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【ムビトイ万博2025】見たくても見られない封印映画パビリオン

ようこそいらっしゃいました、こちらは封印映画パビリオン。映画の歴史は封印の歴史。世界には見られる映画と同じくらい今では見られない映画も存在しているものです。そんな映画たちのごく一部をここでは紹介しましょう。紹介したところで見られないんですけどね。

さて封印映画界の超大物としてまずは取り上げたいのは『南部の唄』。ディズニー制作による実写とアニメを融合した1946年の意欲作で、ディズニーランドの人気アトラクション、スプラッシュ・マウンテンはこの映画を基にしたことで有名。人気アトラクションの元ネタになるぐらいだから公開時は好評の声も多かったのだろうと思われますが、他方で奴隷制を美化しているとの批判も公開時からあったもよう。物語の時代設定は南北戦争後なので奴隷制を直接描いているわけではないものの、主人公である南部貧乏農民のリーマスおじさんと元奴隷主の金持ち白人の関係性など、良く言えば牧歌的、悪く言えば現実を歪曲していると言われても仕方のない面はあると思われます。海賊版ではない公式なソフトはかつて発売されたVHSのみ、DVDにはなっておらず、ディズニープラスでも配信されていない状況。

有名度でいえばこちらも引けを取らない封印映画が『ギニーピッグ』シリーズ。スナッフフィルムを題材にした超悪趣味なゴア映画として出発したものの、シリーズ3作目からはコメディ要素を加えたりストーリー重視にしたりと方向転換。ところがその方向転換後の穏当な(?)シリーズ作『悪魔の女医さん』を連続幼女殺人犯にしてビデオコレクターであった宮崎勤が所持していたことで風評被害的にシリーズ全体が今で言う炎上状態に。すっかりほとぼりも冷めた現在なら普通に再ソフト化できそうなものですが、シリーズ初期に作品に携わったホラー漫画家・日野日出志の版権管理者によれば、Blu-ray化の話も出てはいるものの、シリーズの関係者が首を縦に振らないために頓挫しているのだとか。ちなみに海外で出ているBOXセットは海賊版だそうです。

『ノストラダムスの大予言』は五島勉の同名ベストセラーの名前だけ借りた天下の東宝のスペクタクル大作。『ギニーピッグ』のような小規模映画ではないのでしっかりLD化もされたのですが、劇中の被爆描写が問題視され、臭い物には蓋でいつの間にか無かったことにされてしまった。被爆描写を理由とする封印映画と思われるのがリメイク版の『ヒルズ・ハブ・アイズ』。あれ、最近の映画じゃん、あと見られるじゃんとお思いの方もいるでしょうが、実はこの作品、当初予定されていたTSUTAYAでのDVDレンタルおよび販売がリリース直前になって突然中止にされたという経緯あり。理由は公表されておらずTSUTAYA以外の店舗では普通に取り扱いがされたため真相は不明ながら、『ノストラダムスの大予言』の前例を考えれば、アリゾナ核実験に巻き込まれた被爆者の一家が凶暴な人喰い族となってしまうという無神経な内容が取り扱い中止の判断に影響したのかもしれません。なおTSUTAYAではリリースより数年後にひっそりとレンタルと販売が開始されています。よって今では封印解除。よかったね。

一方、本気度の高い封印映画として挙げたいのは『君のまなざし』ほか、大川宏洋が脚本や製作を手掛けた幸福の科学の映画。大川宏洋は幸福の科学の創始者・大川隆法の長男、そのため後継者と目されていたものの、やがて教団を離脱し、幸福の科学の内情を暴露する反幸福の科学の急先鋒に。かくして大川宏洋と幸福の科学は複数の裁判を争う和解不能な対立関係に入ってしまい、幸福の科学のデータベースからは大川宏洋が教団在籍時に関わった映画群が抹消されてしまった。プレ値のDVDなどは探せば見つかるでしょうが、大川隆法が鬼籍に入ったこともあり、こうした経緯から今後も幸福の科学が『君のまなざし』等々の封印を解くことはまず無いと考えられます。

そしてこちらも今後封印が解かれる可能性はゼロに近いと考えられるのが『スクラップ・ストーリー ある愛の物語』。この映画、邦画界の異端児・若松孝二監督が手掛けたものですが、少女Mの名義で出演し惜しげも無いヌードを披露している主演女優が撮影当時14才。現在では上映しても配信してもソフト化しても日本国内や欧米では児童ポルノ法に抵触すると考えられますので、別の意味でスクラップになってしまった映画です。

決して封印が解かれることがないであろう封印映画といえばこちらも押さえておきたいのが『善悪の屑』。現代Jホラーの鬼才・白石晃士が人気コミックを映画化した作品ですが、公開前に主演の新井浩文が強制性交罪で逮捕、のちに実刑確定。このために『善悪の屑』は公開が中止されると共に封印されることとなりましたが、原作の続編にあたる『外道の歌』はNetflixDMM TVドラマとして別スタッフ・キャストで映像化されています。

このへんは封印の理由に納得ですが、一方でまるで納得できない封印映画も。DCEU作品として製作された『バットガール』はバットマンの姉妹編、ということでハリウッドのアメコミ大作だったのですが、これだけお金をかけた作品にもかかわらず公開しても製作費を回収できず、むしろ公開したりソフト化したりすれば余計に赤字が広がるとの経営判断によりお蔵入り。その経営判断が正しかったのか間違っていたのかは今となっては知りようがありませんが、とくに悪いことをしたわけでもないのにめちゃくちゃお金をかけて作った映画が封印映画となってしまうのだからずいぶん理不尽な気がします。ハリウッドはおそろしいところだ。

最後に触れておきたい封印映画はロシア映画界の重鎮アレクサンドル・ソクーロフ作品。どこが?と疑問に思われるかもしれませんが、反戦主義のソクーロフはロシアのウクライナ侵攻に抗議する声明を出したことでクレムリンに目を付けられ、ロシア国内でのソクーロフ作品の上映、のみならず監督としての活動までも禁止されてしまったとのこと。ソ連時代から活動するソクーロフはその頃にもタルコフスキーらと共に上映禁止処分を受けていたため、ソ連でもロシアでも封印監督の烙印を押されてしまったことになります。残酷描写もエロティックな描写もモラルに反する描写もない知的で穏やかなソクーロフ映画が他のどんな映画よりもロシアでは危険な封印映画と見なされてしまうことからは、映画を封印するということの本質が見えるかもしれません。

みなさんいかがでしたでしょうか。今回紹介したのはもちろん膨大な封印映画のごく一部にすぎません。みなさんもぜひとも封印映画の世界にダイブしてみてくださいね!ダイブしても見られないですけど。

2 コメント

    • わ!すいません勘違いしていました!教えていただいてありがとうございます!直しときました!

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ゆるふわ映画感想ブログ映画にわか管理人。好きな恐竜はジュラシックパークでデブを殺した毒のやつ。Blueskyアカウント:@niwaka-movie.com