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【ミニミニ特集】チョコの代わりに映画のギフト!バレンタインに見たい映画9選+ホワイトデーに見たい映画極選1本!

バレンタイン!それは恋人たちの日!本邦ではすっかりみんなでチョコを食べる日という謎のイベントデーと化してしまったわけですが本来はキリスト教由来のよくわからんがとにかく恋人を大事にしようという日だそうです。みなさん恋人を大事にしてますか?え、恋人いない?チョコくれる人もあげたい人もいない?そうか、じゃあ見るしかないな映画を!ということでMOVIE TOYBOXの寂しい識者たちがバレンタイン&ホワイトデーに見たら面白いかもしれない甘い映画ビターな映画なんだかよくわかんない映画を10本チョイス!これさえ見ればチョコなんかなくたってバレンタイン&ホワイトデーもメリー&ハッピーだ!!!

バレンタイン一揆

 このサイトを読まれるような「ツウ」の方は、恐らくバレンタインに素直な気持ちを持っていない方のほうが多いと思うので、あえてストレートな作品を選ぶべきなのかもしれない。
 それで色々考えたのだが、バレンタインでワクワクするのって中学生くらいまでで、そこから先は大半が職場で事務的に渡されたチョコの値段を調べてそれよりちょこっと上回るお菓子を買うことを翌月まで覚えていなければならないというゴミイベントだったので段々腹が立ってきた。しかも「今年からもうやめよう」と全体会議で発信されたにも関わらず、腫れ物みたいにされてる奴が一人だけ強行して、事務感MAXの袋入りクッキー数枚のためにお返しを記憶しなければならないこともあったなオイ。  そんな中、たまたま見かけた本作。クリスマス粉砕デモみたいな感じかと思いきや──。

「カカオ農園で働かされている子どもの多くが、(ガーナの)北部から人身売買で連れてこられています。 ここはガーナの中でもっとも貧しい地域で、民族闘争も頻繁に起きている」
 衝撃的な文言から始まる本作。の予告編。すみません。実はまだ見られておりません・・・。
 とても見たいのだが、なんとこの作品は一般レンタルや配信などはなく、イベント上映に特化した興行スタイルを採用している。そのため見たいタイミングでは気軽に見られない。教育用DVD 18,000円を購入するわけにもいかないので、最寄で上映会があった際にはなんとか駆けつけたい。てかこんな上映スタイルもあるのか。 

二階堂

JSA

チョコをあげるのは女の人、という日本のバレンタイン慣習もMeTooなど昨今の男女平等推進の機運を受けていつまで続くのかわからないところだが、それならこの際バレンタインは男女問わずみんながみんなにチョコを与え合う日にでもしてみてはどうだろうか?ただでチョコをもらえばその相手が男でも女でも性別不明でもとりあえず嬉しい。

その証拠にこの映画『JSA』にはチョコパイの名産地である韓国の兵士イ・ビョンホンからもらったチョコパイを北朝鮮兵ソン・ガンホがキャリア史上最高と思われるニコニコ顔で食べるというシーンがある。 韓国リベンジ派の映画監督パク・チャヌクの出世作となったこの映画は後のチャヌク作品を特徴付ける皮肉や冷たさ、知的遊戯といったものはほとんど見られない。代わりに前面に打ち出されているのは政治と国家の都合で分断されてしまった朝鮮民族の悲哀と友情。

38度線での作戦中に一人北朝鮮領の地雷原に取り残されてしまった韓国側板門店警備兵イ・ビョンホンは見張りに当たっていた北朝鮮側板門店警備兵ソン・ガンホに救われる。以来二人と部下たちは夜な夜な持ち場を離れて密会し中学生の部室のように無邪気な時を過ごすのだが、国家の大きな力は彼らのささやかな友情を容赦なく引き裂いていく。その結末は悲劇的だが、ビョンホンのチョコパイを食べながら見せるガンホの笑顔はいつまでも彼らの中に残り続けることだろう。チョコを贈るという取るに足らない行為も、時として人間を変えるほどの力を持つのかもしれない。

