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博多ゾンビ紀行

【博多ゾンビ紀行】第1回「臨時ニュースです、キリストがゾンビを倒しまくっています」…『ゾンビワールド』に見る“罪”の映画史

どうもこんにちは、ハカタという者です。

いきなりだが『ザ・グリード』『ブレインデッド』『デモンズ95』、これらの映画群にある共通点とは何か?

一つはジャンル映画ファンの中で名作との呼び声が高い映画であること、そしてもう一つの共通点は非常に観る難易度が高いということ。

配信はなく、DVDは高騰、レンタル店にも置いてない・・・そんな”手の届かない名作”の出現に対し悔しい思いをした経験は数知れず。そんな思いを二度としないために僕がやれることと言えばただ一つ、観づらくなる前に観る、ということ。そして誓ったのだ、観れる限りの映画、せめてゾンビ映画はこの世にリリースされたもの全てを観ると・・・そういうことをしているのが僕という人間なのです

そういうことをやっていれば当然ながらとんでもないものに当たるもので・・・(ようやく本題)

今回紹介する『ゾンビワールド』はDVDなどの物理メディアは出ておらず配信のみ、といういつ観れなくなってもおかしくない非常に立場の弱い映画である。
つまり速攻で観なければ・・・というような義務感が湧いてくるタイプの映画なのだが、これがゾンビものを観まくっている僕の中でも特に強烈でジャンルの極北とも言える狂映画だった・・・

はじめにこの映画はどういう映画か?
まず冒頭、世界でゾンビパニックが発生したということを表すような短い映像が流れる。そこで突然、緊急臨時ニュースが始まりキャスターが現れる。ここで「ニュース番組という体で様々なゾンビ短編映画を流す」というコンセプトのオムニバス映画だと示されるのだが・・・

しかし肝心の最初のエピソードの導入でニュースキャスターがこう告げる

「それでは人類と死者の争いの起源をご覧ください、2000年以上前のことです」

そして始まるイエスキリストがゾンビをブチ倒しまくるイカレ短編!コンセプト大崩壊!

今作はどうやら今作のために一からディレクションされ作られたちゃんとした短編集ではなく、それぞれまったく別々に作られた短編ゾンビ映画を雑にかき集めオムニバスとして出したシロモノであるようで、そりゃ開始5分でコンセプトが崩壊するわけですわという感じ。
(ちなみにこのキリスト短編「Fist of Jesus]自体は不謹慎ギャグと新ゾンビのラストだけ抽出したようなゴアアクションが楽しい傑作ではある)

他の短編を紹介すると

「ゾンビ世界で生き残る方法」が画面上にデカデカとでるコミカルな演出が特徴的な
「How to Survive a Zombie Apocalypse」(要するにゾンビランドのパク・・・

ゾンビパンデミックを一人称視点でアクションと共に描く。手ブレが酷いが、ゾンビに身体を喰われてゾンビになってしまうまでを一人称視点で描くというアイデアが面白い
「dark times」

赤ちゃんの死体でゾンビの群れを倒すという考えうる限り最悪の倫理観が発揮される異常ゴアアクション
「Brutal Relax」

今さら出したっておせーよ!な監視カメラ映像風ゾンビ映画
「Dead Stop」

ゾンビパンデミックを一人称視点でアクションと共に描く。手ブレが酷いが、ゾンビに身体を喰われてゾンビになってしまうまでを一人称視点で描くというアイデアが面白い
「Dead rush」(これは打ち間違いではない、マジで似たような内容の短編が入ってる

他にもシリアスなドラマが展開するものや完全に意味がわからないもの、笑えるものからマジの虚無まで様々な異常映画がもりだくさん

このようにゾンビワールドは「アクション」、「コメディ」、「ドラマ」、そしてもちろん「ホラー」といった様々なジャンルを横断する。
それと同時に不謹慎、グロ、宗教侮辱、パクリ、ルール破り、激寒ギャグ、そして時間泥棒、など様々な映画に犯せる“罪”を犯せるだけ犯しまくる

これはさながら様々なジャンルを媒介しながら映画史、そしてそこで描かれてきた愛を反芻する映画である『ホーリーモーターズ』のゾンビ映画版とも言えるのではないだろうか。
ゾンビ映画史を“罪”によって振り返る映画、それがこの『ゾンビワールド』なのだ
まあそこに批評性は無く、あるのは節操のなさと下劣さのみなのだが、そういう映画として観ればある程度は楽しめるかもしれない。

玉石混合のゾンビ映画を全部観ると誓った以上このような怪作に当たるのは仕方のないことだ。仕方のないことだからこそ、このように紹介記事として昇華することで祓える何かもある。だから僕ももうこんな映画のことなんか忘れ・・・え?『ZOMBIE WORLD2』・・・?『3』!?!?!?

うわぁぁ助けて!

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