【こないだビデマでこれ買った】Vol.48 『THE SOULTANGLER』を買った
「『死霊のしたたり』へのロングアイランドからの回答」ソフトの紙スリープからパッケージを抜いてジャケ裏を見るとそのように書かれていた。紙スリーブのジャケット絵がなんか人間が溶けてる風だったので人体溶解ジャンルかなと思って買ってきたらゾンビ映画らしい。ロングアイランドからの・・・ロングアイランドというと大都会マンハッタンとブルックリン橋で繋がるマンハッタン南方。行ったことはないが浜とかあるみたいだし遊園地(コニーアイランド)もあるので大都会ニューヨークを東京とするならさしずめロングアイランドは千葉だろう。つまり換言するとこの映画は『死霊のしたたり』に対する千葉からのアンサー。なるほど!イメージは掴めたがなんか微妙だ!
しかし見てみればなるほどたしかにこれは千葉。1987年に制作された16ミリカメラ撮影の低予算インデペンデント映画ということで画作りの華の無さもさることながらオールロングアイランドと思われるロケ地のうらぶれ感と生活臭が大都会の影に隠れてうだつの上がらない千葉のあの感じだ。神奈川のように東京とは別方向の魅力を放っているわけでもなく、埼玉のように生活しやすさに特化しているわけでもない、だが浦安に行けば東京ディズニーランドはある・・・この千葉的なアンバランスもまたロングアイランドの『死霊のしたたり』ことTHE SOULTANGLERは体現していると言えるかもしれない。
なにせとにかくずっと会話ばかりして肝心のゾンビが出てきてくれない。人体を蘇生させる危険ドラッグを開発した天才博士が部下に死体を集めさせて禁断の実験をしているらしいことを主人公の新聞記者が嗅ぎつけるというクッソオリジナリティのないストーリーにいったいなぜそこまで時間をかけるのか。しかも会話の内容がなんか同じこと三回くらい繰り返してるだろこれ。
なんて経済効率の悪いストーリーテリングなのか。主人公が天才博士の家に突撃してお茶に混ぜられた睡眠薬を飲んでしまうというシーンがあったからなるほど主人公はまんまと天才博士の実験台になってしまうのだなと思ったら主人公ふつうに天才博士の家を出て車で帰ってしまった。あれ、睡眠薬効かなかったの?と思いきや運転してる途中で眠くなって車を停めると主人公睡眠。夢の中でゾンビの群れに追いかけられて怖い思いをしたところで目覚めて再び車で自宅に向かうのであった・・・ってなんだよこの無駄なシークエンス!斬新!
万事こんな調子なのでこれは失敗したなーと思っているとついに天才博士の実験室ということになっているスタッフの誰かの家の地下室で蘇生ゾンビ登場。だがここからがすごかった。ゾンビ総数は少ないものの出てくるゾンビの人体崩壊っぷりがファンタジー。もちろん予算も技術もないので作り物感は丸出しだが、丸出しだからこそ色んな部位を好き勝手に壊せるというメリットもある。頭が真っ二つになったまま襲いかかってきたり脳みそがカタツムリみたいに動き出したりの荒唐無稽な人体崩壊祭りはまさにロングアイランドから来た『死霊のしたたり』への返歌。そこに至るまではすごくつまらないのに人体崩壊祭りに入った途端すごく面白いというなんともアンバランスにして千葉的なTHE SOULTANGLERなのだ。
いまどきBlu-rayソフトの出るアメリカの無名C級ホラーはどうせギャラを大して払わなくていいのでどれも無駄に特典が満載がちなのでこのソフトも例外ではないが、目玉特典はおそらくディレクターズカット版。こんな誰も知らないしょうもない映画にディレクターズカットとかあんの!?というのは驚くところではない。本リリース版の上映時間が90分であるのに対してディレクターズカット版はわずか62分というのが驚くところである。いや普通ディレクターズカットって劇場公開の際に泣く泣くカットを余儀なくされたシーンとか入れるから通常版より長くなるはずなのに30分も短くなるってなんだよ!やっぱ後から「いやこれ会話シーンとか全然いらないじゃん」って気付いたのかな監督本人が!ですよね!俺もそう思うよ!