さわだきんた

1秒先の彼女

「バレンタイン」と他人に指摘されるまでバレンタインという行事のある2月を生きていたということと、この国においてバレンタインはお高めのチョコレートを貪り食うチョコレートのための行事ではないことを思い出してしまったのですわ。 他者へ愛情を示すための行事に見たい映画……となれば人が死ぬ映画以外ございませんわ!と意気込んだのですけれど、私もへそ曲がりですので今回は真っ当な甘酸っぱい台湾の恋愛映画をご紹介いたしますわね。

他人よりもワンテンポ早いヒロイン(これがまあ他人事と思えない図々しい妙齢女子)が、すっかり失ってしまった空白のバレンタインデーの記憶を探すことから始まる、数十年ねちねち文通系片思い粘着男子のこじらせ純情の結実模様がまあ甘酸っぱいったらございませんで! 個人的に台湾版「Love Letter」と言っていいでしょう。(そうかしら)(こちらはそんなに好きではない)

台湾には冬と夏の二回バレンタインデーがあるということもこの映画で初めて知りまして、ゆえにこの映画の季節は夏なんでございます。(バレンタインデーの記憶がないヒロインはなぜか日焼けしきっているのですが、その理由を知ると涙がとろとろ出てきますわ!) 謎を提示する彼女パートである前半から、種明かしとなる粘着男子パートな後半までの怒涛の勢いは必見に尽きますわ。作中の雰囲気や作りはどこかレトロポップで、ガールズムービーな装いには満ちていますけれど、SFも染みた恋愛映画としてバレンタインデーに見たい映画でございますわね。 ひとりで膝を抱えながら、仕事を終えた夜に自室でひっそりと。

散々院

ゾンビ・ガール

気になってる人にチョコをあげるイベント、バレンタイン。しかし今回僕ハカタが紹介する映画『ゾンビ・ガール』はどちらかというとチョコをあげる前というより、あげた後の問題を描いたコメディ映画である・・・

主人公のマックスにはイブリンという彼女がいた。一見順調に思える二人だったがイブリンは中々に束縛がキツいタイプの女性であり、とあるきっかけで二人の関係が拗れてしまう。マックスは中々別れが切り出せない中、ついに彼女に別れを告げる決意するが、その直前に彼女が事故で死んでしまう。つまりハッキリと別れを言わなかったという事だ。これが良くなかった!
その後なんやかんやありマックスは失意から立ち直り、オリヴィアという女性との新しい恋も萌芽しかける。しかしそこでイブリンが、生前にその場のノリで悪魔の像に交わしてしまった「一生一緒にいてくれや」という願い(呪い)のせいでゾンビとして蘇ってしまう!

つまり、この映画は「束縛系恋人がその死後も付き纏ってくる」という恐怖を描いているのだ。人間関係において、優柔不断でハッキリとしないことは悲劇を引き起こすのである・・・
そんなマックスとオリヴィアとイブリン(死体)の、おそらく史上初のゾンビが入った三角関係の行方やいかに!『グレムリン』のジョー・ダンテ監督らしいコミカルな演出が冴える良作コメディだ。

ハカタ

チョコレート・ファイター

バレンタインといえば当然チョコレート。そしてチョコレートな映画といえば日本人の9割5分は『チョコレートファイター』を連想するに違いない。
しかし9割5分はともかく、今のアクション映画好きには本作どれくらい知られているのだろう。特に若い層。アクション映画好きの中でも香港のカンフー映画とかが好きならトニー・ジャーからの流れで見ている人は多いだろう。でもざっくりしたアクションもの好きというだけの人にはあまり知られていない気もするのだ。

アクション映画といっても色んな種類があるが本作の種類は格闘アクション。主人公はジージャー・ヤーニン演じる女性だがそのアクションはチョコレートのように甘くはない。かなりガチなアクションだ。それだけでも見応えはあるが本作はストーリーも割とビターな感じだったはず。正直最後に見たのが結構前なのではっきり覚えてないが、私生児で発達障害の女性が傷だらけになって戦うお話だった記憶がある。そんな女性が激闘の最中に好物のチョコを食べるんだけどそれが凄く美味しそうなんですよね。女性の社会進出がどうだの言われる昨今、戦う女性がチョコに癒されるという、これはバレンタインの販促にも一役買えますよアナタ。製作がごたついて続編が有耶無耶になったのが悔やまれるが面白い映画ですよ。時流的にも今の方がウケそうだしまたやってほしいなぁ。

