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たまに面白い映倫

【たまに面白い映倫】第17報 『鉄男 The BULLET MAN』と『サバイバル・オブ・ザ・デッド』

今回は2010年上半期に映倫審査が完了した作品の中から2作品の映倫テキストを。個人的に随分昔のことのように感じられますがたった13年前なんですねぇ。

鉄男 The BULLET MAN

謎の男に息子を殺されたアメリカ人の男が、怒りに我を失い身体の半分以上が鋼鉄へと変貌していく。バイオレンス及び刺激的、金属的な大きな音がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。サイキック・アクション・スリラー。(1時間11分)

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塚本晋也の出世作にして代表作『鉄男』シリーズの、ほとんどリメイクのようなシリーズ最終作。音楽にトレント・レズナーを起用していたり予算は前二作より増えていそうな感じもあるが世界観はグッと狭くなっているのがよくわからない。こちらはおそらくシリーズで最もレイティングの低いPG12で、前二作にあった比較的激しい性描写がないことからお子様でも鑑賞可と判断されたのだと思われるが、バイオレンスはともかく「刺激的、金属的な大きな音」も指定理由に含まれているのがなんだか可笑しい。そうだよな、うるせぇもんな『鉄男』シリーズっていうか塚本晋也監督作。乳幼児でもなければ映画の音がでかすぎて困るということもあまりなさそうではあるが、自閉症スペクトラムの人なら感覚過敏によって大きな音は遠慮したいということもあるかもしれない。その意味では親切な映倫テキストかもしれない。

サバイバル・オブ・ザ・デッド

小さな島で死者が蘇り人間を襲い始め、人々は混乱し二派に分かれ対立、ゾンビと三つ巴の死闘となる。ゾンビ映画。マニアックな大人向きの作品で、極めて刺激の強い殺傷・出血・肉体損壊の描写が多くみられ、標記区分に指定します。(1時間30分)

https://www.eirin.jp/

モダン・ゾンビの父ジョージ・A・ロメロの残念ながら遺作となってしまったこの映画、性描写との合わせ技などではなく残酷描写のみを理由としてR18を食らっているが、実際に観ると確かにゾンビ映画なのでゾンビを破壊したりゾンビが人を食ったりする場面は多くあれど、映画マニアのロメロが古典西部劇『大いなる西部』のゾンビ版を目指したと語っていることからわかるように、非常にまったりとした刺激の薄いゾンビ映画であった。ロメロ最新作の文字とR18指定に血と肉を躍らせて映画館に向かった劇場公開時のガッカリ感を思い出す。それはともかく「大人向き」ならまだしも「マニアックな大人向きの作品」とはなんだ。いや、そりゃマニアックな映画ファンが見に行く映画ではあるだろうけれども、わざわざ映倫テキストに書かないでもいいだろ。担当者も気を使ったんだろうか。ゾンビ映画の巨匠の最新ゾンビ映画にしてはいささか渋すぎる出来を見て「いや、これはマニア好みの味なんですよ」みたいな。グルメレポーターか。

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com