【こないだビデマでこれ買った】Vol.8 『MUCKMAN』を買った
見始めてから気付いたのだがこの映画、前にビデマで買った“HALLUCINATIONS”という手作りホラーと同じポロニア兄弟なるコンビが制作したものらしい(監督はBrett Pipperという人)。ビデマの膨大かつ得体の知れない在庫の中からなんとなくピックした映画の制作者が前になんとなくピックしたやつと被るなんて。この“MUCKMAN”と“HALLUCINATIONS”は販売元も違うしジャケットデザインもまったく別物なのでどうしようもない奇跡だなと思ったが、調べてみればポロニア兄弟は監督作とプロデュース作を合わせれば年数本ペースで超低予算ホラーを量産する多作コンビ。その内容の志の低さとチープ特撮はだいたい必ず出すサービス精神からいってトロマの衣鉢を継ごうとしているんだろう。ビデオ屋のホラーコーナーでなんとなく見た目が派手で楽しそうだしバカっぽくて脳細胞負担も少なそうだからと手に取った映画がトロマ映画である確率はそう低いとは言えないので、ポロニア兄弟作品をビデマの棚から引き当てる確率も、その知名度から絶無に近いと思われたが実際は案外低くないのかもしれない。それ即ちポロニア兄弟作品の脳細胞負担低そうなビジュアルが俺の無意識のおもしろ映画センサーにガッツリ引っかかってるということである。なんか悔しくなってきた。
さてマックマンというのは沼地に棲まうビッグフット的なUMA。川〇浩探検隊みたいなインチキオカルト番組をやっている連中が今度こそ本物のマックマンをカメラに収めてやるんだということでマックマン見た証言を頼りに辺鄙な沼地にやってくるのだが、インチキ番組は視聴者もインチキなので案内役を買って出たそのマックマン目撃者の言うことはもちろん嘘、どうやらマックマン出現の噂で一稼ぎしようとしているらしい。だが、バカモノどもの化かし合いがダラダラ続く中、ついにホンモノのマックマンが現れてしまった・・・。
チャイルディッシュでたのしいDVDジャケットには栄養かもしくは予算の不足でゲッソリとしてしまったクトゥルーのようなモンスターの画像の下に「BEAUTIFUL BIKINI BABES BRAWL!」とか「UNSPEAKABLE VIOLENCE AND GORE!」とか書かれている。無論インチキであった。確かにビューティフルかどうかはともかくビキニの女の人は出てくるがほんの1シーンのみ、バイオレンスはまぁ一応クリーチャーホラーなので無いことはないが今日のインディーズホラーのバイオレンス基準からすればあまりにも生やさしい、ゴアに関しては出てこないので単純に嘘である。大体このジャケットに写ってる貧相なクトゥルーみたいなモンスターはこれこそがマックマンなのだが実は噂に反してやさしい性格、たまに人間を襲ったりもするがそれは卵を守るための防衛行動であり、少なくとも劇中では誰一人傷つけてはいなかった。撮影クルーが持ち帰ったマックマンの卵から壁に投げてくっつけるオモチャを糸で引っ張ってるだけに見えなくもない幼生マックマンが生まれた時にはついに死者が!口から人体に入り込んで四散五裂!と喜んだがぬか喜び、マックマンは幼生でも平和な生き物なのでしおらしく人間の目から隠れるのみだ。
したがって映画の大半を占めるのはこれはあくまでも喩えだが「布団がふっとんだ!」レベルのチープで無邪気な小学生ギャグであり、50年代怪獣映画を彷彿とさせるストップモーション・アニメでなかなかカッコいいデザインの巨大マックマンがちょっとだけ動くラスト5分ぐらいは不覚にも怪獣映画の醍醐味を感じてしまったが、基本的にはマリファナでもやりながら(※マリファナの所持は日本では犯罪ですから日本では絶対にやめてください!)流し見して30分に1回笑えればいい方。人間の愚かさとUMA保護の大切さをビキニ以上のエロ表現もゴア描写もなく特撮怪獣と一緒に学べるのでお子様も安心して見られるスカム映画・・・そう考えればこれはトロマ映画的である以上に河崎実映画的であるかもしれない。前に『キラーカブトガニ』を見た時にもアメリカの河崎実とツイッターか何かで言った気がするがアメリカには何人河崎実がいるんだ。
“MUCKMAN”そしてポロニア兄弟作品、川口浩も河崎実も楽しめるという人なら、きっと楽しめるに違いない。はい俺はそうでした。