ヨーク

ザ・ギフト(2015)

ホワイトデーといえばバレンタインチョコのお返しに男の人がプレゼントを贈る日。なにやら気弱そうな男が赤いリボンで結ばれたプレゼント箱を持っている、というのがこの映画のポスターやDVDジャケットに使われているキービジュアルだから、ホワイトデーに見るにはぴったりかもしれない。

何不自由ない生活を送っている主人公夫婦の前にある日のこと現れたのは夫の高校時代の友人を名乗る気弱男。この男、虫も殺せないような顔をしてなかなか親切だったりするので妻の方はわりかし好感を抱くが、夫の方はなにやら苛立ち警戒をしている様子。いったい夫の過去に何があったのか?そして気弱男の目的とはなんなのか?そのすべては気弱男のプレゼントを開けた時に明らかとなる・・・。

内容が内容ゆえ迂闊なことは言えないが、作品の系統はいわゆる胸糞系。直接的な残酷描写はないもののこれがなかなかエグい、映画に出てくるヤバいプレゼントといえば『セブン』終盤の箱が有名だが、その「中身」をカメラに映さず観客に想像させることで恐怖を煽るという点でこの映画のプレゼントも『セブン』と同じ。どころか後味の悪さでは『セブン』を凌駕するんじゃないだろうか。登場人物の誰にも共感できないが誰をも否定できず、誰もが不幸になるが誰にも幸福になってほしくならないこの居心地の悪さ!プレゼントを開けたところで映画は終わるが、夫婦の真の恐怖と苦痛はその後から始まる。まったく意地の悪い映画だと思う。

さわだきんた

コリン LOVE OF THE DEAD

『カメラを止めるな!』は内容の面白さもさることながら、300万円というその低予算さも話題となった。ゾンビ映画は安く作れ、それがまた自由な創作を呼び込むという魅力があるジャンルだ。さて今回紹介するのはその究極系『コリン LOVE OF THE DEAD』である。その予算は・・・なんと5800円(当時レート)!!!!どうなってる!?

とあるアパートに一人の男が入ってくる、よく見ると彼は血まみれで、外では叫び声がする、そして男がコートを脱ぐと腕には噛み痕が・・・そして彼はゾンビになり、終末世界を旅をする。生前の恋人との微かな記憶を基に・・・

そんな低予算で大丈夫か?と思われるかもしれないが、結構大丈夫である。安く撮れる森に逃げこまずしっかり街パンデミックを描くし、ゴアからも逃げていない。何よりこの映画の良いところは、ゾンビを主人公にする時に「話せる」「しっかり自我がある」等の謎設定に逃げず、ちゃんとロメロ作品等を踏まえた設定にした上で、ゾンビとその愛に向き合った話にしている所だ。

ちょっと高めのチョコを食べながら、このチョコより安い予算で作られたんだぜ!などと言い合いながら恋人同士で観てみてはいかがだろうか?いや・・・やっぱそんなことしなくて良いわ。

ハカタ

キャッシュトラック

親愛なる恋人・友人・隣人に感謝を伝える日…ヴァレンタインディ…。義理チョコ配布の不文律がない現在の職場では、同僚女子ズ義理チョコ頒布相談会や同僚男子への義理チョコ頒布といった煩わしい人付き合いから解放されて、それだけは有り難いですわ。

しかし皆さま、同僚・顧客からの手作りチョコレートってお召し上がりになりたいです? 私はいただく度に念仏を唱えて生ゴミに棄てておりますわ。せめて焼菓子でしたらまだ加熱処理されていますから、考えようもあるのですけれど。この行事で利益を上げているのは、菓子業界だけではなく、梱包材業界もだと思うのですのよねえ…。

甘いだけじゃないチョコレート。がっしりと重く洋酒の効いた、苦さが後を引くチョコレートケーキ。幸せな今日を終えた明日も日常は続いていく、苦味の際立つ一本としておすすめ致しますのは現在アマゾンプライムビデオで絶賛配信中の『キャッシュトラック』ですわ。 ヨーロッパからメリケン警備会社の戸を叩いた、無口なメリーポピンズことステイサム。主人公がステイサムですから、いくら謎めいた男といっても処刑マシーンであることは見る前からお察しいただけるかと思います。だいたい多くの方がステイサムと聞いて思い浮かぶたぐいのキルカウント&無双ですわ。

