』の成功を契機に訪れた映画製作の相対的な活況とを分ける節目としばしばみなされている。

言うまでもなく、当時は文化政策の大きな転換、1972年に選出されたホイットラム労働党政権によって開かれた重要な機会、厳しい経済状況、さらに女性の権利、多文化主義、そして先住民族の主権承認における大きな進展が見られる激動の時代であった。

この重要な年におけるオーストラリア映画を論じる多くの記述は、『ピクニック at ハンギング・ロック』のような作品やその象徴性、あるいはAFCの活動の重要性を過大評価する傾向にある。同時に、この「復興」を後押しするため1970年代初頭に行われた重要な基盤整備を過小評価する傾向もある。しかし、1975年に制作・公開された映画の並外れた多様性、そしてそれらがこの転換期のオーストラリアについて私たちに語りかけるものには、疑いの余地がない。

今シーズンは、1975年に公開され、その出来事を振り返る長編映画、ドキュメンタリー、実験映画といった多様な作品を集めている。労働者の権利の遺産、都市部で芽生えつつあったサブカルチャー、ようやく認識され記録され始めたクィア・アイデンティティ、そして土地の伝統的所有者への劣悪な扱いといったテーマを多くの作品が浮き彫りにしている。50周年を記念する今シーズンでは、スキャンダラスな『ピュア・シット』(1975年)や象徴的な『サンデー・トゥー・ファー・アウェイ』(1975年)といった名作に加え、あまり知られてはいないものの同様に重要な作品も多数上映する。また、ホイットラム政権の悲劇的な解任を描いた初期の映画的省察であるエッセイ風ドキュメンタリー『ノーヴェンバー・イレブン』(1979年)と『エグジット』(1980年)も含まれている。

It’s Time: Australian Cinema in 1975より( https://www.acmi.net.au/whats-on/melbourne-cinematheque/australian-cinema-1975/)

さて、気になるメルボルン・シネマテークのお値段は以下のとおりである。

・ミニ会員:購入日から3週間有効・・・一般料金36ドル(約3,400円)
・年間会員:196.5ドル(約18,750円)
・フレンズ・オブ・シネマテーク(追加特典あり):325ドル(約31,000円)
※2025年8月現在のレートで換算。

正直「なんか地味に高くね?」という印象だが、年間会員だとシネマヴェーラ約19回分である。日本よりも物価が高いオーストラリアの状況を考えれば、むしろ良心的な価格といえるかもしれない。

・・・そう考えると、京橋のフィルムセンターで一本520円というのは、あまりにも破格すぎるのではないだろうか。


さて、映画館の説明はこのあたりにして、展示の紹介に移ろう。

本施設は映画博物館ではなく、あくまで「映像」博物館である。そのため知名度のある名作に焦点を当てるというよりも、むしろ制作のプロセスに迫る技術的な展示が中心となっている。映画・映像制作の全体像を一望させる、といった趣である。

特徴的なのは、ゲームと映画が並列に論じられている点である。

たとえば、撮影セットの模型の隣にはゲーム『Hollow Knight』のステージデザイン資料が置かれており、「空間設計」という観点で両者の共通性が示されている。このようにメディアを横断した展示こそが、本施設の見どころの一つと言えるだろう。

特殊メイクもしっかりフォロー
好きな作品を並べて君だけの映画史をつくろう!のコーナー
アボリジニと映像の歴史を論じたコーナー
『ピアノ・レッスン』で撮影に使用されたピアノ。
テレビが置かれたリビングルームの変遷が早わかりできる模型。かわいい。
「かたつむりのメモワール」で撮影に使われた人形・セットの展示があった。間近で見れて感激。
話題となった『Cuphead』の立体ゾートロープ。音楽に合わせて超高速回転します。すごいけど、オーストラリアとは関係がない。

さて・・・ここまで来て気になるのは『マッドマックス』はどうなの!?『マッドマックス』の展示はあるのっ!?という点だろう。(私だけですか?)

結論から申し上げますと・・・『マッドマックス』の目ぼしい展示は存在しない。ほぼ”ノーマックス”と言えましょう。

一応『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で使われたインターセプターのレプリカ展示はある。しかし省スペース仕様で、なんと車体の左半分は別の映画で使用された車のレプリカになっているという、前代未聞の構造である。

『マジンガーZ』のあしゅら男爵を思い出した。資料的価値は皆無だろう。

前述のとおり、この博物館は一本一本の映画を大きくフィーチャーするものではない。『マッドマックス』ですら「カーカルチャー」という文脈の中で一例として触れられるにすぎない。(スチル展示も別の映画であった)

瓶の底に残っているわずかなマックス要素

その中で、『マルコム/爆笑科学少年』(1986)がオーストラリア・ニューウェーブの一本として大きく取り上げられていたのは異例の扱いである。そんなにメジャーなのか?この映画。

子供部屋おじさん版ホーム・アローンみたいな映画です。

『マルコム/爆笑科学少年』

機械いじりが大好きな自閉症の青年マルコム。母を亡くし一人暮らしをしていたが、家賃のために下宿人を受け入れることになる。やって来たのは前科者のフランクとその恋人ジュリー。まったく正反対の二人と一人による奇妙な同居生活が始まる。

粗暴なフランクと内向的なマルコムは次第に親交を深めていき、やがてフランクはマルコムの特異な才能に目をつける。そして特製の「犯罪ロボット」を作らせ、銀行強盗を画策するのだが・・・。


展示エリア後半はゲーム産業がメインである。

ここで、オーストラリア発のゲームを挙げると――『Hollow Knight』、『Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~』、『Cult of the Lamb』、『Florence』、『Unpacking』

・・・近年のインディーゲーム界を代表する作品がずらりと並び、圧倒される。

どの作品も「オーストラリアらしさ」がほとんど感じられないのが逆に特徴で、もはやオーストラリアっぽくないことがオーストラリア産ゲームの個性と言えてしまいそうである。

ゲームが遊べる体験型コーナー

いまのところ、オーストラリアは「ゲームの国」と呼んで差し支えないだろう。映画産業に比べると、ゲーム産業の勢いの方がはるかに勝っている印象を受ける(もっとも、きょうびどこの国も似たような状況ではあるが)

ちなみに、館内のWi-Fiに接続すると所蔵作品(主にレトロゲーム)で遊べるらしい。すげ~~っ!・・・忘れていて結局やらなかったのだが。


ACMIはギフトショップにも力を入れており、前述したゲーム作品のTシャツやアパレルメーカーとのコラボ商品などが販売されていた。せっかくなので、かっこいいTシャツを一枚購入。お値段は・・・8,000円。旅行中でハイになっていないと、まず買えない価格である。

おみやげコーナーも充実。ポスター買えばよかった。
アニメイトメルボルン支店!?

ちなみに、ACMIの公式サイトにアクセスすると、次のような文章が表示される。

ACMIは、メルボルン大都市圏の土地と水路の伝統的な管理者であるクリン族の人々に感謝の意を表し、ACMIがウルンドジェリ族の土地に位置していることを認識します。

ファースト・ネーションズ(アボリジニおよびトレス海峡諸島民)の方は、このウェブサイトに、写真・映画・音声録音・テキストにおいて故人の画像、声、名前が含まれている場合があることにご留意ください。

公式サイト(https://www.acmi.net.au/)より

というわけでなかなか楽しかったACMI訪問。かなりオススメの施設です。

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ゲームって映画よりも面白れぇな~