ステイサムが復讐を遂げるために多くの人間の命と苦痛を墓前に供える話なのですけれど、この話の真の主人公は「年金代わりに」と銀行の金を掠め取る同僚や強盗犯たちだと思うのです。毎日大金を運びながらその恩恵を受けられない警備員。国のために尽くしたというのに、手厚い保護も仕事もなく、戦場を思う退役軍人。朝家族を送り出す優しいパパが家族と自分のために多くの人間を殺しに行く。そこに良心の呵責はございません。なにせ、人を殺して得る他人の金は「本来自分が得るはずの金」なのですから。

敵も味方も殺した末に大金を独り占めしたハニーフェイスの野獣が、因果応報の結末として悪霊に取り殺される。しかし悪霊の表情は晴れることはない。目的を達しても、失った人間は返ってこないのだから。 バレンタインの夜のご鑑賞後には、ぜひご友人・ご交際相手に聞いてみてくださいまし。 「あなたなら自分の愛しい人のために、どこまで他人を犠牲にできる?」

散々院

容疑者Xの献身

 容疑者Xがなぜ献身するかといえば、それは性愛のためなのだった。
 本作は冬の映画である。数学者と物理学者が1つの犯罪を挟んで退治するが、彼らはマフラーに顔を埋め、あくまでも寒さから身を守る一人ひとりの人間として姿を見せる。
 中でも一際印象に残るのは、容疑者Xと旧友である探偵ガリレオの壮絶な登山シーンである。あの雪山は恐ろしい。冬という季節が我々から生命力を奪うさまが描き出されている。「あの冬を越えられなかった」と語られる『私が殺したリー・モーガン』を想起するのもいいだろう。

 本作を監督した西谷弘には山岳映画作家としての手腕がある。それはシリーズ次作『真夏の方程式』でも、別の形で発揮されることとなった。さらに別シリーズの『アンダルシア』でも、生命を奪う自然、生物を土に還す自然が印象的に撮られている。彼は日本のアンソニー・マンなのか?
 本作をはじめ探偵ガリレオシリーズの主題歌を手掛けるKOH+は性愛モチーフによってポップソングの秀作をいくつかモノにしており、これらを聴き返してみるのもいい。

コーエン添田

恋はデジャ・ブ

同じ一日を何度も繰り返すループものSF。その映画における元祖といえば日本では押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』だろうが、アメリカでは1993年公開のこの映画『恋はデジャ・ブ』。繰り返すのはバレンタインではなく2月2日のグラウンドホッグ・デイだが、まぁバレンタインと近いことだし・・・ということで強引にバレンタイン映画ということにしてしまおう。

ところでグラウンドホッグ・デイとは聞き慣れない言葉。これは何かというと北米の祝日でマーモットの一種グラウンドホッグ(ちっちゃいカピバラみたいっでかわいい)が冬眠から目覚める日のこと。日本や中国で言ったら啓蟄か。冬眠から目覚めたグラウンドホッグは自分の影を見ると驚いて巣に戻ってしまう。影が出るのは晴れてる時だからこの日が晴天だと冬はまだしばらく続く、反対に影が出ない=曇天だとグラウンドホッグは外の世界を謳歌することができ春は目前ということになる。
この映画では皮肉屋で無気力で身勝手な最悪テレビレポーターのビル・マーレイがグラウンドホッグ・デーの取材で訪れた田舎町でその一日をなぜか何度も繰り返す。先に進もうとして進めない状況をせっかく冬眠から目覚めようとしているのに影を見てまた巣に戻ってしまうグラウンドホッグになぞらえているわけだ。

グラウンドホッグが自分の影に驚くようにビル・マーレイも永遠に続くかのように思える同じ一日の中で自分のダメさをイヤと言うほど見せつけられる。グラウンドホッグが巣から出られるのは自分の影を見なくなった時。邦題は恋愛映画風だが、実はダメ人間が自分を見つめ直してその弱点を少しずつ克服していく一風変わった成長物語なのだ。

さわだきんた

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